見出し画像

『天空の城ラピュタ』と「運動の複数性」について(その2・後夜祭)

こんにちは。
アニメの表現に注目して分析する【アニメてにをは】と申します。

★1~今回は、前回投稿した『天空の城ラピュタ』(宮崎駿監督)で見る「運動の複数性」の【その2】です。
楽しんでいただけたらうれしいです。

前回の記事はこちら。


★2~場面は『ラピュタ』の序盤。
パズーの住む炭鉱町へシータを探しにドーラ一家が襲ってきたところです。
ドーラの息子たちが炭鉱町の男たちと相争っている間に、パズーとシータは裏道から逃げ出して、渓谷の間を走る汽車に助けを求めるところ。


★3~パズーとシータが汽車に乗り込んでいるあいだにも、パズーはドーラの車が渓谷沿いに追ってきているのに気づきました。


★4~さあ、ここですね。ここが宮崎アニメでお馴染みの『運動の複数性』の箇所です。
パズーが汽車に乗っていて、窓の外には遠く、ドーラの車が接近してくるのが見えます。

【パズーの乗る汽車(手前)+ドーラの車(奥)】この【2つの運動が・交錯】していきます。

その逆構図【手前=ドーラの車/奥=汽車】

★5~パズーとドーラの構図が逆になって提示。ドーラの車(手前)+パズーの汽車(奥)】。
【手前と奥】+【構図/逆構図】を見事に使って、サスペンスを煽り立てるのです。
ここで注意すべきなのは、サスペンスを成り立たせているのは【ストーリー=意味ではない】という点です。
ここでワクワクさせられるのは【運動という視覚的な表現=非意味】だという点なのです。


★6~あいかわらず、つたない絵ですが、図で示すとこうなります。
汽車と車が隔たりながら並行して走り、両者は徐々に接近して【運動として交差】しようとしています。


★7~ちょっと寄り道。
この【手前+奥】と【構図/逆構図】は宮崎アニメがお得意とするところ。
これは『ルパン三世カリオストロの城』の中盤。

【手前+奥の塔】にそれぞれに【階段を昇るルパン+敵のエレベーター】とが【上へと昇る2つの運動体】として提示されていて【構図+逆構図】として見せているのは『ラピュタ』とそっくりですね。方向が上か、横方向かの違い。


★8~『カリオストロの城』の視覚的表現の特徴を図で示すとこのようになります。

2つの運動が、それぞれの塔の上へと上昇し【それぞれ階段かエレベーターかで】、お互いの視点から【構図と逆構図】でわかりやすく【運動の対比】を見せています。


★9~寄り道おわり。
『カリオストロ』もそうなのですが、敵対する存在が【2つの運動】として提示され、並行状態で追いつ追われつするのです。

そしてこれら2つの運動はサスペンスを煽り立てるため、両者は【必ず=交じり合おうとする】のです。
いまドーラは道路から線路へ移動しました。


★10~2つの運動【汽車とドーラの車】は交叉しようとしています。これが宮崎アニメに必ず現れる【運動の複数性】です。


★11~詳しくは略しますが、列車とドーラの車の攻防戦は、ひとまずパズーたちの汽車が勝利します。
そこで登場するのが陸軍の戦車です。
交わる運動は【3つ】になったのです。


★12~パズーには援軍だと思った陸軍の戦車はシータにとってはそうではありませんでした。
別の路線へと逃げるシータとそれを追うパズー。

【手前=シータ/中間=パズー/奥=軍隊】という【手前・中間・奥の3層構造】を提示する見事なレイアウトですね。
【物語=意味】が【空間構図という非=意味】で端的に提示されているのです。


★13~そこへドーラの車が現れて、さらに運動の層は複雑になっていきますね。
①=ドーラの車/②=ドーラを砲撃する戦車/③=逃げるシータとパズー
この3つ巴の錯綜ぶりが【運動の軌跡として交わりつつ】描かれて素晴らしいですね。


★14~渓谷の両側に【①=ドーラ一家/対岸に②=戦車】が対峙しあい、その【両者の真ん中で】パズーとシータが崩れ落ちようとする線路の端で落下せんとするわけです。

ここでも【手前/中間/奥という3層構造】として【視覚的に/運動的にも】見せてくれます。


★15~パズーとシータが落下して飛行石の力が発揮されました。
というところで、ドーラと陸軍の戦闘が再開されます。
【手前=ドーラ一家/奥=陸軍の戦車】という【層が2つに分離された形で】視覚的に表示されます。


★【終わりに】~さてさて、前夜祭にひきつづき、https://note.com/animeteniwoha/n/n565583fabec1

『ラピュタ』で確認できる、宮崎アニメ特有の表現【運動の複数性】を紹介しました。

ポイントは【物語は案外重要じゃない】という点ですね。
【運動という非=意味】こそが、このシーンを決定的に魅力的なものにしているということ。

こういう『物語=テーマ=意味』ではつかみ切れないでもみんな体感として実は知っている『アニメの非=意味的な側面』の魅力を言葉にしてお伝えするのが、【わたし=アニメてにをは】のとつめだと思っています。

さて、『となりのトトロ』、『天空の城ラピュタ』の次は、『耳をすませば』で金曜ロードショー・ジブリ夏祭り2022が終わります。
『耳』でもなにか【アニメてにをは】ならではなご紹介ができればと考えています。
ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?