「動物園の肉食動物の餌を考える つながりの中の動物園」イベント報告!
6月28日に、帝京科学大学の動物観・動物園学研究室が主催し、どうぶつたちの眠れない夜に が進行で、イベントをしました!
開催場所は、大学内にあるフィールドミュージアム「ブリコラ」。
私たちの団体名、どうぶつたちの眠れない夜に には、夜に暖炉を囲むようにみんなでフラットに話そうというコンセプトがありますが、その着想のもとになった暖炉がこの場所にあります。
そして今回のテーマは、動物園の肉食動物の「エサ」!
みなさんはエサになっている動物のこと、考えたことがありますか?
今回みんなでモヤモヤ考えたこのテーマ、ぜひ最後までご覧ください。
1.思いつく動物園の肉食動物を挙げてみよう!
まずは、動物園にいる肉食動物はどんな動物が思いつくか、参加者のみなさんに聞いてみました。
事前に想定していた動物よりも、マニアックな種類を挙げる人もいました!
こんな動物種が出ましたよ。
ライオン、オオカミ、ヒョウ、ヘビ、ホッキョクグマ、ワニ、サーバルキャット、トラ、ハイエナ、フクロウ
2.じゃあ、その「エサ」って何を思いつく?
次に、その動物たちに与えているエサには、何があるか聞いてみました。
最初はするする出来てきたエサの種類、でも途中からなかなか出にくくなってきました!意外と考えたことなかったかもしれないですよね。
いろいろなエサの名前が出てきましたよ!
鶏肉、馬肉、魚、あじ、貝、ネズミ、牛肉、鹿肉、果物、鶏の頭、コオロギ、ミルワーム、牛レバー、オキアミ
ここで、肉食動物のエサも「動物」であり、生きていたころがあったということを再認識しました。
もしかして、動物園の肉食動物のエサになる動物のことも考えないといけないのでは…?という疑問が出てきたところで、次のセクションへ進みました。
3.動物福祉・動物園の役割から、このテーマを考えてみると…?
まず、動物福祉の考え方を一緒におさらいしました。
近年では、動物福祉に配慮した取り組みも盛んに行われるようになってきました。
そのひとつとして、環境エンリッチメントがあります。
環境エンリッチメントとは、飼育されている動物本来の習性が発現できるように環境を整えることを指します。
動物園のなかには、採食行動を多彩に引き出す環境エンリッチメントとして、生餌を与える取り組みをしているところもあります。
餌を追いかけたり、においや餌が動く刺激を受けたりすることで、たくさんの行動を発現することができます。
今回は、生餌としてカワウソにドジョウを与えて採食行動を促す例を紹介しました。
ドジョウを追いかけることで、カワウソの動物福祉は向上していると考えられますよね。
でも、ここで疑問が生まれます。
エサになった動物の視点に立ってみたら、どうでしょうか。
ドジョウの例で言うと、敵であるカワウソに襲われて恐怖や苦痛を感じ、展示場の中に放されるため逃げることも出来ません。そして、最後には食べられます。
ここで更に深く考えてみましょう、ということで参加者のみなさんとディスカッションをしました。
参加者のみなさんには「生餌になる動物の福祉を考える必要はあるのか?配慮する場合、どうしていったらいいのか?」という問いかけをしました。
みなさんそれぞれ一生懸命考えてくださいました。
こういった意見が出ましたよ!
