見出し画像

逆転する天使と悪魔~BUCK-TICK「メランコリア」

BUCK-TICKの曲によく登場する天使と悪魔。
とはいえ、天使は優しく純粋無垢で…なーんて「普通」なわけがない。
光と闇、善悪、美醜…私の中のあらゆる価値観を根底から覆してぶっ壊し続けるBUCK-TICK。一筋縄ではいかないのがバクチクワールドなのである。

なかでも、この曲の天使と悪魔(と女神)にはゾクゾクする。

~舞台では女神が 微笑んでいる
 今夜もグラスは 血を注いでる~

~天使が 白い羽根で
 今夜も悪魔を 紅く染める~

BUCK-TICK「メランコリア」

悪魔を(血で)紅く染める、無垢で清らかな(はずの)天使。
優しく美しい(はずの)女神の手には、血で満たされたグラス。

ありきたりなイメージとは真逆で魅惑的なことこの上ない。
目に浮かぶ情景のなんと妖しく美しいこと。
歌詞と音、あっちゃんの仕草で既存のイメージや固定概念がぶっ壊れる快感がたまらない。



気の触れた道化師ピエロ
執拗に悪魔を責め立てる天使。
なす術もなく血に染まる悪魔。
それを眺めて嫣然と微笑む女神。

その狂気も、残忍さも、無力感も、嗜虐性も、私たちの中にある。
見ないふりをしてもそこに在る。
逃げれば逃げるほど追いかけられる。
そんな自分を厭い隠そうとするほど突きつけられる。
自分を誤魔化し続けようなんて、無駄な足掻き。

とはいえ演じているのも、観ているのも自分自身。
そう、結局、すべて(善悪を判断し、悪を厭い、善になろうとじたばたする…etc)一人芝居にすぎないのだ。

***

ちなみに歌詞の「灰は灰に 塵は塵に」。
聖書からの直接の引用ではないが

「あなたは顔に汗してパンを食べ、ついに土に帰る、あなたは土から取られたのだから。あなたは、ちりだから、ちりに帰る」

旧約聖書・創世記3-19

に由来しており、キリスト教の葬儀の際の祈祷文の一節である。
"Earth to earth; ashes to ashes, dust to dust."
(訳)土は土に、灰は灰に、塵は塵に

BLOODY melancholia(血塗れの憂鬱)。
それは人が生まれて死ぬまで演じ続ける壮大な一人芝居。
終われば灰になり、散っていく。
ただそれだけ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?