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「内緒だよ」の一言がもたらした傷

出産してから、自分が子どもの頃のことをよく思い出すようになった。
自分の子どもを育てるうえで忘れたくないことを思い出したので、ここに書いておこうと思う。「内緒だよ」の一言の重さを。

お年玉の思い出

父方の親族、特に叔母やいとこ達とは仲が良く、数ヶ月に一度は会って遊んでいた。毎年のお正月も、当然のように祖母や叔母家族と過ごした。おばあちゃんからは毎年お年玉をもらっていたが、叔母や叔父からはもらった記憶がない。というのも親戚間でのお年玉制度は、なしにしようという協定が組まれていたらしい。子どもたちの人数も年齢もほぼ同じ親戚同士だったため、どうせほとんど同じ金額がやり取りされるのだし、多い少ないで気を遣うのも面倒だからだと聞いた。もらえなくても、私たち子どもに不満はなかった。いとこ達に会えるだけで楽しかった。

内緒で渡されたお年玉

でもある年、叔母が突然、私と妹にお年玉を渡してきた。私が中学生の時だったと思う。今までもらったことがないのに突然渡されて、嬉しいというよりは戸惑いの方が大きかった。しかも「お父さんとお母さんには内緒」という条件付きだった。今なら叔母さんの気持ちも分かる。父と母に気を遣わせずに、姪っ子たちへの愛情を表現したかったに違いない。

険悪な帰り道

ところが帰りの車の中で、妹が秘密をばらしてしまった。まだ小学生だった妹は、ポチ袋をバッグから出して眺めていたのだ。母の「それどうしたの?」の問いに、あっさり「おばさんからもらった」と白状してしまった。私は呆れて「もう!内緒って言われたじゃん。なんで約束守れないの?」と、妹を責めた。妹はたちまち悲しい顔になり「だって聞かれたから・・・」と言った。

母は「こういうことは親に言わなきゃだめ」と私を叱った。つまり妹の言動が正しくて、私が間違っているというのだ。私は心から思った。「約束を守ったのは私だ」と。

今なら母の気持ちも分かる。確かに親ならこういうことは教えてもらいたい。でも当時思春期の私は大変腹を立て「私を責めるのは筋違いだよ!」と言い、悔し涙を見られないようにぬぐった。

この時、母も私も妹も、そろって傷付いていたことになる。叔母さんの「内緒だよ」という一言が、楽しいはずだった帰りの車内を険悪にさせ、母のプライドを傷付け、約束を守った私を泣かせ、ただ無邪気なだけの妹を悲しませた。数千円のお年玉くらいでは、割に合わないほどの険悪ぶりだった。ちなみに母はこの後、「あなたは悪くなかった、怒ってごめんね」と謝ってくれた。母のこういうところ、尊敬している。

子どもとの間に内緒を強要するのはとても負担であり、周りの関係者もろとも傷つける可能性があると、肝に銘じておきたい。

お正月のほろ苦い記憶である。

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