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中年の三ぶる:Anizine(無料記事)

おじさんが姑息なのは「おじさんなのに、こんなことしちゃってる俺」と解説するところで、そのエクスキュージングな小狡い態度こそが若者から嫌われる原因です。振る舞いを若ぶる、説教で荒ぶる、下腹ぶるぶる、この『三ぶる』が嫌われるのです。しかし我々も好きでおじさんになったわけではありません。不本意でジクジたる思いなのです。しかしながら盗人にも三分の理というか、理想の姿はあります。それは海中に漂うワカメのように流れに身を任せてユラユラし続けることです。

若者が立てる波に抗ったりしてはいけません。昔だったらそんなことじゃ通用しないとか、我々の頃はもっとキツかった、なんて言ってはいけません。魚が卵を産みつけに来ても嫌な顔をしてはいけません。収穫され最終的に鍋でグツグツされたらただひたすら「いい味」を出せばいいのです。誰の邪魔もせず、状況を円滑にするだけでいいのです。

出汁という字はダシと読みますけど「ダシジル」と書きたいときは出汁汁なのかと思っちゃいますよね。「ユビサス」を指指すと書きたくなるのと似ています。サミュエル・エル・ジャクソンのエルはひとつ約分できるんじゃないかとも思いますよね。今市市市長はふたついけるかと思ったのですが、現在は日光市という名前になっているそうなので、もう悩む必要はなくなりました。

中年に悩みは尽きません。なぜなら「中年であること」が悩みの菌みたいなものだからです。若者に張り合って、妙に派手なブランドものの服を買ってみたり、その流行情報がかなり古いモノだったり、活躍に嫉妬して嫌味ったらしい説教をしたり、下腹にウエストポーチをしながら遊戯していると思ったら脂肪だったりします。そんな人が尊敬されるわけないでしょ。すると、お金か人脈かいいクルマなんかをFacebookに載せますよ。「さりげなく」とローマ字で書かれたTシャツを着ているくらい他人からバレてますけど。

オホーツクのワカメを思い出してください。波に逆らわず、礼文島沖でユラユラしていた自分、あの合気道の極意のような姿を。それを思い出せば、ブランドものを着たり、お洒落な人とツーショットを撮ったりして見せなくてもいいんです。直立不動、裸でドーンでいいんです。いい感じに年を重ねた立派な人の写真を見てください。たとえば北野武さんなどは、ただ白いシャツで真っ直ぐに立っているだけです。色んな装飾アピールに必死な人は、あの立ち姿で、画面が「もつ」人になれていないという証拠なのです。

中年が嫌われないように生きるためには、自分が若い頃におじさんがうとましかったことを思い出せばいいんです。今回は無料記事ですが、こういったおじさんのヒリついた身の振り方についての役立つ情報はこちらの定期購読マガジンで。


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多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。