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写真の部屋

人類全員が写真を撮るような時代。「写真を撮ること」「見ること」についての話をします。
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2023年7月の記事一覧

わかっているもの:写真の部屋

写真の「理解」を考えてみましょう。たとえば休日に海に行った、と誰かに言うとき、ビーチの写真はわかりやすいですよね。海という共通認識から外れていないからです。これは説明であり、文章の挿絵として立派に機能しています。しかしながら、写真という表現を文学的に考えるとき、絵日記のように「海に行きました。楽しかったです」という低学年の作文みたいなことでいいのでしょうか。いい場合もあります。 しかし写真は文学表現と同様に、直接ではなく「何が言いたいんだろう」という印象を与えることも可能で

うるせえよ:写真の部屋

けっこうな頻度でアップしていますが、ウザくないですか。質問したくせに読んでくださっている読者の皆様に拒否権はありませんから、これからもグイグイ書いていきますけどね。 毎日、仕事や趣味の写真を撮っていますけど、写真を撮るという行動って「人生の肯定感」なんじゃないかと思っています。またそんなに抽象的なことを言って、技術が足りないのを誤魔化しているのか、と思われてもいい。事実だからです。そして写真の本質は技術にはなく、本質を突き詰めるために必要な技術を学ぶのです。見えないように、

好きな人と、好きな仕事:写真の部屋(無料記事)

今日はとても楽しい撮影でした。ことの発端は去年のParisで、ファッションウィーク中、友人に連れられてあるブランドの展示会にお邪魔しました。ズラッと並べられた服がどれも素敵で、あまりないことなのですが「この服を撮りたい」と思いました。ファッションというのは人が着ることで完成するんですが、まるでそれ自体が彫刻のように美しかったからです。 それからしばらくして撮影を依頼されました。「じゃあ今度ぜひ撮ってくださいよ」と言われても自己肯定感の低い自分はいつも社交辞令ではないかと疑っ

カメラに愛情はあるか:写真の部屋

カメラに愛情はあるかと聞かれたら、結論から言うと、ないです。でもちょっと待って欲しい。愛情にも様々な種類があって、子育てでもそうですが「ただ愛でていればいい」というものでもないと思っています。 プロフェッショナルとして当然と言えば当然なのですが、カメラを一度も壊したことがありません。ストラップを使いませんが、落としたこともありません。

弓:写真の部屋

急ですが、この写真の答えは次の写真で。

リアルなカメラの話(後半重要):写真の部屋

正直に言うと、カメラという機材にはまるで思い入れがありません。フィルムの時はまだ用途の違いや個性がありましたから、そういう気持ちは理解できたのですが、今のデジタルカメラは完全に家電製品です。家電は最新のモノが最高の性能を持ちますから、新しいモノを使えばいい、それだけのことです。 どんな趣味でも機材の話をするのが好きな人がいます。そこに「伝説」を作り出し、同好の仲間と語るのが好きならそれは趣味の問題なのでノータッチです。クルマでも時計でもキャンプ道具でもそうですが、機能、性能

ダイナミズム:写真の部屋

広告出身であることから、自分が撮る写真にはダイナミズムが欠けていると思うことがあります。ダイナミズムを「破綻」という言葉に置き換えてもよく、画面の中に写っている被写体が心地よく躍動しているかどうか、という問題です。 伝達されるべきメインのオブジェクト以外には目の行きようがないシンプルさ、それが広告写真の役割のひとつです。しかしそれだけだと凡庸で退屈に感じたりしますから変化をつけます。撮り方がいつも同じでなく、毎回そのグラデーションをコントロールできる写真家は素晴らしいと思い

カメラを5センチ:写真の部屋

今日は細かいことを書きます。5センチの世界です。まずこの写真を見てください。 東京の最先端ファッションの震源地と呼ばれる、北千住駅前です。冗談はさておき、奥にあるビルの壁面とエスカレーターが気になって撮影しました。実はこの前に一枚撮ったのですが、よくない部分があったのでこれを撮り直しました。具体的に言うとカメラの位置を5センチだけ左にズラしたのです。何が気になっていてどう変わったかは次の写真を見てください。

イベントご招待:写真の部屋

7日の原宿でのイベントですが、「写真の部屋」の定期購読メンバーを5名くらいご招待します。ハッチハッチェルのライブだけで十分なのですが、我々もオマケでちょっとしたトークをやりますのでゼヒ。コメント欄に書いておいていただけると会場でスムースなのでよろしくお願いいたします。

無意識の嫉妬:写真の部屋

ある人が、生まれて初めてアメリカに行ってきた、と言う。彼のFacebookには数日間のアメリカの写真が大量にアップされていたので知っていたが、ちょっと引っかかることがあった。数日前に彼からの古いメッセージを読んだところだったからだ。 「自分はどこか知らないところに行かないと写真が撮れないというのはダメだと思っているんですよね。世界中の絶景を撮れば面白く見てもらえるのはわかるんだけど、それって風景の価値で、写真の価値とは違うでしょ」 これが共通の知人が撮影した南米の写真に対

自分が驚く写真:写真の部屋(無料記事)

「写真の本」に書き残したことはないかと検証している。出版されたあとで、ああ、あれを書いておけばよかったとは思いたくないので何十回も読み直す。書き始めた頃とは気持ちが変わっているところもある。毎日写真を撮っていると「信じていること」が変化しているのがわかる。 撮影をする、セレクトをする、現像してレタッチをする。その過程で当然ながら時間が経つ。一週間のこともあれば、一日のこともあるけど、撮影した瞬間より確実に能力は向上している。撮った経験がひとつ増えているのだから。瞬間的に過去