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#17 私と母の戦闘日記

母が一人暮らしの家に来てから2日目。

「研究室の片付けしてくるから、学校行ってくる。」

そう言って、私は家を出て研究室に行き、片付けをした。もう、戻ることはないと思いながら。

先生にも挨拶をし、片付けを済ませ、私は帰宅した。その後も、ゴミを捨てたりと動き回っていた。すると、母が話しかけて来た。

『ちょっと座りなさい。本当にこれでいいの?』

「何が?実家に連れて帰るんでしょう?私は、いいと言ったよ。」

『貴方の為を思って言ってるのよ。このまま研究室をやめてもいいの?』

「いい悪いじゃなくて、お母さんがそう言ったんでしょう?私は内定を辞退する気もないし、実家に帰るしかないよね。」

『だから、辞退すれば、研究室をやめなくても済むのよ!辞退しさえすればいいの!』

そう言って、また、昨日の夜に逆戻りだった。

(本当にこの人、どうしたいんだろう。)

私としては、片付けもして腹も括っていると言うのに、今更何を言っているんだ、と思うほどであった。むしろ、そんな生半可な覚悟で、実家に連れ戻すなどとは言って欲しくはなかった。私は、本当は連れて帰る気ないんだろうな、と呆れていた。

(どれだけ、振り回すの・・・。)

『実家に帰ってからどうするの!』

「アルバイトでもすればいいんじゃない?それか、許されるんなら、住み込みバイトでもしようかなと思ってるけど。」

『そんな住み込みバイトなんてないでしょう・・・。』

「最近はリゾートバイトがあるんだよ。」

『あ!そうね、それで海外のホテルで働くなら、お父さんに話してみてからだけど、いいと思う!』

(・・・どうして、いきなり、海外になったんだ。私は、海外なんて一言も言ってないのだが。・・・)

もう、話の方向性がめちゃくちゃだった。そんなことも御構い無しに話を進める母親。まずは、辞退をしてから、の一点張りの母親。

もう、私の方が訳が分からなくなっていった。

(やっぱり、辞退したほうが、今後物事が大きくならずに終わる。仕方ない。この人に何をいっても話が通じない。)

昨日の夜から同じセリフを聞かされてもうすぐ、15時が過ぎようとしている。もういい加減終わって欲しかった。私の限界はもう、とっくに超えていた。

「分かった。もう辞退するから。もう、帰って。明日も仕事なんでしょう。」

『いやよ、私の目の前で今、辞退のメールをしなさい。貴方は信用ならないから。』

「でも今日は祝日でしょ?どうせメールしても、意味ないから、明日するよ。」

『メールなら関係ないじゃない。』

「メールって言われたけど、流石に、こんな大事なことはメールではできないから明日電話するから。ちゃんと電話するから、お願い帰って。」

そう言って、母親を無理やり説得し、帰ってもらった。

もう、夕方。

どっと襲ってくる疲労感。部屋を見渡すと片付けの途中で散らかっている。

(よくも、こんな状態にさせたものだ。)

怒りなどなく、ただの呆れと、疲れしか私には残ってなかった。

片付けをする気にならず、とりあえず、家を出て友人にあった事を全て話させてもらい、気持ちを落ち着かせた。

そして、また、思う。

辞退したくないな。と。


どれだけ意志が弱いのだろうと、毎回思うがそれでもやはり、辞退することに何に意味も見出せなかった。


そして、次の日、とりあえず会社の人事担当に起こったことを全て話した。


会社側とは、母がメールをしたあたりから、マメに連絡を取っていた。どう考えても、会社側の協力と理解が私の就職への鍵になるからだ。

私は母と連絡を取りつつ、人事担当とも連絡をとり、と、精神的に不安定な状態が続いた。

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