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ボーナス出さへんで:Anizine

話をするときに「演技する人」が苦手です。私が性格的に重要視しているのが客観性で、これはもう好き嫌いのようなものなのでどうしようもありません。日本語と英語のニュアンスの違いで言うと、道に迷ったとき、日本語だと「ここはどこ?」と言い、英語だと「私は今どこにいる?」という表現になります。

日本語の感覚だと、自分というカメラから目に見える風景を主体的に判断していますが、英語は上空から俯瞰した地図上で、第三者、もしくは神の視点で自分の位置を探しています。日本語の感覚のまま英語の単語に置き換えて「Where is here?」と言ってしまう間違いはこうして起きるわけです。

「演技する人」は、自分に起きたことを演劇の台詞のようにそのまま話します。直接話法には、空気やニュアンスをそのまま伝えるという効用はあるのですが、反面、幼稚さも感じます。さらに言えば話し手の捏造や強調も加わることがあるので厄介です。

「山田部長が、『営業部は最近たるんどるな。そんなんじゃ、ボーナス出さへんで』って言ったんだ」

という誰かの話があったとします。これを間接話法で言い換えると、

「山田部長が、営業部は最近たるんでいるからボーナスは出さない、と言ったんです」

となります。直接話法は現場の空気が伝わり、友だちと話すならいいですがオフィシャルな場ではかなり幼稚に聞こえます。これは目的が感情の伝達なのか、事実の伝達なのかでも違ってきて、起きた事実を正確に伝えたいのであれば、山田部長の方言や終助詞は無駄な情報なので切り捨てた方がいいですし、部長の声真似などもいらないです。

家族や仲のいい友人との会話とそれ以外を区別できないと、事態を客観的に描写することができません。そのいい例が事件の目撃者です。テレビでこんなインタビューを見たことがありませんか。

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Anizine

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写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。