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ノベルゲーム一作目にオススメな作品5選【国士舘アニ研ブログ】

こんにちは。鯖主です。
前回の記事の最後に「初心者向け作品は探せばいくらでも見つかると思いますし、そのうち記事にしようかなとも考えています。」とか書いたので今回はそんな記事です。有言実行。

大前提として物語においては新しいコンテンツに触れる場合、まず作品を好きなように選んで好きなように読む・視聴するのが良いと思ってるので、本記事も「好きなように選ぶ」際の参考になれば良いかな、くらいの気分で書いていきます。薦めるにしても薦める相手によっていくらでも変わってきますし。

一応、選考基準としては
・長すぎない
・ユーザーからの評価が高い
・他の媒体には無いノベルゲームらしさがある
・なるべくSteam版やSwitch版がある

の4点を重視しました。

補足ですが「なるべくSteam版やSwitch版がある」というのは、ノベルゲームの多くがPC、それもDVD-ROMからインストールすることでプレイできる作品で、その大半がR18作品となっていることが理由です。これらはノベルゲームをプレイするハードルが高くなってしまう大きな原因なのですが、それをある程度解決できるのがSteam版やSwitch版という訳です。
ちなみにDVD-ROM版はWindowsでしか動かないのでWindows以外のOSを使っている方はご注意を。

本記事ではこの4点を軸に作品紹介を進めます。

では、作品紹介へ。

・白昼夢の青写真

(このパッケージの聖地が横浜ランドマークタワーらしいのでそのうち行きたいです。)

人類は同じ夢を見るようになった。
ある晩は、女生徒と教師の不倫の物語であり--
ある晩は、劇作家と女優の身分を超えた恋物語--
またある晩は、不登校の少年と教育実習生の淡い初恋--
3種類の夢を、人類は繰り返し見るようになった。
何故、全人類が同じ夢を見つづけるのか。
これは、世界と呼ばれた一人の少女の物語。

公式BOOTH「白昼夢の青写真」商品ページより

(本記事では具体的(?)な物語内容の紹介をあらすじの引用程度に留めますので、興味のある作品があった場合は各々で調べていただければと思います。)

では、先述した通り選考基準に沿って紹介していきます。

まずプレイ時間とユーザーからの評価についてですが、これはノベルゲームを中心に扱っている中では最大規模のレビューサイトからデータを借りましょう。

ErogameScape -エロゲー批評空間-『白昼夢の青写真』より

プレイ時間に関してはサイト全体を通して短めの数値が付いているので、この中央値を1.5倍したものを参照します。体感ですが大体これくらいの数値が丁度良いです。ノベルゲームに慣れていない方向けなら尚のこと。

ということでプレイ時間は約30時間です。基本的にノベルゲームで長いと言われるラインが50時間辺りからなので普通のプレイ時間ですね。

続いてユーザーからの評価ですが、中央値90点と非常に高いです。中央値90点以上というのは大体年2本出るかどうかくらいの数、と言えばその評価の高さが伝わるのではないでしょうか。

これだけの評価を得ている理由として各要素が全て高水準であることが挙げられます。
例えばグラフィック。公式ページを覗いて頂ければ分かると思いますが、1枚絵だからこそ描ける美麗なCG(スチル)が作品を通して描かれています。
例えば音楽。この作品のサウンドトラック、再販前はプレミア価格が付くくらいの人気があり、再販後も値崩れを起こさなかったことからも高い評価が窺えるのではないでしょうか。
例えばシナリオ。後述しますが特徴的な構成であるものの、全体通して無駄がなく、最初から最後まで綺麗に繋がっているため読み心地の良さは頭一つ抜けています。発売された年の中ではトップクラスのシナリオとの声もよく見かけるくらいには評価されているシナリオです。

