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おきつね様のなぞ

夏の北海道をクルマで走っていると、本当になんでここまで痩せて生きていられるの?というくらいカリカリに痩せたキタキツネをよく見かける。たくましいなあ、と感心する。ついこの間まで、本州でもキツネはとても身近な野生動物だった。

稲荷神社に行くとこのような「おきつね様」が迎えてくれる。

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どうして稲荷神社におきつね様?こんな疑問を抱く人は多い。稲荷神社は農業の神様を祭っていて、キツネは神様の使い、というのが定説。でもどうしてキツネ?

昔の農村の人たちにとって、農作物を食い荒らすネズミが最大の敵だった。ネズミの大量発生は農家の生活を脅かす恐ろしい出来事。なんとかネズミの害を減らしたいという願いが、おきつね様を生んだ。

ネズミを捕ってくれるキツネは、とてもありがたい。昔の人は、このキツネの生態をうまく利用していた。その中身は…

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人家近くをテリトリーにしてほしくて、油揚げを使ってキツネを誘う。キツネはイヌ科がよくするように、テリトリーを守るためマーキングをする。キツネの匂いがあるだけで、ネズミがいなくなる。というわけ。

詳しくは「むらの自然を生かす」守山弘 著https://www.iwanami.co.jp/book/b259354.html

農家の人は、キツネとネズミの間の捕食者と被食者の行動をよく知っていて、うまく利用していた!そして感謝の気持ちも忘れない。おきつね様として祀った。

これは、今日的にいうと「生態系サービス」の1つ。上位捕食者の力を借りて、驚異的な繁殖力を持つネズミによる農業被害を軽減する。昔の人は、データを集めて解析するなど、しちめんどくさい科学をしたわけではないけど自然の生態系の仕組みをよく知っていたし、その知識を自分たちの生活を守るために使っていた。今風にいうと、この「生態系サービス」の費用はどのくらいか、計算してみると面白いと思う。

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いずれにしても、こんな魅力的な野生動物が身近な農村風景にいるだけで嬉しい。ねずみ殺しに頼らないで、キツネのような優れたハンターの力を借りる。そんな洗練された方法が、また見直されて再び使われていくといいね。

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