マガジンのカバー画像

博士の普通の愛情

恋愛に関する、ごく普通の読み物です。
恋愛に関する、ごく普通の読み物です。
¥500 / 月
運営しているクリエイター

2019年12月の記事一覧

過去の残骸:博士の普通の愛情

ねえねえ、男女の友情って成立すると思う? 一番嫌いな話をするタイプだね。きみは。 暇つぶしだから、いいじゃん。 いいけど。二度と会うこともないと思うし。 毎月やっている友人の集まりで隣に座った女性との会話である。俺は恋愛についての話が苦手だ。初対面のやつのことなんか何も知らないし興味もない、そして知り合いだと逆に生々しい。どっちにしても恋愛の問題を話す相手なんて存在しないのだ。 ねえ、成立すると思う? どうだろう。どっちでもいいよ。 どっちでもいいって、優柔不断

牛たん弁当:博士の普通の愛情

仙台に住んでいる古い友人、片岡が、六本木で家具の展示会をするというDMが届いた。 片岡とはしばらく会っていないし、彼が作る家具が好きだったので見に行くことにした。もしかしたら東京ではあまりお客さんが来ないんじゃないかと思っていたが、それは杞憂だった。広いショールームにはひっきりなしに客が来て、家具はどんどん売れているようだ。そんなこともあって、忙しく立ち回っている彼とは簡単な挨拶しかできなかった。 代わりに、手伝いをしていた若いアシスタントの女性が僕につく。彼女がひとつず

恋愛とはホラーである:博士の普通の愛情

シェイクスピアどころか、有史以来、恋愛をテーマにした文学は数限りなく生まれている。そして飽きられていない。アホかと思う。 しかしアホと言ってしまうと、「博士の普通の愛情」の存在が否定されてしまうので我慢して続ける。恋愛とは何か。それは甘く切ない感情だけを指すこともあるんだけど、本当はもっと動物的な何かを含んでいる。 できるだけチカラを持った配偶者を選んだり、残すべき優秀な遺伝子を求めることは動物的な行為だとしても、「コントロールがきかないレジャー」であるとも言える。サルの

どうでもいいホテル:Anizineなど

平林監督の晴れ舞台を見たかったんだけど、ロッテルダム映画祭にはたぶん行けそうにないので、1月はほんの数日だけ近場のビーチリゾートに行くことにした。 どこかに行くときにまったく気にしないのがホテルのランク。毎日ひたすら街を歩き回っているからただ寝るだけのことが多い。バリ島のようにホテルにいる時間が重要な場所ではいいところを選ぶんだけど、大きな都市ではどうでもいい。 よくパリのホテルなどで4つ星などと言われるけど、あれほどあてにならないものはない。ミシュランとかのイメージが強

千鳥ヶ淵の桜:博士の普通の愛情

掃除の途中、昔使っていたシステム手帳が出てきた。 中身は取り出したはずなんだけど、数枚の割引券やレシートなどがポケットの中にあるのを見つける。そして一枚の写真が出てきた。 千鳥ヶ淵の桜を背景に、私とサトルが写っている。花見客が多くて楽しみにしていたボートには乗れなかったけど、サトルとの大切な思い出。私はその写真を手帳に入れて、いつも持ち歩いていたことを忘れていた。 過去の写真は決して増えることがない。なくしてしまったり、捨ててしまったり、減ることはある。私は新しい手帳の

ウィーンのタイトルマッチ:博士の普通の愛情

僕にはおかしな癖がある。SNSなどでよく知らない大人数のグループが写っている写真を見ると、誰と誰が付き合っている、と妄想したくなるのだ。 町を歩いていると、お似合いのカップルや、やや首をひねりたくなるようなふたりを見ることがある。美男美女、ロックミュージシャン風の彼氏とグルーピー風の女の子、まんだらけなコミケっぽいペア。 お似合いの方はわかりやすいんだけど、「どうしてあなたとあなたが」と目を疑うような組み合わせの方がグルメ度は高いので、僕くらいの美食家になると主にこちらの