「孫の誕生日を昨日にしてほしい」と食い下がったおばあちゃんの話
私の誕生日は4月9日、つまり今日。というわけで今日は、私が産まれた日の祖母のことを書こうと思う。
祖母にとって私は初孫だった。産まれる前から楽しみにしてくれていて、誕生するとすぐに病院に見に来たそうだ。産まれたのは夜中の1時頃だった。つまり1時間前は4月8日である。
祖母は「たった1時間なのだからどうせなら8日ということにしてもらいたい」と言った。どうやら4月8日という日はお釈迦様の誕生日であり、八という数字は末広がりでもあるということで、大変縁起が良いそうだ。
祖母は一生懸命医師にお願いしたそうだが、もちろん却下された。
でも私はその話を聞くたびになんだか嬉しくなった。そこまで誕生を楽しみにしてくれて、一生懸命“良い日”であることを願ってくれた祖母の気持ちが嬉しかった。
私の誕生日は祖母の民謡の発表会の日でもあった。舞台の上で「今日はめでたい日です。初孫が産まれました!」と宣言してから歌ったので、「観客を味方につけて才能を余すところなく披露できた」と自分で言っていた。こういうことを自分で言えるタイプの人だった。
私の誕生日は毎年、母の陣痛の話を聞く日である。必ず母から連絡があり「当時微弱陣痛が24時間以上続いていかに痛かったか、微弱陣痛は本来は微弱などという生易しい言葉で表現してはならない」という話を聞く日になっている。
でも最後には「あなたは可愛いかったし、おばあちゃんがとても嬉しそうで痛みに耐えてよかったよ」と言う。
というわけで、私にとって自分の誕生日は、母と祖母に感謝する日である。もう長くない祖母は私が誰かも分からない。でも「今まで可愛がってくれてありがとう」と伝えたいと思う。
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