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「技術者として、いいものが作れるように自分の力をつけたい」 - 瀧島和則さんへインタビュー

2018年に高専を卒業してから5年の月日が経とうとしています。多感な時期を共に過ごしたクラスメイトは、いつの間にか遠いところへ。そんな私たちの今の姿をお伝えします。

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今回のクラスメイトは瀧島 和則(25歳)。国立東京工業高等専門学校 専攻科に進学後、北陸先端科学技術大学院大学でITシステムの耐災害化に関する研究をする。現在は都内のエンジニアとして働いている彼に、新宿の一室で取材した。

編集(以下、編):お越しいただきありがとうございます。自己紹介をお願いします。

瀧島 和則(以下、瀧):瀧島 和則です。これが自分のところの名刺です。(名刺を差し出す)

編:あ、ありがとう。(名刺を見ながら)所属はMVNO事業部。。MVNO?

瀧:MVNO知らない?

編:知らないな、ぜひ教えてください。

瀧:ここにもあるけど、この携帯電話のネットワークを提供しているのは日本だとドコモ、KDDI、ソ。。。ドコモさん、KDDIさん、ソフトバンクさんと楽天さんの携帯大手4社。この4社のままだと寡占状態になり、電話料金も高止まりしてしまう。ちなみに10年前は結構携帯電話が高い時期があったんだ。

編:ふむふむ。

瀧:この状態を打破するためにできたのがMVNO(Mobile Virtual Network Operator/仮想移動体通信事業者)って仕組みで。具体的にはネットワークを提供している携帯大手にデータ接続料を支払って通信設備を借りて、自社のコアネットワークに繋いで消費者に独自のサービスを提供する。これによって、価格競争を促すんだ。

※コアネットワーク:移動通信ネットワークにおいて、端末を網に接続させるための信号(シグナリング)や通話・通信に関わる信号を処理するネットワーク。

編:なるほど。君はそのMVNOを提供する側のエンジニアなんだね。

瀧:そうだね。この仕組みを動かすためのコードをゴリゴリ書いているね。

編:オフレコの話も多そうだ、あとで詳しく聞かせて。ちなみに休日はどんな風に過ごしているの?

瀧:4月から東西線沿いに引っ越したから、割とメトロに乗って、ぐるぐる回っていることが多いかな。今も持っているのだけど、東京メトロの一日券が600円で安い。何か都内に出る機会があったら、そのままぐるぐる回ってる。

編:ぐるぐる回る。ぐるぐる回るってどんな楽しみ方なんだろう?

瀧:知らない駅に降りておくと、次にその駅に来たときに乗り換えとかが便利!

編:なるほど?思ったより、実用的な楽しみ方なのかな笑

瀧:例えば、あそこの階段を上がるとあの出口へ出るとか、赤坂見附だと対面乗り換えできるから、銀座線から丸の内線が簡単とか。

編:ああ、なんか分かる気がするなあ。

瀧:ちなみにこの前降りた、茅場町は何もなかった笑

「短期と長期の両方の視点で考える」

編:そういえば、君はJAIST(北陸先端科学技術大学院大学の略称)にいたときも、いくつかコンテストに出ていたよね?

瀧:そうだね。研究室のメンバーといくつかコンテストに参加していたかな。情報危機管理コンテストや、アプリコンテストに出たかな。

編:君のことを調べていたら、いくつかのコンテストで賞を獲得していてすごいなと思ったよ。君は高専の時もプロコンに出ていたし、コンテストに参加することが好きだったりするのかな?

瀧:自分から積極的にコンテストにでるタイプではないかな。もちろん、実際にコンテストに出るとテーマや課題があって、時間内に課題を集中して解くのは楽しいけどね。

編:課題を解くことが好きだから参加するって感じなのかな?

瀧:うーむ。課題を解くことが好きだからって訳ではなくて。なんなら、コンテストはめんどくさいモノだと思う。

編:ふむふむ。

瀧:実際に参加すると、意味不明な課題が出たりと、短期的には面倒なことが多いのだけど、長期的にみると得られる経験って多い。例えば、ここで得た知見を他の場所で活かせそうとか、就職活動にも活かせるかもとか。

編:長期的にみてメリットがあるというのは、後に自分の糧になることがモチベーションに繋がってる感じなのかな?

瀧:確かにそうとも言えるかも。自分が大学院を選んだのも同じような感じかな。自分が専攻科を卒業するときに、そのまま就職するのと、大学院に進む選択肢があったのだけど。しっかりとインターネットのことを知りたいと思うなら、このタイミングで一回集中して勉強できると、長期的にみて今後の自分の糧になるだろうなと考えて、JAISTへの進学を決めたのだよね。

編:そうだったのか。

瀧:短期と長期の両方の視点でメリットとデメリットを考えて。そこにめんどくささも天秤で考慮しつつ、良さそうだったら、腹をくくってやるかーって感じかな。

編:実際に腹をくくってやってみて良かった?

瀧:良かったね。勉強以外にも、今まで過ごした関東圏から石川へ移って、新たな環境での暮らしを経験できたのも良かったなあ。

「物事を俯瞰して考えること」

編:大学院に通ってみてどうだった?

瀧:研究室に入ってからはITシステムの耐災害化に関する研究をやっていて、それらの知識が深まったのは勿論だけど。メタ知識として、こうすれば知見が貯まるとか、どのように進めれば、こういう結果を得られるという感覚を学べたのは大きかったかな。

編:その肌感をつかめたの羨ましいな。少し学校行きたくなってきた。

瀧:この時、自分が一番影響を受けたのは研究室の篠田先生で。彼に研究とはなんたるかを教えて貰ったように思う。

編:なるほど。篠田さんはどんな方だったの?

