マガジンのカバー画像

Anizine

写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。
¥500 / 月
運営しているクリエイター

2023年4月の記事一覧

言葉というツール:すべての定期購読マガジン

いま、写真の本を書いているとお伝えしました。書いているうちに「これは写真以外にも通じる大事な内容だ」と感じたことは一旦横に置いて、もうひとつの本に書くべきこととして貯めています。こちらの本は言うなれば『ロバート・ツルッパゲとの対話』の続編というか、そういうやつです。 自分は言葉を最上位に位置づけているので、くだらない内容なのに、まるで純文学でも書くようにチマチマとしつこく書き直している毎日です。なぜ言葉が大事かと言えば、言葉はツールですから、たとえば腕時計を修理するには専用

旅のプロフェッショナル:Anizine(無料記事)

昔、あるプロデューサーと外国に行ったとき、予算がないロケだったのでふたりで大きめのツインルームに泊まった。彼は年に30回くらい外国のロケをしていたので、俺が知らないことをたくさん教えてもらった。昨日ホテルに泊まり、もらったケーキをホテルの冷蔵庫にしまったとき久しぶりにその人の顔を思い出した。 彼は外で買った食べ物を冷蔵庫にしまうと、着ていたシャツをそこに挟んだ。「それ、何をしてるんですか」と聞くと、「冷蔵庫ってチェックアウトの時に入れたことをよく忘れるんだよ。だからこうして

正のルッキズム:Anizine

「ルッキズム」という言葉を聞いたことがないという人に出会った。時代とともにたくさんの表現が生まれているから、すべてを追うことは難しいとわかっているが、どうやってその言葉に関する話題をかいくぐってきたのだろうと不思議に思う。 聞いたことがなければ、それが「過去には容認されていたが現代では避けるべき」という認識も生まれないはずで、だからその人は容姿に関する冗談を言う。面白くない冗談を。 おっさんというのはいつの時代も自分より年下に媚びたり説教をしたりするから基本的に嫌われるも

行った国のベスト10:Anizine

ある集まりで、若者が大声で話していた。 「声が大きい人は、だいたい意味のあることを言っていない」 というロバート・ツルッパゲの言葉があるが、彼もまさにそれだった。つい最近ロンドンに行ってきたが、いかにロンドンがオシャレで日本がダサいかを熱弁していた。こういう人はただ面白く観察していればいいのだが、同席していた40代くらいの香川照之さんに似た人が、優しい目でこう言った。 「では、あなたが行ったオシャレだと思うベスト10の国を教えてください」 若者は黙ってしまう。だって初

フォロワー数:Anizine(無料記事)

ソーシャルメディアのフォロワー数というものに価値があるとは思っていないんだけど、明らかな「起こり得ること」がある。無関係なフォロワーが増えると起きる出来事があるのだ。 たとえば、Twitterなら5000人あたりから始まると感じる。自分が知人と話しているつもりのことがRTされてたまたま知らない人の目に入る。「それはおかしい」「事実と違う」「何も知らないくせに」「太りすぎだ」などと、まったく知らない匿名の人から突然書き込まれることになる。 これはどうしようもないことなので無

裏方は裏に:Azinine(無料記事)

何かを作るときには多くの立場があります。演劇なら演出家、役者、衣装、舞台美術の人がいたりするわけですが、わかりやすい分け方は「舞台の上にいるかどうか」いわゆる、表方と裏方です。最近は皆ができごとの裏側を知りたい欲求が増えてきて、表だけでは満足しないようになってきました。 それが顕著にあらわれたのは「とんねるず」だった気がします。素人であったとんねるずがテレビのバラエティの世界に入って、そこで視聴者側から見たものを内側から翻訳して見せていた。ディレクターやプロデューサーを表に

やめた方がいいこと:Anizine

ソーシャルメディアにおいて「した方がいいこと」はなかなか難しいのですが「やめた方がいいこと」はハッキリしています。その振る舞いで世界が開くか閉じるかが決まりますので、定期購読メンバーにお知らせします。

空き巣の文句:Anizine

インスタのフォロワーがまったく増えない、と泣き言を言ってみた。本当はどうでもいいんだけど。それらのプラットフォームのマジョリティが好む写真をアップすればいいのだろうが、それでは本業に差し支える。「バズる」というのは多くの人が共感することだから、つまりわかりやすいものなのだ。別に本業でもわかりにくいことをしているつもりはないんだけど、バズりたいという下世話なバズ欲が見えてしまうとアウトだ。 このnoteのフォロワーは4万人くらい、Twitterが1万人、インスタは5000人ち

ハラスメント全般:Anizine(無料記事)

昨日読んだ記事に絶句した。「ミス・アース」というミスコンテストの予選会のパーティで、出場者の女性たちが審査員たちのお酌をさせられ、ホテルの部屋に誘われるなどのセクハラをされた、というもの。この大会は国連機関がパートナーだと名乗るが、国連側は無関係だと言っている。 こういったハラスメントは後を絶たず、酒の席で多少無礼な真似をしても許されるという日本文化は色濃く残っている。俺は酒を飲まないのでシラフのままずっと観察しているが、気になることは多い。酒だけではない。たとえば恋人がい

含み益ゼロ:Anizine(無料記事)

ダメな自分がダメさを肯定して生きていかれるんだから、今の時代はまあまあ幸せなんだと思う。だからといって「もっと不幸な国もある」とか「豊かな国に比べたら全然」などと言う気もない。今の自分がいない場所と比べても仕方がないのだ。仕方がないことを口だけで言いたがるのは『娯楽』だ。 自分は美男にも天才にも生まれつかなかったから、今持っているちいさな工具箱にあるだけの、どうしようもない道具でなんとかしなくてはいけない。ホームセンターで売っている980円(税別)のカラフルなドライバーセッ