・動物園に実習に行ったときに鳥類の展示で金魚を生餌として展示していたが、批判があったので、食べられるところが見えないようにすだれで目隠しをしていたことがあった。生餌自体は環境エンリッチメントとしては良いけど、来園者から批判が来ないようにしたほうがいいのかも。
・課題で生餌の話題が出た。調べたら、生餌に関する批判が出ていて、嫌な人は嫌なんだなと思った。
・肉食魚が魚を食べるエンリッチメントは日常茶飯事で批判されないのに、鳥が魚を食べるエンリッチメントになると批判が出ることに不思議さを感じている。
・生餌しか食べない動物を飼育しているので難しい。なるべくなら人工飼料のほうがいいと思う。エサのために改良された動物種がいるのか気になる。(佐渡友先生から:ミルワームはエサのために改良された動物といえるかも。金魚は家畜とエサの区別はつかない。人がどう使うかが違う。さぁ、どう配慮する?という話ですね。)
・生餌は食いつきが良いとか、健康面を優先している自分がいる。
・ペットとして飼っていたら、生餌側の動物に感情移入してしまう。飼ったことない動物だと、しかたないかなと思ってしまいそう。(佐渡友先生から:ペットとして飼っていても、その人の経験によっても受け止め方が変わりますよね)
一緒にモヤモヤ考えたあとは、動物園の4つの役割を改めて確認しました。
動物園には、①保全②教育普及③研究④レクリエーションの役割があります。
ということは、教育普及の観点からみると、肉食動物のエサになる動物のことを来園者に伝える必要があるのではないでしょうか?
もし伝えるなら、それはどんな方法や言葉で伝えたらいいのでしょうか?
ここからメインのディスカッションに入っていきます。
4.考えてみよう「あなたが動物園で働く人なら、動物園の肉食動物のエサのこと、どう伝える?」
エサになる側の動物のことを一緒にモヤモヤ考えたあとは、さらにもう一歩進んで「もしあなたが動物園で働いている人だったら、エサになっている動物のことを来園者にどう伝えるか?」を考えてもらいました。
もし、今回紹介した生餌の例のカワウソに与えるための生きたドジョウではなく、生きたヒヨコを丸飲みしているヘビを動物園で展示していたら?
魚だったらOK?鳥類だったら?哺乳類だったら?虫はどうなるの?
でも、弱肉強食は自然界では普通のことじゃない?
などなど、いろいろな動物種、考え方、感じ方から考えていきました。
参加者のみなさんからは、こんな意見が出ましたよ!
・大人にだけ伝える。
・オンラインなどで告知をして、それを見てもらったうえで実施する。親もその告知を見て、子どもに見せるかどうかを判断できるようにする。
・今まで生餌のことをまったく考えたことがなかった。ヤモリを飼っていて、コオロギをあげている。生餌は当たり前だと思っていた。生餌の福祉を考えたことがなかった。
・もし鳥と魚の展示で、魚も逃げられるような展示だったら?混合展示という言葉だったら受け入れられるかも?(アクアマリンふくしまのカワウソの展示はそう。ただ逃げ惑うことしかできない展示での生餌はだめで、隠れることができる場合はいいの、かも?ということ。)
・野生の食物連鎖だと問題にならないけど、動物園という人が関係する環境だと問題になるのがモヤモヤする。
・人間の手が入ることによって、感情移入しやすいか、しにくいかで議論が起こるのが難しい。
・動物園の動物はもともとは野生動物。来園者に伝えるほうがいいと思う。生餌でも栄養面、衛生面の観点から動物福祉を保ったほうがいいと思う。
・飼育動物のことにしか目を向けられていなかった。これから目を向けていきたい。
・人それぞれ違う考えが出てくると思う。この動物園ではこういうことをしているけど、あなたはどう思いますか?と問いかけるだけでも違うのかも。
・生餌をやるなら配慮もしなければならないとは思うが、みんなが納得する合理的な理由が必要。
5.まとめ「動物のことを伝えるのは難しい。だからこそ…」
このテーマは、わたなべさんがお世話になっている動物園の飼育員さんが屠体給餌の取り組みをしていて、その方の「餌になる動物の福祉も考えるべきなのでは?」という言葉から着想を得て決まった題材です。
動物のことを伝えるのは難しい。だからこそたくさん学んで、考え続けることが大切なのかもしれません。
今回参加してくださった参加者のみなさん、そしてたくさんのフォローをしてくださった佐渡友先生、ありがとうございました!
6.次回予告
次回は、千葉市動物公園でのイベント「動物園がもっと楽しくなる!展示の秘密を探すコツ、教えます」の記事をお伝えします。
どうぞお楽しみに!
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