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言語学者インタビュー(1)

 先日予告していた吉田育馬先生へのインタビュー記事です。


すべては代名詞から始まった


今日はお時間をいただき本当にありがとうございます。

吉田育馬先生(吉田)
 いえいえ、こちらこそありがとう。
 是非よろしくお願いします。


 ではさっそくお願いします。
 先生が印欧語や言語学に興味を持ったきっかけを教えてください。

吉田
 そうだねぇ。一番古いきっかけは中学時代(1979-81)、英語の代名詞のシステムが気になったことになるかな。
 たとえば物を指すit, that, whatには-tがあるでしょ? この-tってもしかして「物」を表す標識なんじゃないかって思ってね。


 なるほど。ラテン語でいえば中性の代名詞によく現れる-dですよね。
 it, whatと同源のid「その」、quod「どの」とかの。
 実際に印欧祖語の名詞性は元々有生/無生の区別だったといわれているし(※中性名詞の意味傾向や主格/対格の形態変化の欠如が根拠)、PIE: *-d> ゲルマン祖語: *-tが「物」という勘はまさに当たってたわけですね。

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