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一人旅の効用

一人旅は楽しいのか論争がある(と勝手に認識している)。
私は計画性がなく、友人と予定を合わせるのが面倒なので、ときたまふらっと一人旅に出かける。国内はもちろん海外も一人で行ったことが何回かある。
新入社員時代の同期が一人旅なんて絶対にできない、楽しくないと断言していた。そのときはそうなんだぁ、そうかもしれない。わたし、一人旅が好きなんて、友達がいないだけなのに、虚勢張ってたなとまで思っていた。
だが不思議と今は、一人旅もいいものだと、自信を持って、というほどではないにしろ、心に偽りなく言うことができる。友達が少ないことの言い訳ではないし、そもそも友達は少なくていい。
じゃあ楽しいかと言われればそうでもない。何じゃそりゃと言う感じだろうが、なんというか、ヒーリングとか療養に近い。
ひとりで慣れない土地を歩くと、当然だが全て自分で調べ、選択し、行動しなければならない。思いがけず上手くいくこともあるし、たまには酷い目にもあう。そしてそれらは、すべて自分のせい。全思考と全行動が自分に跳ね返ってくるが、そのかわりのびのびと自由だ。どんな結果も、他の誰にも縛られることなく、自分のもの。そのことが妙に自己を癒すのである。
一人旅では男っぽい部分が出てくる。信頼している占いの先生が、前世は男が多かったと言うから、男に戻る、と言った方が正しいのかもしれない。いつもならラーメン屋にひとりで入れなどしないのだが、旅先では躊躇なく入ってさっさと食べたらさらりと立ち去る。その時の脳内イメージはイケメンで粋な兄ちゃんだ。なぜかビジュアルは美化されている。旅先では性別とか、社会での立場とかに期待される役割すら取り払って、本来の自分に戻れるのかもしれない。
だから、友人とあれこれ喋りながら、感動と苦労を分かち合う旅とは、また違うものなのだ。楽しいっていうか癒し、治療。一回解放してずれてたところを直すって感覚。楽しいとはまた違うから、楽しくはないよ、でもいいものだよ、がしっくりくる回答だ。

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