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毎年不思議な30分

少し前のこと 暗くなってドンっと腹の奥から突き上げる地響きような非日常的な音が鳴り外に出た 隣の町で花火があがっていた

毎年開催されているのに一度も現地には行ったことはなく 小規模な花火大会なので一年経てばきれいに忘れしまう、まさに幻のような存在

また暗がりで面白いのは あちらこちらから声だけ聞こえてくることだ 近所の人たちも同じくらいのテンションで同日を迎えているらしいことが分かる

「見えるよー見えるよ」数軒先に住むちびっ子の声 「足元気をつけてー」は隣のおばあちゃん 「田んぼの方が見えやすいよー」は電気屋のおじちゃんかな

暗くて離れていて誰の顔も見えないけれど声だけは響き届く不思議   

目を凝らしても見えない、気配だけの新進気鋭群像劇 効果音は腹の底で鳴る花火 風が吹き、雨も降ってきた   

近づかない そっと遠巻きに眺めるだけ 幻想すぎる30分   

 

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くすっとふふっとなれるような日記を、西から東、東から西へと毎日(ほぼ)やりとりしています  本日もぜひ少しの時間、のほほんしてってください かるえ&なたーしゃ