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アイドルとキャッチフレーズの関係

かつて、『ちょっとエッチな美新人娘(ミルキーっこ)』として売り出されていたアイドルをご存じだろうか。

そう、今年デビュー40周年を迎える中森明菜のキャッチコピーである。

第二の山口百恵と称され、1980年代のアイドルとして松田聖子と2強を競った伝説の歌姫だ。

事実、私自身もアイドル時代はキャッチフレーズを使っていた
『アイドル的に17歳』だ。

当時もう、20歳を超えており、17歳には見えなかったと思うが…
なぜか17歳という数字にこだわりがあった。

『アイドル的に17歳』の乙川杏珠(当時20歳)

キャッチフレーズが必要ないケース

地下アイドルの中には、キャッチフレーズを持たないアイドルもたくさんいる。

私自身も最初に所属していたグループ【Asterisk】では対バンライブ(※1)の出演が主だったため、MC(※2)時間も短くキャッチフレーズを使った自己紹介は必要がなかった。

対バンライブでは出演時間が大体15~30と決まっており、MCを短く切り上げ、多くの曲を披露してそのグループ自体を知ってもらい、新規ファンを獲得するという目的がある。

そのため、対バンライブを主として活動しているグループでは自己紹介時にキャッチフレーズを使用していないケースが多い。

自己紹介の際は、あだ名・名前を紹介する程度だ。
例)「杏珠さんこと、乙川杏珠です!」

キャッチフレーズが必要なケース

MC時間短縮のためにキャッチフレーズを使用しないグループがある、というのは先程述べたとおりである。

それでは、キャッチフレーズが必要なケースについて考えていこう。
キャッチフレーズを使うアイドルの定番自己紹介は、キャッチフレーズ・あだ名・名前の紹介である。
例)「アイドル的に17歳、杏珠さんこと、乙川杏珠です!」

キャッチフレーズが必要なケースはいくつかある
MC時間が長くとれる
グループが大所帯
メディア出演
主な例として3つ挙げてみる

MC時間が長くとれる

先述のとおり、対バンライブ出演の場合はそのグループの持ち時間が決まってしまっているためMCで自己アピールはできないに等しい。

しかし、定期公演(※3)やワンマンライブ(※4)等を行っているアイドルグループになるとある程度MC時間が確保できる。

MC時間を確保できる理由として、定期公演やワンマンライブにはそのグループの事をある程度知っているファンが来場する、新規ファンを獲得する場ではなく、より、そのグループを知ってもらう・好きになってもらうという目的があるからである。

また、対バンライブでは主催側から出演側に出演時間が与えられるが定期公演やワンマンライブでは、そのグループ自体が主催側となるため比較的出演時間の調整に融通が利く。

さらに、グループ自体が主催側ということもあり、全員出演曲のみではなくグループ内ユニットでの楽曲披露等もあり対バンライブに何度も足を運んでいるファンでも新鮮に楽しめる内容で公演をすることができる。

ユニット曲を披露する子たちにはグループとは別の衣装が用意されていることも多く、別の衣装に着替える間の繋ぎとしてMCを取り入れることができるというのもMC時間を確保できる理由として挙げられる。

MCの時間はいわば、パフォーマンス以外で自己アピールができる時間なのである。

もちろん、パフォーマンス(歌やダンス)が得意な子もいれば、MCで話を回す司会的役割が得意な子もいる。他のメンバーとの差別化を図るためにその個性を活かして活躍するアイドルも大勢存在する。


