田舎者は優しいのか

私は生まれてから大学進学で状況するまで山と川と田畑に囲まれて育った田舎者である。東京に出てきてしばらくたつが、田舎に対する様々な偏見を目の当たりにしてきた。私はそれらの偏見に田舎者の代表として立ち向かっていきたい。

偏見① 田舎のおばあちゃんて優しいよね!

片田舎にちょっと旅行へ行ったことのある女子、とくに意識高めの女子が陥りがちな偏見である(これも偏見だが)。田舎のおばちゃんも都会のおば様よろしく外面だけはよろしいのである。詳しくは後述するが、少しでも粗相をしようものなら影で何を言われているかわからない。外面に騙されないよう注意されたい。

偏見② のどかでいいよね!

これまた大きな間違いである。私の学生自分などは朝6時に起き草引きや田畑の世話をし、ヘトヘトになって登校をする。疲れて草むらで昼寝でもしようものなら全身痒くて仕方ない。それだけならいいほうで全身虫だらけになることうけあいである。帰宅しても何かとこき使われ、開放される頃には日が暮れている。築100年を超えた母屋にはシロアリがたかっていて畳のあちこちが深く沈む。軒下には蜂の巣がすんでいるしご飯にはハエがたかる。こんな生活にのどかののの字もない。

偏見③ 景色がきれいだよね!

確かに夕日は赤い。しかしこれも真っ赤な嘘である。都会の人民がそびえ立つビルディングの群をみて田舎の野山に思いを馳せるのと同様、田舎者も青々とした山野を眺めて優雅な都会生活に思いを馳せるのだ。

偏見④ 虫食べるんでしょ?

これも偏見だ!と言いたいところだが残念ながらこれは事実だ。大人たちは畑にあわれな子ども(私)を解き放ち袋いっぱいにイナゴを集めさせてはそれを佃煮にし、あわれな子ども(私)の食卓に並べるのだ。美味しい美味しいとその子ども(私)がバッタを頬張る姿を親はニッコリと見守るのだ。

偏見⑤ 近所同士なかいいんでしょ?

 私が状況したとき近所付き合いは愚か同じ区画に住む人間の顔も名前も知らないという状況に戦慄した。そんな状況においては田舎の近所付き合いを羨ましがるのも致し方ない。しかし早まってはいけない。体よく言えば近所付き合い、しかうしてその実態は大日本帝国も真っ青の超相互監視社会である。
 私の1日は隣に住む婆さんが勝手に玄関の扉(鍵なんてとっくに壊れてしまっている)をあけ私の眠る部屋の襖を我が物顔で開け放ち、チーンチーンと線香を上げる音から始まる。プライバシーなど存在しない。線香をあげるとねぼすけだの怠け者だのこごとを言われ私はそれを聞きながら朝食に父が釣ってきた鯉を平らげるのだ。
 長くなりそうなので割愛するがとにかく恐ろしいほどの監視社会なのだ!町中どこへいってもことごとく知り合いで、学校へ行ってもクラスの半数は同じ名字である。どこで何をしようと必ず親の知るところとなるのだ。このシステムが思春期の私の心をどんなに傷つけたかは想像に難くないだろう。
 その口の軽さで、飼い犬の色濃い沙汰から飼い主の放屁の音まで何でも町中丸聞こえである。「近所同士仲が良い」とはこういったことなのだろうか。私には判断しかねる。

偏見⑥ 健康的な生活を送れていいよね!

 これまた難題である。健康な生活とは何を指しているのか。片道16kmの通学路か、はたまた栄養があるんだかないキノコや山菜を拾ってきて食うことだろうか。
 とまあ屁理屈はこれくらいにして、最近はやりのダイエット的視点から食生活について言っているならば、これは誤りである。私の調べるところによると最近の田舎の肥満率はなかなかのものである。理由はその食生活にある。かれらは1日5回も食事をとるのである。確かに田舎にはジャンクフードがない。近所にファストフード店はおろかコンビニさえ見かけたことはない。しかしどんなにオーガニックな食生活を送っていても、1日5食も食べていては肥満待ったなしである。
 なぜ5食も食すのか。田舎者、特に農民の朝は早い。日も出ぬうちに朝食を済ませて、畑に出る。10時には疲れてひと休み、おやつの時間である。おやつといっても煎餅を一枚なんてものではない。ふかした芋やとうもろこし、おむすびや朝食の残りなど、これでもかと腹いっぱい頬張るのだ。もはやおやつではない。12時には昼食食べて昼寝、3時にはまたおやつ、17時には夕食で計5食だ。確かに農民にはこれくらいが必要な食事量だ。しかし農民が減ってしまった今でもこれが形骸化してしまっている。人間とは醜くも1日5食食べられてしまう生き物なのだ!

終わりに

以上、私が普段気になる田舎に対する偏見に対して田舎物の視点から切り込んでみた。
色々と田舎者を貶めるようなことを言ってきたが、とはいえ私も地元には愛着を持っているし良いところではあるのだろう。読者ももしこの記事から感ずるところがあれば、上記のことを心の片隅において、田舎をエンジョイしてほしい。

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