地球の裏側ブラジル。タクシーで7時間かけてW杯を見に行った話。
2014年、ブラジルに行った。
2014年のブラジルといったら、みなさんもご存知の通り、サッカーW杯があった年だ。
わたしももれなく、そのW杯を見るためにブラジルへ行った。
W杯を見に行くのははじめてだった。
行くことを決めてから準備をはじめ、試合のチケット購入などを進めつつ、日本で行われるたくさんのW杯準備イベントに顔をだした。
初めて知った世界だった。
そこには毎回W杯にいっているサッカーおたく(サポーターさんですね、すみません。)たちが大集結。
W杯だけでなく、日本代表の国際試合が海外である場合はほぼ応援に行くような方々。
みんな顔見知り、みたいな人が多かった。
イベントがたくさんあり、Facebookでもグループがたくさんできて、情報交換をたくさんした。
みんな、やはりせっかくブラジルまで行くんだから、試合だけでなく観光も、ということで、そのグループ内で一緒に観光する仲間や、ホテルをシェアする仲間もできた。
ひとつの目的に向かってこんなにたくさんの人が集まって、仲間ができるって、スポーツは世界をつなぐなぁ、と出発前からテンションは最高潮。
そして旅が始まった。
今回の旅のもうひとつのメインイベント、レンソイスにまず始めに到着した。
楽しみにしていた絶景を3日間心ゆくまで堪能し、いざ、W杯の試合当日。
サンルイスという街にいたわたし達は、そこから飛行機で、試合会場のあるナタウという街まで移動するはずだった。
試合は夕方開始だったが、当日の移動ということで、なにがあるかわからないので早朝の便をとっていた。
そして空港に行ってみて発覚した。
なんとフライトが欠航になっている!
受付で担当者に聞いても、振り替えできる便はあるものの、それじゃぁ試合に間に合わない。
ものすごく焦ったわたしたちは、いろんな手段を使って代案を考える。
インターネットで検索してみたり、Googleマップと睨めっこして別のルートで行けないか探してみたり。。。
そこにぞくぞくと現れる日本人サポーターたち。
みんなわたし達より一便おそいフライトを予約していたひと達だった。
そのフライトは欠航になっていなかった。
大事をとってわざわざ早朝の便をとったのに、どうしてこんなことに。。。
困っているわたしたちにみんな声をかけてくれた。ただ、だれにもどうにもできない状況だった。
みんな残念そうな顔をしながら、「うまく行くことを願ってるよ!」と、ゲートへ消えていく。
そして残されたわたし達。代案をさんざん探したが、どうしてもナタウまで行く方法がない。
とにかく、ナタウまで行けなくても、少しでもナタウへ近づこう。
そこでまた別の案があるかもしれない。
サンルイスとナタウの間には、フォルタレザという街があった。そこまで飛ぶことにした。
フォルタレザについたタイミングで、フォルタレザからナタウのフライトに空きが出るかもしれない。
フォルタレザまで行っても、そこからナタウに行く方法があると保証されているわけではなかった。
でもとにかく、少しでも動く以外に道はなかった。
フォルタレザに到着し、走ってカウンターへ。
やはり、フォルタレザからナタウへのフライトの空きは出ていなかった。
どうしよう。。。
そこでまたGoogleマップに相談した。
「現在地からナタウまでの距離、車で7時間30分」
その時、12時頃だった。
試合開始は19時。
今出発したら、到着は19:30。
試合開始には間に合わない。
でも、ここまで来て行かないわけにはいかない。
なんのために地球の裏側まで来たのか。
一試合しか見る予定がなかったわたし達に、他に選択肢はなかった。
タクシーで行こう。7時間半かけて。
問題は、そこまで行ってくれる運転手がいるかどうかだった。
中南米のどの国でも見られるように、空港の出口にはたくさんのタクシーの客引きがいた。
試しに寄ってきたうちのひとりに聞いてみた。
「ナタウまで行きたいんだけど」
「ナタウ!?無理だね」
。。。だよね。
そりゃ7時間も離れた街まで行きたくないよね。
東京から大阪までタクシーで行くようなもんだもんね。
でもこれしか方法はない。
他にも数人のタクシー運転手にあってみると、
「うーん、ナタウか。。。いいよ。」
といってくれる救世主が!!!
