エントロピー

地上じゃない
僕は統語法の子供だった、統語法の子供である、あり続けるだろう僕は。どうしてあなたと話すことができないなんてことがあるだろう?空のない天蓋の下を歩く、僕の目に太陽は花咲かない。太陽は存在する太陽は存在するのだろうか確かめることはできない僕は太陽を見たことがない。僕の手元に残った言葉ではない、それは失われた言葉、なのよと母は僕に言った僕はそれを覚えている。僕は覚えている僕は言った、ではここはどこなのでしょう。母は僕に答えた僕はそれを覚えている僕は思い出す、地上じゃ
ない

地上じゃない
僕は大きくなった。僕は地上じゃない所で大きくなった。あなたの知らなかった所で僕は生育した。僕が僕たちが失ったあれらの無数の語彙、喪に服すことさえできず、むしろあれらの語が僕たちの喪に服している、静かに、僕らの呼びかけに応答せずに。それでもなお僕は近づこうとする。雨という語、

という語、雨という語は、述べることができない。

地上じゃない
僕はデッサンをした。地上のない空間をデッサンした。地上抜きの空間で。僕は何も描かなかった、僕は自分の指を描いた。僕の手に指輪は輝かなかった、誰の手にも指輪は輝いていなかった。指輪の輝かないその手を描いた。その手たちだけが見えた。だが僕は指たちとともに迎えに行こうとした
地上へ

じゃない
僕は盲目だったような気がする盲目なのかもしれない何を語っているのか亡者の記憶を。二人の警官が僕に聞く。あなたの家はどこなのか。わからない、おそらくあったようにおもう僕の家は地上にはない、遠く離れた場所に一つの方丈の庵を構え、地上の全てを眺めていたあの聖のようにない

ない


僕は語りたい、地上のあれらの無数の美しさと言葉を一つに結び付けたい。僕は語りたくない。地上ではないものだけがあるものは地上じゃないに浸されて、もはや思い出せない。顕現のように収縮して私は何も持たなかったただ指輪がないという言葉だけをもって歩いていた。どこへ向かえばよいの、僕は上昇しないとともに下降さえしなかった。中性地帯の中、新しい語彙を探していた。歩いていた。僕は。携えて。もう少し遠くへ行け。雪が降ったような気がする。

そうだ律義に、地上に特有な語は、僕を上昇させる、地上へと。僕の地上の言葉、誰とも分かち合うことのできない、これらの語こそ降り注ぐ、時折、だれにもないしょで。無用な、能記を欠いたこれらの使者が訪れたのかもしれない。僕は誰ともほんとうには話すことができない。僕は汚染されて、隔離されている。
僕は話したい、ただ一人の、目の前の人に、地上の言葉で、あれら汚染された言葉で話したい。きっと僕は話せないだろう。僕たちはいずれにせよ地上にいないのに!廃棄されていた。僕は話したい対話編を形作りたい地上の声の周りで滞留していたい。僕の目に輝く太陽が
花開く
花開かずに僕は留まっているのだろう。

指たちとともに僕は地上を迎えに行く。少しの。足は動く地上ではないどこかの上を、だが僕は歩く、迎えに行くために僕は。神のお庭に指たちとともに着く。神のお庭に指たちとともに着く。仏さまが微笑んでいたよと少女がもう一人の少女に教える。

花は雪のように降っていた。微笑みは世界を照らし返すために発明された、そう始原から離れていないこの時へ向かって、灯りが立て集められる、出会われる何かと。その虹彩に太陽を映した人、まぎれもなく盲
人で、人でなかったかもしれない花ー
人で、人でなかったかもしれない花


来なさい


花が雪のように降っていた。その形象は透明になって描けなくなる。僕が通り過ぎる。誰でもないものが通り過ぎる。凝縮して僕たちの「地上に存在する必然性はなかった」が祝福のように鳴らされて、開口する。
雪は花のように降る。
雨は降らない花と雪だけが降る雨は降らない花と雪だけが降る。
雨は花を育てない花は雨を育てる花は花を育てる。