瀧:彼は伝説のハッカー的な存在なんだけど。彼は知識が豊富なのは勿論だけど、物事を俯瞰して考える力がすごかった。

編:物事を俯瞰して考える。

瀧:彼は対象に対して細かい最適化で数字を1%2%を上げるのではなくて。全体を俯瞰してみて根本的な問題を見つけて。抜本的にその問題を解決するっていう考え・動き方を体現していた。この物事を俯瞰してみて、考えることは今の仕事でも活かしているかもしれない。

編:おお、素敵な体験だね。僕からみたら君は高専時代も俯瞰してみて考えていたように思うけどね。

瀧:俯瞰して考えることって結構難しくて。いつの間にか局所的な考えに陥ってしまうことは多々あってね。この局所になってしまうということを自覚したうえで、俯瞰できるっていうのが彼はすごかった。なんというか、広い視野を維持したまま、考えるというのかな。

編:なるほどな。君が局所的な考えに陥りそうになると彼の顔が浮かんだりするのか。

瀧:そこまでではないんじゃないかな笑。

「システムが好き」

編:学業意外だとどんなことをやっていたの?

瀧:高専時代からなんだけど、アプリを作るバイトをしていて。専攻科のときはオフィスにちょくちょく顔を出していたのだけど、JAISTのときはリモートでアプリのコードをゴリゴリ書いていたかな。

瀧:アプリのCICDの環境を整えたりもしてたな。あれ、今の仕事でもCICD環境を直したな。このままだと、CICDを直すことが仕事になってしまいそうだ。

編:あらら笑 君は開発がというよりはエンジニアリング自体が好きって感じなのかな。

瀧:うーむ。どっちかというと、システムが好きというか。

瀧:多分、自分がインターネットが好きなのもそうなのだけど、モノとモノが存在して、それがお互いに作用して起きている何かを観察することが好きなんだ。

編:お互いに作用して起きている何かを観察することが好き。

瀧:自分がJAISTでITシステムの耐災害化の研究をしたときも、結局システムの安全性の解析をしていたし。

編:君にとって、それは重要そうだね。

瀧:うん。システムを組むと想定外なことをが起こる。実際に手を動かしてみると、分かっていなかった部分が出てくるというのが面白い。まあ、バグ自体は嫌だけどね。

編:ふむふむ。なんか分かる気がするな。

「技術者として、いいものが作れるように自分の力をつけたい」

編:そろそろ終わりが近づいているね。進路選択でも「インターネット」がキーポイントになっているように思いました。君にとって「インターネット」どんなものなのか、ぜひ聞かせて欲しい。

瀧:そうだな。今の会社にも、「インターネット」をやりたいと思ったから入ったぐらいには大きいものだね。今は「インターネット」をやっているわけではないけども笑。あと、今の仕事をしていても思うけど、インターネットはインフラではないよなと思う。

編:おお。それまた何故、インターネットはインフラではないのだろう。

瀧:インターネットは前提として、技術者が遊びで作ったものが大きくなったものだから、利用できることが保証されるものではないんだよね。例えば、自分のスマホからネットに繋がらなくても、それはインターネットである以上普通に起こりうることなんだ。だから、他のインフラとされる水道や電気とは異なると思うのだよね。

瀧:ただ、そういうものでないと普及しない。逆に普及したことによって、結果的にインフラになっていくのだろうなと思うな。

編:面白い。普及が進み、少しずつインフラになっていく。今はその過程なのか。

瀧:アプリを作るバイトをしていたときの知見でもあるのだけど、とりあえずリリースしてみて、反応をみてみようとか。スピードと品質はトレードオフなところがあるから、一回スピードを重視して普及させてみて、後に考えるのも結構良い方法なのかもしれない。

編:これはいつも聞いている質問なのだけど、高専時代の自分に何か伝えるとしたら何を伝える?

瀧:伝えたいことはないかな。そんなことを考えても、過去の自分はコントロールできるものではないから。コントロールできないもの、不変なもののことを考えても時間の無駄じゃない?って思ってしまうな。

編:なんとも君らしい答えだね。ちなみにもし後輩にアドバイスするとしたらどうかな?これなら可変だよ。

瀧:確かに可変だ笑。そうだな。高専に通っているなら、誰かと何か一緒に物を作ったり、作業はしたほうが良いよなと思う。やっぱり、生きていく上で人とコミュニケーションをとっていかないといけないし。システム的にいうならば、人に対して、何をしたら何が起きるか、インターフェイスや挙動をある程度は把握しておくことは重要だと思う。怖いし面倒なことでもあるのだけどね。

編:最後の質問なのですが、3~5年後どうなっていたい?

瀧:今年から社会人になってチームで仕事をしていると、何年もエンジニアをしている人の動きはやっぱりしっかりしているのだよね。そういう姿をみていると、自分も技術者として、いいものを作れるように自分の力をつけたいなと思うよね。力をつけたうえで適切なやり方や進め方を選択できるようになりたいかな。

編:この度はインタビューを受けてくれてありがとうございました。

瀧島 和則 (Kazunori Takishima)
1997年生まれ。


All images via Shion Fukushima
Text by Akinori Nitta
Content Direction & Edit: Akinori Nitta, Shion Fukushima, Yo Horiuchi

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