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博士の普通の愛情

恋愛に関する、ごく普通の読み物です。
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2021年2月の記事一覧

霊媒師:博士の普通の愛情

友人とお茶をしようと約束していた。 僕が先に店についてアイスコーヒーを頼んで待っていると、彼は誰かを連れてやってきた。僕は知らない人を勝手に連れてこられることがあまり好きじゃない。その人と話したいかどうかはわからないからだ。 「信夫、彼女は俺の友だちで如月さん。霊媒師をやってるんだ」 「霊媒師、ですか」 「はい、だいたいみんなそんな反応なので、慣れてますけど」 20代後半に見えるその女性はとても落ち着いていた。僕はスピリチャルな話をする人が苦手なので、まあまあ魅力的

麻婆丼の響子さん:博士の普通の愛情

僕はコンビニでドリアを買った。隣のレジに並んでいたのはどこかで見たことがある女性だった。 夜の2時。てきぱきと仕事をこなすシャリマというネパール人の店員は、ふたつの弁当をレンジで温めていた。コンビニの客は僕らふたりだけ、とても静かだ。レンジがチンと大きな音を立て、僕らの弁当が手際よく渡される。店を出ると、その女性は僕と同じ方に歩いてくる。 そうか。うちのオフィスビルで働いている人だ。何度かエレベーターで一緒になったことがある。彼女のフロアは確か編集プロダクションで、僕の事