左耳と右耳

心から出てってくれ

そう願って心の整理をしていた

お揃いのピアス
私の大好きなピアス

愛してる人の好きな物を
俺も好きになりたい

そう言って開けた左耳のピアス
私は右耳に開けたピアス

ピアスには開ける場所によって意味がある
左耳には「守る人」
右耳には「守られる人」

君と永遠を誓った
永遠なんてないと知った
若かった
未熟だった
信じていた
でもいつか終わりが来ると思っていた
ずっとなんてないと分かっていた

もういいよ
早く居なくなってくれ

右耳のピアスホールだけが残った
虚しく
静かに
私の心と一緒

あぁ、お揃いになんてしなきゃ良かった
残ったこのピアスはどうしたらいい？

「このピアス可愛いですね」
そういった昨日出会った男の子
若くて無邪気に笑う男の子

「もういらないからあげるよ」
顔も見ないでそう答えた

「いいんですか？大切な物とかじゃないんですか？」
そう言いながら笑顔を向けてくる

「私にはもう必要ないから」
遠くを見つめながらそう答えた

私のあげたピアスを付けた男の子
嬉しそうに「ありがとう」という

あぁ、これでもう居なくなる
私の中から消えてくれる
そう思ってるのにあの人の面影を思い出す

「お揃いで嬉しいね」というあの人の声
「少し痛いね」と私を抱き締めるあの人の体温
「守ってあげるからね」と話すあの人の笑顔

ひまわりのピアス
お揃いでつけた初めてのピアス

もう終わりだ

君が居なくなったらアタシはどうなるかな
左耳知らなかった穴 覗いたら昔の女が居た
アタシは急いでピアスを刺す
それで起きて 寝呆けた顔して
これくれるのなんて聞いてくる
別にそれもう要らないし

クリープハイプの曲が虚しく頭に響いた

笑顔と、声と、体温
こんなにも私を苦しめるのに
もう私ははっきり思い出せもしない

さようなら
なにも知らない男の子の左耳で光る
私の昔の思い出