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人に頼るという強さ

就職活動や自己紹介において「あなたの座右の銘は何ですか?」この質問をされたとき、何と答えるだろう。

『七転び八起き』や『有言実行』等を思い浮かべた人も多いと思うが、私は迷わず、こう答えるだろう。

「人に頼る、っていうのも強さなのよ」

これは、私が大学時代に尊敬している恩師からいただいた大事な言葉である。


当時、アルバイトとして自身の通っているバレエスタジオの指導補佐をしていた。いわゆる、おねえさん先生だ。

高校1年生から大学を卒業するまでの7年間、指導補佐として働かせてもらった。まだ未熟な私を高校時代から『ひとりの大人』として接し、愛情をもって育ててくれた先生には頭が上がらない。

先述の言葉をいただいたのは大学3年の夏、発表会を控えていた時期だった。その時期は自身のアイドル活動や、大学のレポート・単位取得に追われており、自分のことで精いっぱいだったように記憶している。

その年の発表会では、私が振付や舞台構成に関わっており、特段に気合が入っていた。

バレエの振りを付ける時は、ベースとなるプロの振付から難易度を落としたり、フォーメーションを変えたりして、自分なりにアレンジすることが多かったのだが、やはり1人の人間で振付をしているとフォーメーションや振りにその人の好みが表れやすい。

私の振付もまさにそのパターンで、振りや移動がワンパターンになってしまうことに頭を悩ませていた。

ある日、スタジオの先生からお誘いをいただき、食事に行くことになった。私が悩んでいることを察して食事に連れ出してくれたらしい。やはり、幼い頃から私の事をみている先生には隠し事はできないなと思った記憶がある。

私と杏珠はすごく似ていると思う。

1人で何でも頑張らなきゃっていう責任感を誰よりも持ってる。
だからこそ、私は杏珠を信頼しているし安心して仕事も任せられる。

私も昔そうだったの。
アシスタントもまだいなくて、ひとりでスタジオをやっていた時、「強くいなくちゃいけない。」って自分に言い聞かせてた。
スタジオを始めた時はまだ19歳だったから、生徒達に舐められちゃいけないって思ってた。

でもアシスタントが付いてくれて、仕事をある程度任せられるようになったら自分の鎧を脱げた気がした。強くなくてもいいんだ、って思えたのよね。

お陰様で今こうして、杏珠みたいな優秀なアシスタントが何人も付いてくれる。
私一人で何もかも抱えてたらきっと、ここまでスタジオも大きくできてなかったと思うの。

『人に頼る』っていうのは、初めはすごく不安だし、怖いと思う。
でも、『人に頼る』ってことは弱さでも何でもなくてむしろ、強さなんだと思う。

『人に頼る』っていうのもひとつの強さなのよ。
後輩が成長するチャンスにもなると思うし。

何年も前の話であるため、話の内容はニュアンスでしかないが、たしかこんな内容だったと思う。

この言葉をいただいた日から、私の世界は大きく変わった。

1人で悩んでいた振付・構成もすぐに後輩と打合せをして後輩に考えてもらうことになった。

するとどうだろう、自分では絶対に振付しないであろう振りやフォーメーションであったが、斬新なパフォーマンスが出来あがった。

これには、発表会にご来場いただいたお客様からも良い反響があり、自分が思っているよりもずっと後輩は成長していることに気付くきっかけになった。

この出来事があってから、自分1人で抱えず、後輩に頼ることができるようになった。

人に頼ることができると、人から頼られることも多くなる。
そして、大学卒業までバレエの指導補佐を続ける活力もまた、誰かに必要とされていることであった。


座右の銘、というにはありきたりで何でもない言葉かもしれない。

それでも私はこの言葉を座右の銘と言い続けたい。
「人に頼る、っていうのも強さなのよ」

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