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「鳥獣戯画と愛らしき日本の美術」展

鳥獣戯画展に行ってきた

福岡市美術館で開催中の「鳥獣戯画と愛らしき日本の美術」展へ。

鳥獣戯画といえば、擬人化されたうさぎや蛙が楽しそうに遊ぶ姿を描いた有名な絵巻きもの。じっくり見るのは初めて。甲乙丙丁4巻あるってことも初めて知った。
今にも動きそうな、声が聞こえてきそうに生き生きとした動物たちのユーモラスな姿や、当時の装束、遊びに見入る。平日で比較的すいていたおかげで、説明と合わせてじっくり観られて大満足。

メインの鳥獣戯画以外にも知ってる!見たことある!という作品がたくさん展示されていて、見応え十分。

リアルなのに劇画チックな応挙の虎。
今にも飛び出してきそうな若冲の鶏。
モフモフころころ、触りたくなる蘆雪の子犬。
写実的、超絶技巧なのにどこかユーモラス。いい。すごく好き。

仙厓義梵のシンプルでユーモラスな絵と言葉に、思わずくすり。
このゆるいシュールな感じ、どこかで見たことある…と思ったらキタカゼパンチさんだった。

簡略化された梟や千鳥の図は、そのままスタンプして使いたい可愛らしさ。
鳥獣略画式(鍬形蕙斎)」はまるごと一冊見たかったなぁ。
簡略化って緻密な観察眼と一流の技術のなせる技だよね。

個人的には「異代同戯図(狩野昌雲)」が最高だった!声出して笑った!
博打に興じる神々。
スナイパーと化した観音。←これ最高。
逆立ちする不動明王。
そんなとんでもなくふざけた絵が、精巧に色鮮やかに描かれている。
添えられた文字がこれまた達筆で、技術と内容のギャップに笑う。
最高の技術で最高にくだらないものを真剣に作り出す心意気。たまらない。

自由とか、豊かさとか

自由闊達な江戸時代の絵画の数々に感じたのは、日本人って本来大らかでユーモアと毒気と茶目っ気がたっぷりの、楽しむことが上手な国民だったんだなぁ。ってこと。

今だと動物虐待とか不謹慎とか非難されて炎上するんじゃ、と思うような作品が結構あるんだけど、これを笑って楽しむ大らかさって、心にゆとりがあってこそ。余裕がなくてギスギスしてると、人っておふざけを許せなくなったりするもんね。

今と違って飢餓や病気で命を落とすことなんか日常茶飯事で、不便で生活も苦しかっただろうけど。もしかすると江戸時代って、日本人が一番日本人らしく、心豊かで幸せだった時代なのかもしれない。
そして、江戸の日本人が持っていた大らかで豊かな心を、現代人が経済的な豊かさや便利さと引き換えに失ったのだとしたら、すごく悲しくてつまらないことだと思う。

昨今の「コンプライアンス」とか「多様性を認める」という言葉を盾に、そこにそぐわない(と思った)ものを槍玉にあげて非難する風潮。
難癖つけられないように、攻撃されないように、先回りして予防線張って、無難でつまらないものばかりになっていく表現。
過去の芸術作品まで今の価値観に当てはめて修正する行為。
一見自由になっているようで、どんどん不自由になっている気がしてならないんだよね。
誰かを意図的に傷つけたり攻撃するのでなければ、自由に表現していいと思うんだよなぁ。いちいち目くじら立てて、重箱の隅をつつくように批判して、排除する。その攻撃性や排他性のほうがよっぽどこわい。

自由って、豊かさってなんだろう。笑いながらもそんなことを考えた。

一切衆生悉有仏性(いっさいしゅじょうしつうぶっしょう)

動物の愛らしさやユーモラスな姿を楽しんだ展示の中で心に残ったのが、『あらゆる生き物は仏となる素質を備えている』という言葉。
一切衆生悉有仏性いっさいしゅじょうしつうぶっしょう」という仏教の教えだそうである。

動物は愛らしい。現代人はその愛らしさにばかり目を奪われて、動物を人間よりも劣った弱い存在だと勘違いしている気がする。(むしろ丸腰で丸裸で自然に放り出されたら真っ先に死ぬ弱者は人間だと思うんだけど。)
挙げ句、人間が一番高等な生物だと勘違いして、住処を奪って害獣扱いしたり、生態を無視して愛玩物扱いしたり、コントロールしようとしたり。何様だよ。と思ってしまう。

本来、生き物同士は、互いの領分を過度に侵すことなく、それぞれが必要なだけを得て暮らし、慈しみ、畏怖し合う対等な存在だったはず。そこにあるのは生物としての「違い」だけで、序列も優劣もなかったはずだ。
だって「あらゆる生き物は仏となる素質を備えている」神聖な命なのだから。

祈りの対象として人の持たざる力を持つ動物の神秘性を畏れ敬う気持ちから、ともに暮らす身近な親しい存在となった動物への愛へ。人と動物の関係が変化するにつれて、やわらかくシンプル、ユーモラスな絵が増えていくのも興味深かった。

なんだかんだ言うてはみたが


鳥獣戯画展、とにかく楽しかった!!!
前期と後期で一部展示が変わるそうで、なんならもう一回行こうかなっ
てくらい、楽しかったのであるよ。これは一見の価値あり。

おまけ

その1

「鳥獣戯画・日本全国巡り旅 福岡編

「鳥獣戯画・日本全国巡り旅」福岡バージョンのハンドタオル。
豚骨ラーメン、屋台、あまおう、明太子、博多にわかなどなど、博多名物を楽しむ動物たちがてんこ盛り。他のバージョンも見てみたい。

その2
スナイパー観音、ここで見られるよ。



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