見出し画像

ジブリの烙印(東小金井村塾編その9~討議の果て)

塾のある日のこと、高畑さんはこう切り出した。

「いまゲームの業界が勢いがあるらしいですね。昔だったらアニメの方に来ただろう若い人材でゲームの業界を選んでいるひとが意外と多いと聞きます。
ロールプレイングゲームというのですか、なんかプレイし終えると人生をひとつ生きてみた感動があるそうですね。それ、ほんとですかね?
テレビの中のちっちゃい人物に、自分を投影できるものなのですか?私にはちょっとよく分からないのですが、その辺り、業界通の久住さんはどう考えていますか」

「ええと、そうですねえ」

久住さんはいきなりの質問で苦しそうに、言葉をさぐりながら訥々と言った。
久住さんはゲーム会社でプロデューサー見習いをしている。

「別に業界通なわけでもないですし、ぼくはどちらかと言ったらアニメの方に転入したい口なのですが……
でも、あれですね、難易度で言うと簡単にプレイ出来てしまったゲームの場合、プログラムをいじることになって、パラメーターって言うんですが、それをいじって難しくすると、何か不思議なんですが、ゲームが怖い顔して挑んでくるとか、そういう印象を抱いたりしたことはありますね」

高畑さんは面白そうに聞いてきた。

「面白いですね。なんでしょう、ウサギみたい大人しいゲームが急に猛獣みたいになるって感じですか」
「まあ、そうも言えますね」

ここから先は

4,953字
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?