話すと長い、F1の追い抜き事情 (その1)
F1初心者に向けた記事です。なるべく専門用語や固有名詞を使用しないで頑張って解説する記事です。
私が過去に記述した記事には「現代F1ではコース上の追い抜きは困難である」と、散々書いておりますが、なぜ困難なのか?という事を解説してみましょう。
追い抜き行為の成功条件とは?
当たり前の事ですが、前方のマシンよりも前に出れば追い抜き成功と言えます。前に出るためにはライバルよりも速く走る必要があるのですが、この「速く走る」というのは絶対的な速さではなく相対的な速さになるので、マシン性能が劣っていても追い抜くことは一応可能です。簡単な例で言えば、30km/hで走行しているスポーツカーを50km/hの軽自動車で追い抜くことはできますよね?ここまで大げさな差ではないですが、F1でも状況次第では同じような事が起きるので、それを利用して追い抜きをします。
F1での追い抜きポイントはどこだ?
F1が走行するサーキットはそれぞれユニークな形状ですが、それはストレートやコーナーの特徴で表現されます。(時速の補足は割と適当です、こんなもんと思ってくれればいいです)
①長いストレート(~330km/h)
②低速コーナー(~120km/h)
③中速コーナー(~220km/h)
④高速コーナー(220km/h~)
これらの中で追い抜きが発生しやすい場所は「長いストレートの後に低速コーナーがある場所(①+②)」が圧倒的に多いです。
では、なぜストレートエンドが追い抜きポイントになるのか?という事を説明していきましょう。
空気抵抗とDRS
空気抵抗とは走っている時に感じる向かい風の強さの事で、F1ではドラッグと言われます。さらに、空気抵抗は速度の2乗で大きくなります。簡単に言うと、2倍の速さで走れば空気抵抗は4倍です。
という訳で、ライバルの真後ろを走れば直接空気を浴びないので、滅茶苦茶得します。このマシンの後方で空気抵抗が少ない範囲を「スリップストリーム」だったり「トー(トゥ)」と呼びます。後方のマシンは空気抵抗が少ないので、最高速度が上がります。このトーはストレートなら2~3秒後方でも恩恵を感じられるそうです。
さて、もう一つ大事なのがDRSと呼ばれる全てのマシンに搭載されている機構です。DRSは「ドラッグリダクションシステム」の略ですが、海外でも「ディーアールエス」って呼んでます。
サーキットで指定されたストレートのみで使えますが、いつでも使えるわけではなく、決勝では前方のマシンの1秒以内に入ると使う権利が与えられます。
DRSは使用するとリアウィングのメインプレートがパカッと開いて空気を素通りさせます。こうする事で空気抵抗が減るので、最高速度がアップし、追い抜きがしやすくなります。
さぁ、勘のいい方は、なぜストレートエンドで追い抜きが発生しやすいかお気づきでしょう。
空気抵抗が少ないマシンは最高速度が上がります、すなわち、前のマシンよりも速く走れるのです。これがストレートエンドで前に出ることを可能とする大きな理由です。
トーとDRS、無敵やん…!
そうなんです、ここまで書いてきたことは全て物理法則に従っているため、全てのマシンに対して平等な恩恵があるんです。でもこれが本当なら巻頭に書いた「現代F1ではコース上の追い抜きは困難である」なんて意見は出てこないはずなんです。
そもそも、先頭を走っているマシンは最も大きな空気抵抗を受けるので、順位が頻繁に入れ替わるはずなんです。
次の記事では、トーとDRSがあるのに何故追い抜きが少ないのか?という事を深堀していきましょう。
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