このように全体を通して隙の少ない作品に仕上がっていることもあり、ユーザーからの評価は非常に高いです。

次にノベルゲームらしい要素について。
これは先述した「1枚絵だからこそ描ける美麗なCG」「特徴的な構成」が挙げられます。

前者については実際見てもらうのが一番早いのですが無理やり言語化するなら「映像作品ではほとんど味わうことができない視覚的体験ができる」とかになるんでしょうか。

後者に関しては、まずこの作品の大まかな構成を説明するところから。
この『白昼夢の青写真』はCASE1~3の3つの異なる物語を読んだ後に、最終章的立ち位置であるCASE0へと繋がる構成となっているのですが、これがノベルゲーム的な部分となります。
もう少し詳しく書くと、このCASE1~3というのはそれぞれ舞台もキャラクターも時代も異なる物語なのですが、これが選択肢によって変わる結末という意味ではルート分岐にあたるのですよね。ですので、この点がノベルゲーム的なのです。
あんまり詳しく書いているとネタバレになりかねないのでそろそろ次のプレイできるハードについて。

この作品は非R18版であるSteam版を含むPC版とSwitch版が存在します。ノベルゲームの中だとまあまあ幅広く取り扱っている方なので、プレイするハードルは比較的低いのではないでしょうか。

本作はとにかく質の良いノベルゲームを触ってみたいという方目新しい物語に出会いたいという方にはちょうど良いと思います。

最後に先程話に出したレビューサイトでこの作品に登録されたタグの一覧をお借りします。具体的な物語内容の紹介の薄さをこれで補って頂ければ……。一目でその作品に含まれる要素が分かるので個人的にはかなり便利に感じますねこれ。
数字はそのタグの登録件数なのでそのままその要素の強度と思って頂ければと思います。
また、空白部分はネタバレになりかねないタグが書かれていた部分です。本記事ではすべて空白のままにしてあります。

・Summer Pockets

(この作品の聖地は香川県の直島です。良い所。)

主人公の鷹原たかはら羽依里はいりは、亡くなった祖母の遺品整理のため、夏休みを利用してひとり鳥白島にやってきた。
都会暮らしでは知ることのない、自然とのふれあいの日々。
忘れていた懐かしい何かを思い出させてくれるような生活。

海を見つめる少女と出会った。
不思議な蝶を探す少女と出会った。
思い出と海賊船を探す少女と出会った。
静かな灯台で暮らす少女と出会った。

島で新しい仲間ができた。

この夏休みが終わらなければいいのにと、そう思った。

プレイ時間ですが1.5倍して45時間くらいでしょうか。ただ、この作品に関してはいわゆる「key作品」ということで普段ノベルゲームをプレイしない層も結構プレイしている印象があり、したがってプレイ時間中央値も比較的長い時間で登録される傾向にあるように思われるので、大体35時間くらいに見積もっても大丈夫かなと思います。
そう考えるなら大体平均的なプレイ時間になります。

続いてはユーザからの評価ですが、中央値・平均値共に86点とかなり高い評価を受けています。標準偏差(数値のバラつき)も10ということで比較的万人受けな傾向もあるのでは無いでしょうか。

この評価の理由にもなる本作の持つ大きな魅力として世界観・雰囲気が挙げられるでしょう。
あらすじやパッケージから察した方も多いでしょうが、この作品はいわゆる「夏ゲー」や「田舎ゲー」と言われるようなジャンルです。散々擦られている要素ですが、そんな要素を今になって(と言っても5年前の作品ですが)もう一度練り直した作品、というイメージが強いです。
上述したように夏×田舎という要素は昔から擦られ続けている訳ですがそれにはそれ相応の理由があり、中でも世界観や雰囲気の良さは特に大きな理由となっています。そして本作の魅力もここにあり、この夏×田舎の世界観・雰囲気をベースとして「泣き」を演出する、どこかお約束のような物語が良いのです。
これに関しては体験版部分だけでも触って頂ければ体感できると思いますので是非。

次にノベルゲームらしい要素について。
あんまり言うとネタバレになるのでやんわりとした表現になりますが、ルート分岐や周回プレイを前提とした作りを活かしたノベルゲームだからこその構成は真っ先に挙げられるでしょう。
また、作中の音楽(BGM+ボーカル曲)の使われ方もノベルゲームらしさが強いと思います。具体的には物語との関係性が極端に強いボーカル曲なんかがあるでしょう。

遊べる媒体ですが、Steamを含むPCやSwitch、PS4、iOS、Androidと一通りの媒体で遊べます。また、全て非R18なので今回紹介する作品の中では一番広くプレイされてる作品な気がします。