少々話がずれたが、本題に戻そう。
なぜ、MC時間が長く確保できることがキャッチフレーズに繋がるのか。

それは、MC時間は個性をアピールする場であるからである

自己紹介をせずに話し始めるアイドルはいないので(一般的に言う「名前だけでも覚えて帰ってください」というやつ)MCで話す前に必ず自己紹介が入る。

その自己紹介でキャッチフレーズを言うアイドルと言わないアイドルがいるとしよう。

アイドルA「杏珠さんこと、乙川杏珠です!」
アイドルB「アイドル的に17歳、杏珠さんこと、乙川杏珠です!」

こういった自己紹介が10人、20人続くとどうだろう。
ファン歴が長いファンは顔と名前が一致しているだろうが、ファン歴が浅くまだグループの1人もしくは2人程度しか顔と名前が一致していないファンがいたとしたら、アイドルAの自己紹介ではあだ名も名前もきっと覚えていないであろう。

アイドルBの自己紹介であれば、アイドル的って何?本当の年齢じゃないってこと?と気になりはしないだろうか。仮に気にならなかったとしても、17歳の子だ、と印象付けることはできるだろう。

グループが大所帯

これも前述の場合と同様である。
グループのメンバーが多ければ多いほど、1人1人の印象はどうしても薄くなる。

大所帯のグループだとMCの際に全員が話すというよりは、司会者的役割のメンバーが数名に話を振ってその話を広げていくMCが主流となるので、MCで一言も話せないメンバーも出てくる。

そこで自分の魅力を最大限に表現する、その子のことを強く印象付ける手段としてキャッチフレーズが必要なのである。

グループが大所帯の場合、対バンライブのステージ上で全員でのパフォーマンスをする事ができない場合もあり、アピールの場は自己紹介の時のみになってしまう可能性もあるが、ここでいかにファンの心を掴むかが勝負となってくる。

メディア出演

最後にメディア出演をする場合の例を挙げる。

地下アイドルであっても、メディア出演をする事がある。
いわゆる、テレビ・ラジオ・ネット配信や雑誌等の地上の仕事である。

ここは私の経験を書かせてもらう。

事務所に所属して初めての1人での仕事が、テレビ出演だった。
番組の内容は、大ブレイク中だったマスクメイクで有名なざわちんにメイクをしてもらい、ビフォーアフターを比較するといった内容だったかと思う。

当時まだ、慣れないメディアの仕事で大緊張。それに加え番組司会がものまねアーティストとして有名な青木隆治、元AKB48の高城亜樹が出演しており、さらに緊張。

撮影が進行していく中、ざわちんにメイクされている間の無言を埋めるために「おいくつですか?」と聞かれた。とっさに何か答えなきゃ!でも普通じゃ面白くないし!と考えた末に出た答えが「いくつに見えますか?」

・・・地元のキャバ嬢か??

その後の放送をチェックすると見事にその質問はばっさりカットされており、後悔。個性をアピールできる絶好の機会を逃したのだ。しかもTV出演で。

その時の後悔から、今後年齢を聞かれたときは素直に答えようと心に誓った。しかし、年齢を聞かれたときに衝撃的でなければいけない!!と思い込んでいた私は『アイドル的に17歳』と、偽りの年齢をキャッチフレーズとした。

アイドルとキャッチフレーズの関係

アイドルとキャッチフレーズは切っても切り離せない関係にあるものである。

さらには、ファンに自分を印象付けさせるために、いかにわかりやすく自分を表現できるか、いかにワンフレーズで印象に残せるかということが重要となってくる。

次回は、アイドル卒業後、OLとして広告代理店に勤めている私がキャッチフレーズの作り方を解説していこうと思う。

もう何の戦略もなしに『アイドル的に17歳』などというキャッチフレーズは付けない。(当時は相当気に入っていたが)


本文中、敬称略にて記載いたしました。

解説
※1『対バンライブ』
  1つのライブに複数のアイドルグループが出演する形式のライブ

※2『MC』
  ライブなどで曲の合間に行う出演者のトーク、または、その時間

※3『定期公演』
  定期的に開催されるライブ
  同じ時間・曜日・場所等で行われる場合が多い
  例)毎月第2土曜日19:30~ 新宿ReNY

※4『ワンマンライブ』
  単独グループで行うライブ

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