ちょっと大人気分
初めてコーヒーを飲んだ
小・中の頃から仲が良かったA君は、高校進学しないで中学卒業と同時に就職した。
A君は働いていたので、高校生の俺とは違って、お金には多少の余裕があったようだ。初めて駅前の明治通りのDという小さな喫茶店に連れて行ってもらった際、なるほど喫茶店とはこんな感じなのかと、少しだけドキドキした、かすかな記憶もある。
彼は大人びてコーヒーを注文し、じゃぁ、俺もと、同じにしたのだが、初めてコーヒーなる深いこげ茶色の飲み物が、確か、苦かったという印象だけで、いわゆる味わいというモノはよく分からなかったと思う。
たまり場という訳ではないけれど、それから何度か、A君を交えて小学校からの同級生らとも、その店に行くようになって、コーヒーというものに慣れてきたし、ちょっと大人気分なつもりでいたと思う。
やがて時は過ぎ、それぞれ進む道も分かれ、みんなばらばらになってしまった。Dという小さな喫茶店もいつしかなくなってしまった。
コーヒーミルとサイフォンで
それから数年後、社会人になり独身寮の生活となった。その時期、先輩がミルでコーヒー豆を挽き、アルコールランプ式サイフォンでコーヒーを楽しんでいた。へ~、こんな方法もあるんだ? とつい感心したものだ。
それからさらに歳月は流れ、アパートで暮らし始めたのだが、ふっと、あの先輩のコーヒータイムを思い出し、一式を揃えることになった。
夜のひと時、LPレコードでジャズなんぞ聴きながら、コーヒーの味わいも愉しめるようになった。
さらなる光陰矢の如し、小生もそろそろ断捨離を考えなければならない時期でもある。既にレコードもプレイヤーも無い。今さらミルで豆を挽き、サイフォンでコーヒーを、というのも面倒くさいし、コーヒーメーカーで手っ取り早く飲めるに越したことはない。
だいたい一日おきに、朝食後が1回目のコーヒータイムで、午後は3時過ぎ頃、パソコンなんかやりながら、2回目のコーヒータイムとなる。
そんなコーヒーの時間は、心の中のタイムマシンに乗り、Dという小さな喫茶店に直行し、A君やN君たちと青春を語るのもいいかも知れない。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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