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今は不景気なのか:PDLB

私の仕事場は渋谷の宮下公園のそばにあります。MIYASHITA PARKという名称の巨大商業施設に変わりましたが、見る限りでは苦戦しているようです。

そもそもこの公園を「時代遅れのアラモアナ・センター」のようなショッピングモールにする意味があったのかは疑問ですが、計画当時は今のような状況になるとは誰も思っていなかったはずです。一階の路面店にはLOUIS VUITTONやPRADA、BALENCIAGAなどのハイブランドが軒を連ね、建物の端にはタワー型のホテルがあります。明らかにアジアのインバウンド客を狙った施設であったと言えましょう。

それが外国から誰も来ない状況になったわけですから、想定していたより大幅に不振であろうことは容易に想像できます。夜になってホテルのビルを見上げてもほとんど灯りがついていることがありません。皮肉にもGoToトラベルが実施されていた開業当初にはかなり安い値段で予約を受け付けていましたが、満室になることはありませんでした。

「想定していなかった状況」というのは誰にでも平等にのしかかってきているように感じられますが、そう単純でもないようです。実際にはそれまでに作り上げていたブランディングに左右されることが多く、旅行や宿泊施設などの明らかに客が存在しなくなった業種はさておき、販売に関わる分野では大きな差が出ているようです。

消費における心理というのはそれほど簡単なものではありません。今までは「ナッジ」などという姑息な技術も有効でしたが、特に今は理性的な選択、倫理的なチョイス(エシカル評価)などを有意義にコントロールできている、賢い客向けのブランドが有利であり、それは本来当たり前のことだと思います。

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私はGoToトラベルの実施期間中、都内のホテルに50泊くらいしてみました。これは旅行に行けないストレスから来ていて、その代わりとしてできるだけ毎日違う場所で過ごしたかったのです。一昨年は外国に13回行きましたが、去年はたったの2回。最後は2月でしたからもう1年以上日本を出ていないことになります。これは自分としてはかなりのストレスで、年の1/3くらいは違う文化がある場所にいないと精神のバランスが取れないのです。遊びだけではなく外国で予定していたロケが中止になったりしたことも、より気持ちを落ち込ませました。

友人であるホームレス小谷はよく「70人がいるクラスで一人の友だちとしか遊ばないのはもったいない」と言います。これは世界の総人口のことを指しています。70億人以上いる世界で、身近なたった1億人(それ以下)の人としか関わらないのは勿体ないというのです。私も同感で、様々なことの価値観が世界中で違っていることを体験し続けていないと、視野が狭くなります。

たとえば不吉な鳥としての印象が強いカラスが他の国では幸運の鳥とされていることもあります。また聖なる「ヤタガラス」のように、日本でも時代によってはその存在の意味が変わっていることもあります。時代をタテに旅行することはできませんが、文化の異なる地域をヨコにスライドすることはできます。それが旅の意味だと思っていて、ひとつの小さな価値観や、ネットなどで聞きかじった二次情報だけで何かを判断しないように心がけています。

大ざっぱに言う「ヨーロッパ型の消費」というのがあります。ヨーロッパに長く滞在したことがある人なら実感としてわかると思いますが、日本人と彼らでは消費の概念が大きく違っています。そしてそこに今の状況を打破するヒントが隠されているような気がしているのです。

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多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。