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Anizine

写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。
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2021年6月の記事一覧

ベスト10が言えますか:Anizine

俺が、「ものごころがついた」のは30歳を半分ほど過ぎた頃でした。それは仕事で、という意味ですが、それまでは首もすわっていませんでした。 スポーツに喩えると、ルールをおぼえること、体力をつけたり基礎訓練をすること、試合に出ること、試合で勝てるようになることのように、順を追って成長していきます。これだけは揺らぐことのない事実だと思います。基礎訓練やルールを習得しないまま試合に出てしまい無残な目に遭っている人をたまに見かけますが、自分の親戚でない場合は遠くから傍観することにしてい

ひとりでやる:Anizine(無料記事)

早く行きたいならひとりで行け。 遠くまで行きたいならみんなで行け。 というアフリカのことわざがある。だからみんなで集まって何かをするのだという人がいるのもよくわかる。でも、みんなって誰のことでしょうね。人数だけ集めればいいかというと、そうでもなさそう。 俺はデザインやCMという大人数でやる仕事を経験したのち、今はほぼひとりで完結する「写真の仕事」をしています。もちろんスタジオに多くの人がいる場合もありますけど、CMの現場ほどではないし、どこかに出かけて行って撮る風景写真な

両手に持つもの:Anizine(無料記事)

「生きる、って何ですか」 と、ある俳優に聞かれた。突然だったのでやや答えに詰まる。 詰まるのは当然で、それがわかっていれば俺はもっと自信満々に生きていると思う。こう生きてきたことは間違いだったかもしれない、という逡巡や後悔に支配され続けている。俺がオッサンと話すのが好きなのはチカラが抜けているからだ。若者には無限の可能性があるから「夢の圧」が強く、その言葉のひとつひとつが、「俺はそうなれなかった」という刃となって突き刺さる。 それなりにやることをやりきったオッサンは、で

冷蔵庫のカレンダー:Anizine(無料記事)

他人の目に触れる文章というのは、ある程度気を遣って推敲されたものであったはず。提出する書類、新聞・雑誌などの記事、ラブレターなどもそうだけど、何度も「本当にこれでいいか」と、伝えたい事実や感情が表現できているか熟考して言葉を選んでいたはずだ。 それがソーシャルメディアでは雑な会話と同じように扱われる。会話に無駄があるのは当然で、効率よく連絡事項を伝えたいという目的だけでは2時間も話すことはできない。無駄な会話独特の、やり取りの間の沈黙や話の脱線があるから楽しいのだ。しかしそ

真似が嫌い:Anizine

「真似」が嫌いなんです。とにかく真似に関わるものはすべて苦手なので、その理由を丁寧に説明しようと思うんですけど、それは「真似をすることが好きな人」への攻撃と受け取られるかもしれない。たとえば俺はシイタケが嫌いだと表明することが、大好物である人の気分を害するのは知っているし、シイタケ農家の長男もいい気持ちはしないだろうということも十分わかっている。 でも、自分の好き嫌いで他人が傷つく、というブレーキに支配されて話される当たり障りのないトピックが面白いわけはない、でも無差別に誰

地味な文春砲:Anizine

この前、Twitterのスペースで、「ネットに溢れる誹謗中傷を止めるにはどうすればいいか」を考えていたんだけど、その中で『週刊文春』のゴシップ記事を利用する、という案を思いついた。