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F1小噺【フロービズペイント】

この記事では私が好きな「F1の小さな事柄」についてアレコレ語ります。
今回は「フロービズペイント」についてのお話、画像多めです。


フロービズ is 何?

フロービズペイントとは、空気の流れを可視化するために一時的にマシンに塗る蛍光色の塗料です、記事のヘッダー画像がわかりやすい使い方ですね。
マシンに塗布して1周走ってピットで写真撮影したらすぐに掃除されます。
プレシーズンテストや、フリー走行1で使われるので見る機会は少ないと思います。

なんで塗るん?

何での前に、F1マシンの空力開発について語らせてください。
F1は「風洞」と呼ばれる高速で空気が流れるトンネルに模型を置いてエアロ開発が行われています。風洞を使えばF1マシンを走らせなくても「気流の中のマシン」を疑似的に再現できるので、全てのチームがマシン開発に風洞を利用しています。ちなみにクソでっかい施設で稼働費用も高く、湯水のように予算を溶かします。

高速で動くベルトで走行状態の路面を再現、模型のタイヤも回転してます。

他には「CFD」と呼ばれるコンピューターによる流体シミュレーションを使ってマシン開発も行っています。

未来になったなぁ…。(オッサン脳)

これらのツールを使う事で、空力パーツのパフォーマンスがより正確に予知できるようになりました。
風洞なんて無敵の最強ツールに見えると思うんですが、実はそうでもないんですね。レギュレーションで「風洞で使用するマシンの模型は50%~60%スケール、風速は時速180kmまで」と決められているので、現実と条件が乖離してます。(だって時速180kmって低中速コーナーの速度ですもん)
CFDにしたって同じです。コンピューターの性能が飛躍的に向上したとは言え、シミュレーターなのでパラメーターの設定一つで結果が迷走するなんて想像にたやすいです。
フロービズペイントは気流を可視化することで、風洞やCFDと現実の差を確認し、その誤差を縮めるために使用していると言っても良いでしょう。

フロービズの移り変わり

長い事F1を追っかけているとフロービズの使い方が変わってきたことに気づく人もいると思います。
昔のフロービズは空力パーツなど局所的に塗布されていましたが、現在はボディワーク全体に塗られることが多いです。小さな空力パーツ自体が禁止されたのもあるんですが、現在のF1はボディ全体で効率良く空気を流すことが主流になっているからです。
フロントからサイドポンツーン、リアウィングやディフューザーと前から後ろに一気通貫で空気を制御しようとしているんですね。

何気ない造形でも、ちゃんと気流を制御してるんです

官能的なフロービズギャラリー

ココからは私のお気に入りのフロービズペイントの写真をご紹介します。
空気の流れを矢印で描いて解説しようと思いましたが、生のフロービズの魅力を伝えたいので辞めておきました。

お手本のような気流の走り方。エロスを禁じえません。

白色のフロービズペイントですね。ウィングが気流を上側に跳ね上げるのが確認できます。
ウィングのメインプレート(上部の赤色)や、下部にあるビームウィング(写真には極わずかしか映っていません)の気流に挟まれている空間の気流に注目してください。空力パーツが何も無い場所(しかも側面)でも上下の気流の影響を受けて綺麗に上向きに流れているのがわかります。このフロービズの描く曲線、美し過ぎるから今日から「橋本環奈」って呼ぶわ。

このアングルとフロービズの痕跡、エッッッロッ!

リアディフューザーの中の気流の痕跡です。気流が中央から外側(左側)に向けて流れているのが確認できますね。
ディフューザー内部に垂直のフィンが2個見えますが、ここがエロい。フィンやウィングなどの空力パーツの正面側は気流が直接当たるのでフロービズの痕跡ができるのは理解できるんです。逆にパーツの裏面は風裏になるので、気流がパーツに沿って流れないと思いがちですが、コアンダ効果という現象でキッチリ裏面にも流れてます。
そしてディフューザーを囲むような小さなフィン、リアタイヤ側は少し大きくなっています。このフィンはディフューザー上面を流れる気流を誘導しているのですが、フロービズを見ると横向き(左向き)に流れています。この気流がキッカケとなって、ディフューザー内部の気流を外側に吸い出しているんですね。ふ~ん、エッチじゃん?

この気流の走り方、やってますね。もちろんドスケベ確定です。

サイドポンツーン下部のエグレた部分を通る気流が可視化されてるんですが、判りますかね?このエロさ。
まず、マシン前方からの気流がフロア上面を通ってます。綺麗に流れているのが濃い線で見えますね。普通ならそのままフロアの外に向かって流れそうなのに、ここで線の幅がググっと狭まり、ボディ側に吸い寄せられてます。エロいですね~。
そしてエグレた部分を通過しようとしているんですが、ちょうどSIEMENSのロゴの辺りで、何故か上向きに流れが変わってるんです。そしてエグレの上部をかすめて後ろに流れていきます。はぁ?エッチ過ぎん?
なんでこんな不可解な空気の流れになるのかというと、ヴォルテックスと呼ばれる小さな気流の渦がフロアを流れる気流を操作しているんですね。写真には写っていませんが、前方にある大きなフロアフェンス(バージボードみたいなパーツ)がヴォルテックスを発生させ、ボディとリアタイヤの内側を通る事でフロアの気流がボディに沿って流れてくれるんですね。
優勝です!ドスケベ空力しか勝たん!

おわりに

フロービズペイントの魅力が伝わりましたかね?私はどちらかと言うと局所的に塗布してあるフロービズが好きなので、紹介した写真はそっちに偏ってしまったかも知れません。
フロービズは普段見えない空気の流れが可視化されるので「F1デザイナーが何を考えているのか?」「なぜこのチームは速いのか?」を解き明かしてくれます。気流の流し方がチームによって全然違ったりするのも醍醐味の一つだと思います。
最期に、私が嫌いなタイプのフロービズペイントでこの記事を締めたいと思います。またね~!

(走行前)全身ベタ塗り。お前ら空力デザイナーとしてのプライドは無いんか!

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