本作は感動や雰囲気の良さを求めている方とりあえず何かノベルゲームに触れてみたいという方にちょうど良いと思います。

補足になりますが、本作は『Summer Pockets』と『Summer Pockets REFLECTION BLUE』と2つのバージョンが存在します。後者は前者に比べてボリュームがあるのですが、正直どちらを遊んでも問題無いかなと思います。

・穢翼のユースティア


(この作品は聖地があるのかすら分かりません…)

悲劇は往々にして不条理なものだが、これほど不条理という形容がしっくりくる悲劇もなかった。

その日、この都市の一角が多くの人命と共に大地へと崩落した。
性別、年齢、人間性、地位、経済力……
犠牲者に一切の区別はなく、ただそこにいたという一事だけが、彼らの命を奪った。
なぜ死なねばならなかったのか。
無数の死に何の意味があったのか。
答えはなく、残された人々に与えられたのは、輪郭のない茫洋たる喪失感だけだった。

『穢翼のユースティア』公式サイトより一部引用

プレイ時間的には1.5倍して45時間とやや長めではあります。まあ、長い事を原因として退屈することはほとんど無いと思いますが。

ユーザーからの評価としては中央値87点と本作もかなりの高評価です。標準偏差も10と先程の『Summer Pockets』同様に比較的万人が(ノベルゲームユーザーの中での「万人」ですがね……)楽しめるうえ、作品の評価もかなり高い作品となっています。実は終わり方には若干の賛否がありますがそれは別ということで。

さて、本作の魅力としてよく言われているのがシナリオ世界観です。
世界観に関してはあらすじからも漂ってくる退廃的なダークファンタジーな雰囲気が特徴的で、その上に成り立つ壮大なシナリオが非常に好評なのです。

そして、この「壮大なシナリオ」こそが本作のノベルゲームらしい要素として挙げたい部分でもあります。
と言うのもノベルゲームという媒体は物語の媒体の中でも珍しく尺の制限がほとんどない媒体なのです。故に描きたい物語に合わせた自由な尺の中で物語が語られていく訳ですが、壮大なシナリオを描く場合は特にこの恩恵が大きいです。当然と言えば当然ですが、壮大なシナリオにはそれ相応の膨大な尺が必要な場合が多く、本作もそんなノベルゲームの恩恵を受けている作品のひとつでしょう。また、そのシナリオもノベルゲームもといエロゲが割とアングラなジャンルだからこそ描けた(のかもしれない)展開がいくらか存在します。

遊べる媒体はR18版であるPC版(Steam無し)と非R18版ではPS4やPSVita、Switchでプレイできます。

本作は大きい物語に触れてみたい方ダークな世界観が好みな方にちょうど良いと思います。

・沙耶の唄

(00年代を感じられるこのパッケージデザインとても好きです)

交通事故で生死の境をさまよった匂坂郁紀は、いつしか独り孤独に、悪夢に囚われたまま生きるようになっていた。

彼に親しい者たちが異変に気付き、救いの手を差し伸べようにも、そんな友人たちの声は決して郁紀に届かない。

そんな郁紀の前に、一人の謎の少女が現れたとき、彼の狂気は次第に世界を侵蝕しはじめる。

『沙耶の唄』公式サイトより

プレイ時間としては10時間かからないくらいと、先程の『穢翼のユースティア』とは打って変わってコンパクトな作品です。正直、本記事でこの作品を紹介する理由の半分くらいがこのコンパクトさになります。気分的には1クールアニメのノリで完走できるくらいの作品で、ボリューム的にはかなりハードルが低いのではないかなと思います。と言ってもただ短いだけではなく、過不足なくまとまっているので読みごたえはあります。
先述した通りノベルゲームは尺が自由なので、わざわざ長くある必要の無い物語を持つ作品は相応のボリュームで作られるのかもしれません。

ユーザーからの評価としては中央値82と今回紹介する作品の中では低めですが、それでも中々の評価をされています。

本作の良さはグラフィックやある種のエンタメ性、ホラー要素(コズミックホラー・サイコホラー)など多岐に渡りますが、強いてひとつに絞るなら私は00年代特有のセカイ系的な物語展開を挙げますね。実際、この作品は03年発売の作品です。
これもあまり言うとネタバレになるので要素から拾っていきます。ということで例のタグ一覧を先に。

