![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/146705027/rectangle_large_type_2_46c7d73a877689b7a8a0f7958728bf25.jpeg?width=800)
親友を傷つけてしまった日
ユイと仲良くなったのは中学2年生の夏。
当時携帯電話が普及し始めた頃で、私の元にも携帯電話が与えられた。
主に電話やメールをしたり、着信音に設定する着うたフルを漁ってパケ死したり、mixiにポエムという名の黒歴史を刻み込んだりして日々を過ごしていた。(今もあんまり変わらないかも)
そんな日々の中、ある日私に知らないメールアドレスから「このメールを誰かに送らないと不幸になる」という旨の内容のメールが送られてきた。
いわゆるチェーンメールというやつで、当時流行っていて不幸にならないということは分かってもいたので無視していたが、後に送信者がユイだったことが発覚してしかもそのメールの内容はユイが自作したものだと聞かされた。
「おもしれぇオンナ」
そうしてそれまであまり仲良くなかったユイと友達になった。
それからは元々小学生の頃から幼馴染のアスカとユイと私とでよく遊ぶようになっていた。
(ちなみに私は男。こう書くと「いや人生のピークかよ」と思うけど、思い返すと楽しいことばかりではなかった。ただ人生のピークであることには変わりないねガハハ)
アスカはこの年にして結構ませていて他校の男子と付き合ったりしていたし、クラスの他の女子と喧嘩をしたりする破天荒な子だった。
ユイはアイドルが好きで趣味に生きているといった様子で明るく天真爛漫な子だった。
私は勉強も学年で下から3番目くらいで、運動もできず、軽くいじめられていたがこの頃は自我がなかったのであまり気にしていなかった。
この3人の仲は結構長く続いて、気づけば3人とも大人になっていた。
アスカは夜のお店で働いていてお酒の飲み方とともにお金を稼ぐことを覚え始めていて、ユイは結婚して子どももできていた。私は仕事をし始めて自我が芽生え理屈っぽくなっていた。
(その間、私がアスカを好きになったり、私がユイを好きになったり、どちらからも好きになられなかったり、恋の三角関係が始まりそうでただ2本の矢印が転がっただけの青春があったりしたがそれはまた別のお話。)
そんなこんなを経ても尚、仲は続いていたし定期的に集まってはその時の近況を話し合った。
ユイが結婚してからはユイの旦那さんとお子さんも一緒にユイの家で飲むことがほとんどだった。
ユイの旦那さんは穏和な性格で、物腰も柔らかくいつも優しかった。
その反面、決断力に欠ける部分があり、ユイは旦那さんに対して仕事のことや子育てについていつも小言を言っていた気がする。
そんな姿を見て私とアスカは面白がって笑っていた。
その日も、いつも通り集まって、いつも通り話して、いつも通り解散する、そんないつものはずだった。
しかし、無神経な発言でユイを傷つけてしまい、その日から一度も会っていない。
その日
その日もいつも通りユイの家で飲んでいた。
鍋を囲い、テレビを見て、楽しく過ごしていた。
食事も片付けも終わり、ユイは家事をしながら、子どもに気をかけながら他愛のない話をしていた。
そして、話題はお金についての話になっていた。
その頃、私は仕事でいくらか稼ぎがあったし、アスカも夜のお店で稼いでいたので明確な羽振りの良さを見せていた。
2人とも結婚、ましては子育てとは縁遠く、"自分のためのお金"があった。
私とアスカの2人で言いたい放題言っていた。
「お金は稼いでなんぼ」「今後のことを考えたら自分たちでビジネス立ち上げるのが一番いいよね」「お金に対する向上心ない人信じられないよね」
みたいな内容だったと思う。
内容の是非はともかく調子乗ってる時にしか言わないやつ。
その時(私からしたら)突然、ユイが大きな声を上げた。
「私の苦労を何も知らないあなたたちにそんなこと言われたくない」
発狂にも近い大声で罵声を浴びせられた後、「今日は帰って」と言われその日は解散となった。
驚いた。
その時は何に怒っているのかも理解できなかった。
というか未だにユイを傷つけたのがどの発言だったか明確には分かっていない。いかにも加害者らしいなと自分でも思う。
もちろん怒鳴られた後に「ユイに対して言ったわけではないし、ユイの旦那に対しての発言でもない。悪意は一切ない。」という旨を一生懸命伝えようとしたが問題はそこではなかったようだ。
それからユイとは連絡ができなくなった。
幸いユイの妹さんと連絡が取れていたので、しばらくの間は近況を教えてもらっていたが、「生活のことで悩んでいて精神的に不安定だった。自殺などの心配はないがもう2人には会いたくないとのこと」という旨を告げられた。
ショックが大きかったが、冷静になると怒りの感情すら湧いていた。
「今までそんなこと一回も言ってこなかったのにいきなり怒って縁を切るなんて…」と。
でも、もしかしたらずっと感じていたのかもしれない。
私はただ単に気の合う仲間で話しているつもりだったけど、発言の端々で自分の価値観を押し付けていたのかもしれない。
ユイは結婚をし、子どものため、家庭のために使うお金を日々やり繰りしながら、毎日これからの生活に幾ばくかの不安を抱え過ごしていたのだと思う。
そのような環境の違いなど全く考えず、無責任な発言を繰り返していたことが原因だったのではないかと今では思う。
それすら的外れなものかもしれないけど、それでもあのタイミングでユイが私たちに放った言葉の中にはあの瞬間だけではない積み重なった想いが込められていたのだと思う。
その時から自分の価値観を発信することは他人の価値観の否定に繋がるということを心に刻んだ。
それは"自分の価値観を発信しない"ということではなく、"どれだけ正しいと思っていても自分の価値観によって否定される人がいて、傷つけることがあるのだからその覚悟を持って発信する"ということ。
対面で話してる相手でも、第三者的に聞いてる人に対しても押し付け得る価値観とそれに伴う否定。
それでも自分の価値観を伝えることが必要な時はある。
その時は存分に伝えるべきだけど、自分に対する大義がない軽はずみな発言は不用意に他人を傷つけ、争いを生む種になり得る。
そして、一番損をするのは自分自身。
本当に失うなんて思ってなかった。
失いたいなんて微塵も思っていなかったものを失うのは本当に悲しい。
そんな想いはしたくないと思うようになった。
この記事で否定されちゃった人がいたらごめん
でも伝えたいことなんだ
今更ユイに対して謝りたいとは思っていないというか、何に対して謝ればいいかすら分かっていない自分に謝る資格すらないと思っているのでこのことは自分の得た経験の一つとして前向きに捉えてるけど、
できればまた仲良くしたいし謝れる機会がもらえるならすぐ飛んでいきます
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?