オランダ人にフラれてドイツに来た話。
2018年2月25日。
忘れもしない。
私は、当時付き合っていたオランダ人の彼女にフラれた。
そして今ドイツにいる。
意味が分からないと思われる方もいるだろうが、私も正直意味がわからない。
なんで私は今ドイツにいるのだろうか。
私とオランダ人の元カノは、とあるインターネットの言語交換サイトで知り合った。当時、英語を独学で勉強していた私は、ある日オランダ人の女の子からメッセージをもらった。一緒に英語を勉強しようと。
普段なら、ネイティブ以外相手にしないのだが、この時だけはなぜか返事を返し、そこからSkypeで連絡を取り合うようになった。
最初は1ヶ月に一回だった通話が、気がつけば週末は必ず3.4時間話し込むようになっていた。
次第に私たちはお互い惹かれ合った。
そして気がつけば私はオランダにいた。
駅には、ブロンドヘアで長身で青い目をした女性が立っていた。
画面越しでは分からない綺麗さと、高身長なのに数秒間見とれてしまったのを覚えている。
彼女はとても綺麗だった。
4日しかない短い時間で私たちはとても濃密な時を過ごした。
Skypeだけでは知らなかったこと。会わないと話せないこと。色んなことを話した。
オランダ人の恋愛感と日本人の恋愛感の違いは何か。
どうしてこんなに自転車のサドルが高いのか。
オランダ人は何で謝らないのか。
オランダ人はどうしてスパゲティをナイフとフォークで切って食べるのか。
毎日ジャガイモで飽きないのか。
などなど。
こんなこと直接会わないと話さない。
Skypeではくだらなさすぎて話す価値すらないものが、直接会うと話す価値があるものに変わるのは面白い。
付き合っている間、私はオランダ語を独学で勉強した。数ヶ月で簡単な会話ならできるようになっていたと記憶している。
オランダ語が少しできるようになった私は、彼女とオランダ語で会話するのが楽しくて仕方なかった。
オランダから帰ってきてから、毎日のように電話をした。オランダ語でメッセージを送った。幸せだった。
恋愛映画では定番だが、大体こういうのは長くは続かない。
私もそうだった。
そして、その日もいつものようにオランダ語でメッセージを送った。
いつもなら、彼女はオランダ語で返してくれる。
しかし、この日は英語で「真剣な話がある。電話しない?」と返ってきた。
そう。私はフラれた。
20年生きてきて初めてできた彼女にフラれた。
その当時、私は専門学校を休学し、いわばニートのような生活を送っていた。
付き合ってる間は、いっそこのまま学校やめてオランダに飛んで彼女と暮らそうとまで思っていた。
そんな話を一度彼女にしたら、ものすごく怒られた。
そんな適当な人生を歩むんじゃないと。
彼女は政治家になりたいというくらい真面目でしっかりしていた。
マックで誰かが置いていった経済新聞をじっくりと読んで持ち帰るくらいの人だった。
そんな彼女にとって、ただ恋人と会話したいだけでオランダ語を勉強し、将来設計が全くない私はダメに見えたのだと思う。
きっとこんなのが原因でフラれたのだろう。
私は路頭に迷った。
フラれたショックからよく分からない発作が起き、翌週には検査入院するくらいだった。
幸いなことに、フラれる1ヶ月前、語学の勉強が好きだったこともあり、ダメ元で地元の外国語大学を受けて、奇跡的に受かっていた。
私はこの大学に通うことを決めた。
この大学には、英語科の他に、フランス語、ドイツ語、韓国語、中国語が学べる学科があった。
専攻言語は入学してから決めれるため、私は彼女と付き合ってる間何語を学ぼうかずっと迷っていた。
ドイツ語は絶対に選ばないと決めていた。
彼女がドイツ語が大っ嫌いだったからだ。
「ドイツ語なんて野蛮な言語、勉強しないで!あの人たちはビール飲んでソーセージ食べて大声で騒いでるのよ!ドイツ語話すときも怒ってるようにしか聞こえないし」と彼女は言っていた。
野蛮な言語って。
言い過ぎだろうとは思ったが、彼女に嫌われたくないからドイツ語はやめようと決めていた。
しかし、フラれた後そんなことは関係ない。
私はドイツ語を選んだ。
私をフった彼女に、次会ったらドイツ語で話しかけて「やーいやーい。フライドポテトにマヨネーズかけるなんて邪道ぞー!」とからかえるくらい上達してやろう。そう心に誓った。
今思うと、かなりのクズ野郎である。
フラれて当然だ。
そう。こんな理由で私はドイツ語を勉強しはじめた。
と言っても、彼女をギャフンと言わせてやろうというのは一つのきっかけであり、ドイツ語の発音に魅せられたのが大きな理由だと思う。
突然だが、ドイツ語でブラシはBürsteである。おっぱいはBrüsteだ。rの位置が違うだけで、とんでもないことになってしまう。
ブラシと言ったつもりが、おっぱいと言っていたのである。
私はこれを学習1ヶ月目に、オーストリア人の女の子と話していてやらかした。
恥ずかしかったが面白かった。
余計発音に魅せられた。
変態な私は、発音が少し違うだけで危ない言葉に聞こえる単語を覚えまくった。
そして、勉強しはじめて2ヶ月目に、ドイツ語のスピーチコンテストで、ブラシがおっぱいなった話をして優勝した。
ドイツ行きの航空券をもらった私は、さらにドイツ語学習に磨きをかけた。
その年の12月には、全国スピーチコンテストにも出て、このnoteに書いている元カノとの話をした。
「今私は恋人いないから、これが私の番号です」
全国大会で恋人募集をした。
審査員は顔を真っ赤にして笑っていた。
ドイツ人はこういう話大好きなのだ。
参加者の中で一番私が爆笑をかっさらった。
元カノまじダンケシェンである。
波に乗っていた私は、そのままドイツに留学に行くことを決めた。
ドイツに行ってドイツ語を上達させようと。
なんなら、ドイツ人の恋人を作ろうと。
そんなこんなで、私は今ドイツでこのnoteを書いている。
オランダ人の元カノにフラれて、ドイツ語を学びはじめた。
一見何のつながりもないように思えるが、元カノにフラれなければドイツ語は勉強していなかっただろう。
そして、今ドイツにもいなかった。
元カノをギャフンと言わせたいがために学びはじめたら、案外人生うまくいっている。
語学を学ぶ理由は人それぞれ。
恋人が欲しかったり、別れた恋人にギャフンと言わせたかったり。
なんでもいいと思う(経験談ですが、別れると学習目的がなくなります)
ドイツに来て、語学学校に通い色んな理由でドイツに来た人たちに会う。
仕事をするため。大学に行くため。院に行くため。
しかし、未だにオランダ人の元カノにギャフンと言わせるためという理由の人には出会っていない。
もしこれを読んでる方の周りに同じ理由の人がいたら連絡してほしい。
一緒にビールを飲もう。
さて、元カノとその後どうなったかというと、大した進展もなく友達としてたまに連絡を取るくらいである。
元カノをドイツ語でからかえるくらいにはなった気もするが、まだそれは言っていない。
いつか、元カノと再会することがあれば、こう言いたい。
「ドイツ人もフライドポテトにマヨネーズかけてるわ」
と。
次回は、ドイツ留学に来て引きこもり生活をしていることについて書きます。
くだらない話を読んでいただきありがとうございました。
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