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ラテン語のアクセントについて

固定アクセント

 ラテン語のアクセントのシステムは極めて覚えやすい。
 各単語のアクセント位置は自動決定され、

a. 1音節語では当然その音節に
(ドー)「与える」

b. 2音節語では後ろから2番目、つまり先頭音節に
ro-sa (ロサ)「薔薇」

c. 3音節以上の語では後ろから2番目が重音節ならその箇所に
a--ca (アミーカ)「友達」(長母音)
a-lau-da (アラウダ)「ヒバリ」(二重母音)
pu-el-la (プエッラ)「少女」(閉音節)

d. 後ろから2番目が軽音節ならさらに1つ遡って後ろから3番目に
a-ni-ma (アニマ)「魂」

 といったように位置が決まる。このように位置が自動で決まるタイプの類型を言語学では固定アクセントという。

 このシステムは前3-2世紀の喜劇作家プラウトゥスの時代にはすでに確立されていたようで、日本語の外来語アクセントともかなり共通性が高い。
 試しに上述の単語を日本語として読んでみても同じ位置にアクセントが来ることがわかるだろう。
 ラテン語の音韻が日本語話者にとって易しいといわれるゆえんである。
 さらにいえばラテン語と同じようなアクセントパターンを持つ言語は世界的に極めて多いことが知られている。

 (もっともラテン語では日本語より閉音節が多く使われるのでアクセント位置が片仮名読みと完全に一致するとは限らない。また日本語には下がる箇所のない平板型の語もあるという違いも見られる)。

 しかしそんなラテン語のアクセントにもバリエーションや例外がまったくなかったわけではない。
 そしてそこには初級文法書だけでは味わえない言葉の世界の広がりや面白さがある。
 今回はそうした話をしていきたい。


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