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【映画】52ヘルツのクジラたち

評価:★★★★☆


ネグレクト、DV、自殺、アウティング、ヤングケアラー…
社会問題盛りだくさんなストーリーでした。

家族という檻

子どもにとって親が全ての時期がある。
その時期に呪文のように『愛している』と言われたら、殴られても蹴られても何をされてもそれは正しいのかもと思いこんでしまう。
それが当たり前になってしまえば、
助けてという気持ちでさえ罪悪感を抱くことになる。

どこにも逃げられない。
狭い世界が、唯一の世界になる恐ろしさ。

ムシと呼ばれた少年も、きなこも、親に恵まれなかった。
周りに恵まれたからその世界から抜け出せた。

きなこを救ってくれたあんさんの優しさと思いやりが、
ムシと呼ばれた少年に手を差し伸べた。


御恩は連鎖する。
自分にとってのご恩は、仕事の先輩。
何も出来なかった私に一から教えてくれた。
おかげ様で私はどこへ行っても、「仕事が出来るね」と褒められるようになった。
もうその先輩と一緒に働くことはないのでこのご恩を先輩に返すことは出来ないけれど、
私も同じように後輩には、
その子が今後どこへ行っても恥ずかしくないように育ててきたつもりだ。

人から受けた嬉しさや悲しさは覚えている。
優しさを受け取った人が、
他の誰かへその優しさを渡していく。
優しさの連鎖が世の中を変えていくと思う。

同じように悲しみも連鎖する。
自分からは、誰かに悲しみを与えないようにしていきたいと思う。

自殺という選択肢

自殺防止の最大の方法は「自分の大切な人から愛されている自覚」だと思う。
親、友達、誰でもいい、
自分が大事にしている人から同じように愛されていると知っていれば、
自分が自殺したことで悲しむその人のために、
死のうという行動を止められる。
踏ん張る気力になる。

…とこれは自己体験。
私も、死にたいと思うことがある。
だけどそれをいつも食い止めているのは、
私が死んだあとに悲しむだろう妹の存在だ。


自殺した娘を思い泣く母親の姿は心が苦しかった。
伝え方を間違えなかったら、
きっと今も…と思わずにはいられない。
「ありのままを愛してくれる」ということは極めて重要。

トランスジェンダー

昨今で大きく認知度が広がった。
今まで自分がそうだと言えなかった人も、
昔よりは言いやすい世の中になったように思う。(昔よりも身近にいる数が多くなったので。)

だけどまだアップデートが出来ていない人たちは、その人たちを否定する。
この母親も、トランスジェンダーとは?をもっと理解していれば、
最悪の事態は起こらなかったのかもしれない。


昔働いていた会社(海外の日系企業)では、
カミングアウトしたせいで仕事を解雇された人がいた。
ゲイは生きずらい日本から離れて、
同性婚が認められている国であるにもかかわらず。

片や、今の会社(日本企業)にもゲイの方がいる。
彼はカミングアウトしており、周りもそれを受け入れている。
(なんなら好きな同僚男性に猛烈アタックしている。)

この数年で認識が変わった今の時代で、
あの会社はまだ同性愛者を理不尽に解雇するのか、知りたいところである。

アウティング

アウティングとは、本人から了解を得ずに、性的指向や性自認を第三者が公に暴露すること。アウティングは、「本人から了解を得ず、秘密を言い広めること」といった意味を持つ英単語 “outing”のカタカナ語です。

https://www.kaonavi.jp/dictionary/outing/

他人が本人の意志に関わらずカミングアウトされる行為がいかに危険か、
この映画を通してもっと広く知れ渡ればいいなと思う。

タイトルに込められた想い

ほかのクジラが聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で一頭だけのクジラ。
どんなに鳴いても、
すぐそばに仲間がいたとしても、
その存在に気がついてもらえない、
世界で一番孤独な存在。

そこに”たち”が付いていることで、
1人じゃないよと語りかけている。

凄く素敵だと思った。
この物語の核である。


終わりに

志尊淳のアゴヒゲが最初から気になった。
なんであんな中途半端なんだ?と…。
どんな役作りであぁなるんだろうと不思議だった。
そして途中でわかる。
そういうことか、と。

そして美晴。
めちゃくちゃ良い人!
最後まで泣くのはずっと我慢出来てたけど、
最後の最後、、、
彼女のずっと一貫した深い友情に自然と涙が零れた…。


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