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『話の話』を記述する

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30数分の短編アニメ『話の話』(ユーリー・ノルシュテイン監督)の画面を、ひたすら・全編、記述します。
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2023年5月の記事一覧

『話の話』を記述する(その18~縄跳びと母娘)

 カット切り替わって、少し寄った距離で母親と乳母車。  タライに手を入れて洗濯していた母…

『話の話』を記述する(その17~詩人)

 テーブルの左端には詩人が椅子にまたがっていて、椅子の背もたれに両腕を抱き込み、その両腕…

『話の話』を記述する(No.16~不意の猫)

 それでは寝そべった嘘の猫のことに戻ろう。  これは論者だけが騙されたのだろうか、カメラ…

『話の話』を記述する(15~嘘の猫)

 さて大気の層2の何気なくて・不可思議な印象に一瞬、目を瞠らされている間にも、カメラは移…

『話の話』を記述する(14~反リアリズムなマルチプレーンの使用)

 ふたたび『話の話』の画面そのものの記述から外れれば、この漸近する大気が見る者に与える効…

『話の話』を記述する(13~2層の大気)

 カメラは彼らの縄跳びの様子にズームしながら、ある瞬間、ふいっと左方向に視点を移していく…

『話の話』を記述する(12~「永遠」またはマルチプレーン)

 中央に少女が縄を跳び、途中で左向きから右向きに姿勢を変える。  縄の左端はミノタウロスが持っていて、腕のパーツだけ可動して縄を回している。  このミノタウロスは巨大な身の丈に比べて心許ないほど小さな腰掛けに座っていて、その大小のコントラストでミノタウロスの重量感が活きている。  言い忘れるところだったが、縄跳びをする少女の跳躍の、弾力ある接地感もすばらしい出来だ。  縄跳びの縄の片方の端は、少女の右手に生えている小木につながっている。小木の横に胴長な壺が置かれている。彼ら

『話の話』を記述する(その11~「永遠」パートへ)

 光の充満からふわっと立ちのぼるような印象で、白っぽい画面の中、少女が巨大な牛(ミノタウ…

『話の話』を記述する(その10~屋敷)

 つづいて画面は奥に二階建ての古ぼけた屋敷があり、中間部右側にケヤキだろうか、黄色く色あ…

『話の話』を記述する(その9~複数の様式の共存)

 複数の様式の共存。  つまり母子はエッチング調に描かれている一方、狼の子は切り絵細工で…

ノルシュテイン『話の話』を記述する(その8~視線、交わってる?)

 これはかなり不思議なことだと言っていい。  通常の映像物語では、人物は映された光景に縛…

ノルシュテイン『話の話』を記述する(その7~狼の子)

 母子の姿が庇に隠れていき、カメラは庇の左方向にずれていく。  そのとき奇妙な映像処理が…

ノルシュテイン『話の話』を記述する(その6~ひさしとマルチプレーン)

 さて『話の話』の話だ。  『話の話』にもいくつかのシーンでマルチプレーンを使ったと思し…

ノルシュテイン『話の話』を記述する(その5~マルチプレーン)

 さて通常の平面アニメの撮影を先に(その4で)言った。  それに対しセルアニメで伝説のように言われる「マルチプレーン」とは何か。  通常の撮影は下を覗き込むカメラの下にある台はひとつである。  ひとつの台の上に複数の平面素材がひとつに重ねられることも多い。  それに対しマルチプレーンはひとつの台でなく、棚のように何段もガラスがはめられた台がしつらえられ、段と段の間には距離があり、その距離間は随意に変えられる。  そうやって上下に移動可能な何段もの台に素材をそれぞれ置き、撮影