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シロツメクサ

風が強く吹いている。
梅雨の雲が早く流れていく。
夕方頃になると虫が泣き出した。

3番目の子どもとの別れで咽び泣いた、
病院の中庭にあったシロツメクサの白と緑の絨毯は、
夏を前にして刈り取られてしまっている。
きっと来年もまたシロツメクサで一杯になるんだろと感傷に浸ってしまった。
いまは残念ながら私以外の人影はない。

なぜそんなとこに一人で行ったのか。
病棟でちょっとショックな事があったからだ。
一番上の娘と同い年の明るい少女と食堂などでよく会話するようになっていた。
病院と言うのは閉鎖的なところであるが故に、
また誰かが何か怪我や病気を言うか言わないかは別にして持っている為、
ある意味でコミュニティといえば聞こえはよいが。
ある種の小さな村社会というか共同体意識が入院が長くなると出来てしまう。

少女もまた色々な事情を抱えて入院をしている。
私は基本的にあまり深く詮索する方ではなく、もっぱら彼女の話しに耳を傾けて聞いていた。
あっという間の出来事だったと聞いている。
面談中であったらしい。
人伝で聞いたので細かいところはわからないが。
医師の前で取り乱してしまったらしい。
そして、結果精神科の閉鎖病棟へ遷されたと聞いた。
非常に突然だった。
私は今週末に退院する。
それが意味することはもう恐らく少女に会う事はないだろうと言う事だ。
精神科の閉鎖病棟とはその名の通り外部から完全にシャットアウトされる。
また閉鎖病棟に入ってしまったら外に出る事はしばらくない。
正直なところ、少女には娘みたいな感覚があってまた少女も非常に明るかった。
入院生活に置いて、精神的に救われていた部分はかなりあった。

何というか非常に突然でなんともいいようがない。
ただただこの少女にも将来幸せになって欲しい。
そう思わずにはいられない。

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