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写真の部屋

人類全員が写真を撮るような時代。「写真を撮ること」「見ること」についての話をします。
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#アートディレクター

選ばれているか:写真の部屋

自分がアートディレクターでもあることから「撮って欲しい写真」には明確な基準があります。デザインだけをしていた頃と、写真も撮るようになった現在では求める写真に大きな違いが生まれました。アートディレクターはクライアントとの会議を何度も経てビジュアルの設計図を作り、そこに必要な写真はどんなものであればいいかを決め、写真家と他のスタッフに依頼します。 そのとき、こちらが思っているような写真が撮れない場合があります。理由はいくつもあるので詳しく説明しますが、ここからはメンバーのみとし

写真とデザイン:写真の部屋

写真展に並べるような、完成形としての『写真』がありますが、仕事の場合、アートディレクターにとっては『素材』として見えています。写真展の会場に並んでいても、何かのデザインをほどこしても結果がよくなるものが「いい写真」なのだろうと思います。 レコードジャケットや映画のポスターなどを思い浮かべてもらえるといいのですが、デザインされたことで写真が負けてしまう場合があります。これはよくない例です。かと言って写真を尊重するあまりデザインが邪魔をしないように萎縮するのもよくないです。写真

写真家のキッチン:写真の部屋

おととい行ったレストランにはメニューがありませんでした。ひとつのコースだけ。アミューズからデセール、最後のお茶まですべてがシェフの決めたものです。 アラカルトで「これとこれが食べたい」と選ぶ方法とは違って出てくる料理はすべて決まっているので、客はシェフを信頼するしかありません。もちろんどれもこれも素晴らしく美味しかったのですが、食べながら自分が写真を頼まれるときのことを考えていました。 「こう撮ってください」とオーダーされたとき、その内容に納得ができればいいのですが、発注

設計図を大きく:写真の部屋

写真を撮るのとデザインする脳は、似ているところと違うところがある。似ているのは「構築」という部分で、具体的に言えば配置する感覚。だから最低限デザインを学んでいる人は最低限の写真は撮れると思うし、反対に言うとデザインを学んでいない人の写真を見るのは厳しい。 デザイン的、という言葉は写真においては褒め言葉ではなく、俺が撮り始めた頃にも「デザイナーが撮った写真だね」と言われたものだ。完全に貶している。我々アートディレクターは、仕事が発生するとどんな写真をどうレイアウトするか、着地