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博士の普通の愛情

恋愛に関する、ごく普通の読み物です。
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2020年3月の記事一覧

アンチョビのパスタ:博士の普通の愛情

23歳のとき、僕は地元の船橋から通勤していた。 編集プロダクションの雑用をやっていたので、いつも終電ギリギリ、間に合わない場合はオフィスのカウチで寝る日々だった。取材の仕事でたまたま出会った25歳の女性がいた。彼女は新人のライターで、二度仕事場で出会った。 編集の現場は毎日会う人が違う。今のようなソーシャルメディアがなかったから、電話番号を聞くなんてことは重々しく感じられ、カジュアルにはできなかった。 二度会う、というのは出会いの中でも特別なんだろうと思う。まったく別の

ユカとマリエと母親:博士の普通の愛情

ユカちゃん、僕のファッション、どう思う。 シンジは友だちのユカに聞く。 お洒落ではないけど、ダサくもないかな。 うん。マリエに「ダサい」って言われた。 マリエが言ったんだね。 どうしたらいいと思う。 一緒に服を買いに行くといいよ。 数日経って、シンジはまたユカに聞く。 ユカちゃん、これでどうかな。 何が。 僕のファッション。 いいんじゃないの。 そっけないな。 うん。 彼女にアドバイスをもらいながら買ったから、これでいいと思うんだけど。 シンジの

恋愛小説でしょうか。:博士の普通の愛情

「ねえ、今まで読んだ恋愛小説で一番好きなのって、何」 「そう言われると困るな。俺はあまり読んでないから」 「あたしは決まってる」 「えっちゃん、決まってるなら教えてよ」 「あとで言うから、ちゃんと思い出す努力してよ」 俺はやってはいけない方法だけど、えっちゃんにバレないようにスマホで「恋愛小説ランキング」を検索してみた。「ロミオとジュリエット」を筆頭に古今の名作が出てきた。最近特に思うんだけど、何かを一から思い出すことができなくなっている。ヒントが欲しいのだ。 次