コインロッカーの義務:博士の普通の愛情
ある骨董の集まりに行った。僕に骨董を教えてくれた人が鎌倉時代の香炉を見せながら言った言葉は、「私はこれを死ぬまで預かるのよ」だった。
名工によって作られたものは、価値のわかる人がある期間だけ自分の手元に預かり、次の時代に大事に手渡すのが義務なのだという。「だから、コレクターというのは自己顕示欲や自慢のために買ってはいけないの」と彼女はちょっと怒ったような顔で言った。白髪の美しい60代の女性だった。
彼女が僕に骨董品を見せてくれるきっかけになったのが、ある著名な収集家が高額