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博士の普通の愛情

恋愛に関する、ごく普通の読み物です。
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2021年3月の記事一覧

貧弱な恋愛:博士の普通の愛情

作家の大木亜希子さんは、最近発表された小説について、「これは私が書いた小説です。他の誰にも書けない小説を書きました。」とコメントをつけていた。このシンプルな言葉は文章を書く人への大きなヒントになると感じたが、そんな客観的な感想を言っている場合ではなく、自分も自分にしか書けないことを見つけないとマズいぞ、と反省した。 先日、ここを読んでくれている定期購読メンバーから「あの話、面白かったですよ」と言われ、何も思い出すことができなかった。10日くらい前に書いたものだというのに。

震度5弱:博士の普通の愛情

和歌山で震度5弱の地震があった、というネットニュースを見た。 私はそこに住んでいるはずの男性のことを思い出す。彼とは25歳のとき2年ほどつきあっていて、名前は仮に「日高くん」と呼ぶことにする。私はその頃、陶芸教室に通っていた。無趣味ではいけないよと友だちに言われて無理矢理思いついたのが陶芸だった。数回行くうちにこれなら続けられるかもしれないと思った理由のひとつが「日高くん」だった。 彼の父親は和歌山で陶芸の工房を経営しているそうで、長男である日高くんは東京の陶芸教室で勉強