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博士の普通の愛情

恋愛に関する、ごく普通の読み物です。
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2020年2月の記事一覧

一万円札:博士の普通の愛情

20歳になるかならないかの頃、僕らはある「欲求」に囚われていた。わかっているだろうからもったいぶらずに言えば、性欲である。 僕は家の近所のコンビニでアルバイトをしていた。深夜のコンビニにはありとあらゆるジャンルの人がやって来る。僕らはレジに立ちながら、客の物語を勝手に作り上げていた。 毎晩、仕事帰りに立ち寄ってビールと焼き鳥の缶詰を買っていく態度の大きいサラリーマン。水商売だと思われる香水臭いおばさん。一人暮らしの老人。どの人からも平凡な物語が容易に想像できた。 その中

◎ご報告

以前勤めていた会社の後輩に 10,000円 https://note.com/katahira_bt Anizine「サグラダファミリアを見に行って欲しい」へ 100,000円 https://note.com/aniwatanabe/n/n7c1e95b37503 「ドバイの七つ星ホテルに泊まってみたい」へ 30,000円 https://www.facebook.com/makoto.kotani.35/posts/1469598026539440 「河瀬大作さん、

鑑識が知った事実:博士の普通の愛情

やや危うい話なので、場所は伏せておく。 僕が毎日のように通っていた、商店街の入り口にある喫茶店。夫婦が二人でのんびりと営業していた。神経質そうな雰囲気の痩せたおじさんは無口どころか、今まで一度も声を聞いたことがなかった。 おばさんが客から聞いて伝える注文に返事はせず、うなずくかうなずかないかくらいに首を動かすと、おもむろにコーヒーを淹れ始める。おじさんがカウンターをコンコンと人差し指の爪で鳴らすと、「コーヒーが入った」という合図。おばさんは読んでいた雑誌を閉じて、客のとこ

Paris:定期購読メンバーへ。

2/3から一週間、パリに行ってきた。いつもと行動範囲がまったく変わりないカンジ。 今回はビジネスのチケットを取っていたんだけど、ファーストクラスに空きがあるというのでアップグレード。 機内食はSUGALABOの監修でした。 初日の夜は、友人がシェフをしている、SPOON Alain Ducasseで。

月の光:博士の普通の愛情

カフェの窓際の席で、僕は友人のエリカを待っていた。 彼女は会社の後輩だった。地元の男性と結婚して三重県で暮らすことになり、数年前に会社を辞めた。同じチームに在籍していたから距離は近く、ふたりで徹夜をすることも珍しくなかった。ハードな仕事をしていたからか、僕はエリカに男性の同僚と同じような気持ちで接していた。 ある日の仕事が終わった深夜、翌朝の出張が早いのでどこかのホテルに泊まることにした。会社の皆がよく使っている古ぼけたビジネスホテルはイヤだから、新橋にあるホテルに行こう