「00年代特有のセカイ系的な物語展開」をすごく端折ってまとめると狂気あるいはクトゥルフ要素の上に純愛が乗っかったモノ、になるでしょうか。根は全然違いますが『エルフェンリート』辺りと似たような雰囲気があるような気がしますね。
要は狂気×純愛が本作の大きな特徴と言えるでしょう。

この狂気×純愛だったりセカイ系だったりもノベルゲームらしいといえばそうなのですが、他にもノベルゲームならではの要素は多々あります。
例えば主にスプラッターな方面でR18であることが活かされていたり、ユーザー層を活かしてオタク向けな物語に仕上がっていたり、終始一人称視点で描きた綴ることができるのを活かしたギミックがあったりなどなど。

こんな作品なので手早くノベルゲーム・エロゲであることが活かされた作品を触れたいという方にオススメです。
ただ、先述したようにスプラッターの方向でのR18要素が特に強いのと、いくらかオタク向けな仕上がりになっているのでその2点だけご注意を。

また、遊べる媒体がWindowsかAndroidのみとなっており、かつR18版のみしか存在しないためプレイできる層が狭い点が玉に瑕です。

・キラ☆キラ

(こちらも古さを感じるキャラデザが良い感じです)

欧美学園というミッション系の学校に通う主人公・前島鹿之助が女装し、今年度限りで廃部してしまう「第二文芸部」の女子部員たちとガールズバンド(パンクバンド)を結成し文化祭でライブをすることに。
 ライブは成功したものの、とある理由で第二文芸部バンドが世間で大人気に。全国ツアーが決定してしまう。

 今にも壊れそうなオンボロワゴンに楽器と夢とそれぞれの期待を積み込んで学園生活最後の冒険として長い旅に出発してしまうのであった。

ニコニコ大百科『キラ☆キラ』より

プレイ時間は大体35時間ちょっとで、ノベルゲームの中で言えば平均的な尺と言えますね。このプレイ時間で平均的と言ってるあたり、やっぱり物語のボリュームが多い傾向にある媒体なのだなぁと改めて感じます。

ユーザーからの評価は中央値85点と十分高い評価を受けている作品です。

本作の魅力は妙なリアリティ秀逸な心理描写にあるかなと思います。
あらすじ通り青春モノではあるのですが、それだけに留まらないのがこの『キラ☆キラ』という作品で、フィクション的な「爽やか青春モノ」の中にある現実感から成る独特な読後感はその象徴ではないでしょうか。なんだか抽象的な話になってしまって申し訳ないです。
兎にも角にも良質なシナリオ・心理描写から成る青春と現実の物語がとても良いのです。

そして、この独特な読後感の大きな要因のひとつとなっているモノがノベルゲームならではの要素でもあります。(厳密に言うと若干違いますが)それはいわゆる「BADEND」の存在です。ルート分岐が使える媒体だからこそですね。
これも掘り下げるとネタバレになりかねないので軽い紹介に済ませます。
本作に限らず多くのノベルゲームでのBADENDはBADENDと言っても一般的なGAME OVERのようなただの悪い結末ではなく、BADEND的な結末だからこそ描ける物語が綴られているのです。そんな結末を描く作品の中でも本作は特に印象的な結末になっているかなと思います。

また、バンドモノとしても中々の出来であり、特に作中曲の評価はかなり高いので、プレイする予定が無くてもいくつか聴いてみてはどうでしょう。最近だと霜降り明星の粗品さんが本作のOPをカバーしていてビックリしました。一応リンクを貼っておきます。

そんな本作は青春モノが好きな方独特の読後感を味わいたい方にちょうど良いのではないでしょうか。

遊べる媒体としてはR18版であるPC版(Steam版除く)と非R18版であるPS2版、iOS版、Android版があります。スマホでもプレイできる作品はそれだけでハードルがかなり低いと思っているので本記事でも優先的に紹介してみました。

ということでノベルゲーム一作目にオススメな作品に紹介でした。

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