僕の打ち震えて口蓋がさざめく唯一許された詩篇を奏でる口蓋が。

もはや叶わぬ、かつて現れた聖なる者らを、
あの古の国の神々の姿を
その姿を僕はもはや呼んではならぬ


来なさい


彗星病棟で臥所するあの言葉たちの横で、僕もあるいは言葉を揺らしたかもしれないあなたは。知らずに指差すだろう下を。一つの出会いへの雨と雪の花束として指差すだろう下を。この懸隔からあなたの方へ近づくことなく近づくために、きっと、果たされるときにも、地上へ上昇するときあるいは下降するときにも僕は離れたところにいる。言葉によって故郷の本質を光ることへと高めるために。

受苦、僕の僕に固有の「なぜ僕はこんなにも離れたところにいるのか」地上の光が届かないほどに。この受苦は何ゆえの受苦か?という問いは受苦の本質において拒絶されるなぜなら非対称性が受苦の与件であるからだなぜ僕は異郷

失う、失い続けるだろう。僕らは、水晶宮ではなく、水晶宮を出来させるべき空間を。水晶宮により空間は廃絶させられる。空間は空間から締め出される。締め出される、僕たちはあの季節から、彼らは自分自身を廃絶するのだろう。再び、いつか、つねにすでに、訪れているものが、僕たちを廃絶から。なぜならほかのどこに、僕たちは生存するのだろう?もう、必要がない、必要のない、この政治性を、いいたまえ、地上が

あア在    
るルる     
とトと

あれらの小窓から、眺めている、いつも、現れるものを、この部屋で、部屋で。散逸していくものを、僕は拾い集め、叙述的島に生えた手へ
送る。いつか、降り下る幸福が、贈られるように、指へ。
指へ。見出すことができる、見出すことができるだろう。なぜなら。


ただ失ったのでしょうか、いいえ、もう一度それを得るために。神の似姿かもしれない人間よりずっと。

いつか風景が現れるのだろうか描写するべき風景というものが?それはもう風景が壊れるとき僕の眼は捉えられない人間が壊れるとき僕は作り変えられるもう一度僕の塵は呪文をかけられる僕は土と粘土から捏ね上げられる。風景
風景は到来しない。あらゆる物質の中の一微粒子へ僕は見ないが
至るだろう
僕へ

至る、至る、至る、季節へ至る僕はそばに横たわっている、なた、あなたへ向かっての
僕はいつか季節という言葉をためらうことなく、受け、苦しむだろう。受け、苦しむだろう。
31
砕け、る。もろこし畑に。僕はいつか見たこと、聞いたこと、それに触れたものすべてをあなたに話してあげる。気にしてはならない、汝、気にすることなかれ。

光ることのない石が、僕を自由にするために、これらの散文から失わせた。断じることなく、いやその必要がなく開けているものはそのままあれらの光景は公開される。あなたがとらえたものを、僕の眼は捉えることなく、ただ僕たちは物たちとともにある夏の会場の中で。ああ、ああ。と吐息。この混乱!この散逸!この非意味!へしか導くこののないこの冗語法の中。限りなく季節は限定されている、おそらくその限定は奇跡的な物だから、僕は限定する、この奇蹟を味わおう、その。いいつのる。祈る。故障延長時制行方低空述懐と老人や子供に似あうと児戯の類。

近づく、感じることなく

近づく、言葉でいいうるものの季節へ


降り積もる、降り積もる。おそらく抒情詩なのだ。おそらく賜物なのだ。おそらく。よき始まりになるよう!

立雲

僕は季節へ下降していく、あの季節がいつも到来し続けているからなのだ、僕がもう一度、あの外套を非常に落下させ、階段に捨て、幸福に満ちて。僕は素晴らしい喜悦に到来しているんだ、イジチュール!君は、落とさなかった、君が開けなかった言葉を、僕は。持っていこうと思う。
虚辞があらゆる場所に気象を感じさせる、僕たちに、説明的妥当性の廃絶の中で、微笑んでいる君へ。さえも。僕たちは近づいてゆく。

またもこの景色。あなたは眺めることを可能にした条件の下で、訪れた、捉えられる、またも。この輝きの中、あなたは在る、エントロピーから逃れ去り続けられるような虹彩、風車が風を受ける。アルミニウムの体に太陽の光がきらきらと反射して、まるで天使の翼のように虹色に光るんだ。

幸福にも僕は熱ー
死ななかった。

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