「ほんとーー!?!?ありがとう!ほんとにありがとう!いくら?」
「うーん、」
と言って、紙に書いた数字は、600。
600レアル。≒12,000円。
悪くない。飛行機に乗ったと思えば全然悪くない。
「お願いします!!!!」
現金を持っていなかったわたし達は、すぐに空港のATMで600レアルをキャッシング。
タクシーに乗り込んだ。
英語を話さない運ちゃんには事情がきちんと説明できなかったけど、とにかく急いでいることを伝えたかった。
少し勉強していたスペイン語の発音を少しかえて、
「ハピド イ セグロ」(急いでね、でも安全に)
と、たどたどしいポルトガル語風な言葉にして伝えてみた。そしたら運ちゃんは
「オッケー!」と!
伝わった!わたしのつたないスペイン語が伝わった!
余談になるが、この経験がのちに、わたしをメキシコまで行ってスペイン語を勉強させる、大きな大きなきっかけとなった。
運ちゃんに身をまかせ、道中7時間。
わたしのカメラには、心配そうな顔をする相棒の夕日ハンターの写真が残っている。
わたしはというと、始めのうちこそ、運ちゃんが160km/hの豪速で運転するので怯えて起きていたが、気づいたら眠りに落ちていた。
あとあと「よくそんな状況で寝れるよね!運転手が悪い人かもしれないのに!」と、いろんな人に驚かれたが、しょうがない。わたしは乗り物の揺れにものすごく簡単に眠気を誘われてしまうのだ。
ということで、数時間走り、ナタウの街へだいぶ近づいてきた。
走っている間、事前のイベントで知り合った仲間たちに連絡をした。
事情を説明し、遅れてしまいそうであることを伝えた。
みんなすごく心配して、たくさんの応援メッセージを送ってくれた。
その暖かさに、すごくすごく励まされた。
ベタだけど、すごく一体感があった。
地球の裏側までわざわざ来て集まっている日本人たちの一体感。
みんなに応援してもらった。感謝しかなかった。
幸運なことに、いい運ちゃんにあたり、車はガソリン入れ以外は全く寄り道せず、まっすぐ目的地に向かった。
むしろ、7時間半のところを7時間くらいで到着してくれた。さすが160km/h出していただけある。
わたしの「ハピド イ セグロ(急いでね、でも安全にね)」が伝わっていたと思うとうれしかった。
そして、無事に会場に到着した。
間に合った!!!!!
会場前で下ろしてもらい、運ちゃんに心から全力でお礼をいい、会場へ。
無事スタジアムの中に入れたのは試合15分前。
普通に走っていたら開始に間に合わないはずだったけど、運ちゃんががんばってくれたおかげ。
スタジアム内では、先に着いた仲間が前の方の席を確保しておいてくれた。
あんなにギリギリに着いたのに、日本代表サポーターならだれもが知っている有名サポーターと一緒に試合が見れたのはほんとうに感謝しかない。
ほんとうに、いろんな人に助けられてここまで来れた。
周りの応援があって、周りの人がみんないい人だったからこそ見れた、地球の裏側での一試合。
人生で絶対に忘れない一試合。
カードは日本vsギリシャ。
サッカーファンなら覚えているかもしれないが、この試合は結局0-0で終わった。
地球の裏側まで行ったのに、1ゴールも見れなかったのだ。
でもそんなことはもういい。
試合が終わって、別の仲間たちに合流する。
彼らはすでに飲み始めていて、わたし達を暖かく迎えてくれた。
「大丈夫だったー!?ほんと心配したよ!」
「タクシーで来たの!?ありえない!無事着いてほんとよかったね!」
その夜、わたし達はちょっとした話題の中心となった。
夜はふけてゆく。明日は最終日。早朝でリオデジャネイロへ行かなきゃいけない。もう寝ないと明日がキツい。
それは頭の中にあったが、今日のこの日を一緒に乗り切ってくれた仲間たちからどうしても離れがたく、その日は夜遅くまで騒ぎを楽しんだ。
おわり。
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