笑いのカイブツが良かった

この世の悲劇がごまんとあるというのに、何を他人事のように涼しい顔してんねん。
だって、朝パジャマを洗濯してサーキュレーター回していれば室内干しでも夜には乾いてるし、皿うどん食べたくなったら、ちょうど1人分の揚げ麺が売ってたし(皿うどんの揚げ麺って、大体売ってるの2人分ばかりなので、開封して1人分食べたら湿気ちゃう)、日本製と思ってたのに届いてみたら中国製だったから返品する!ってクレームが入った商品、ただの表記ミスなだけで日本製というのは正しかったから間違った表記した取引先に一つ借り作れたし、机が綺麗ねって褒めてもらえて嬉しかったし、特に悪いことがないのだもの。金曜日にハイボールがうまい。特に、机が綺麗なだけで褒められたことが嬉しかった。仕事ができる人は机も綺麗ねって。でへ。
今日は午前お休みして、午後から出勤する。うちの会社は残業代が出ないから、残業した分休みを取らないといけない。例えば、3時間残業してまったら、他の日に3時間時短勤務する。今日はその時短勤務で午前休みだった。休んだからって何もすることはない。10時まで寝て、ラーメン作って洗濯した。つまらん。こんなことなら出勤しときたい。体に時間が染み付いていて、時差ぼけでリズムが掴めない。会社にいることが安心になる体になっている。
最近の私は仕事がかなり俯瞰できるようになってきて、スッキリ整理されている。私のせいによる悪いことは余程のことがない限り起こらないだろうという安心感がある。今の部署に移ってから2年ちょっと、整理できたと思えるまでこんなにかかる。

昨日観た映画「笑いのカイブツ」のことをずっと考えていた。仕事をしていてもふとした瞬間思い出していた。周りの人みんなにおすすめしたいくらい好きだったが、もう終わりかけだ。朝か深夜になりそうだが、ぜひ観てほしい。
主人公はツチヤタカユキという男で、本人による実際の話を原作に映画化したものだ。バイトしていても、風呂に入っていても、考えるのは面白いネタ。ノートにびっしり汚い字で書き殴る。ノートも足りず、あらゆる紙に書き殴る。卒業証書とか。紙を買うのにも金がいる。ネタを書くのに金がいる。バイト中に怒られてもクビになってもブレない。面白いものが全て。病的と一言でまとめるにあらず。病気というのは世間が決めた枠に過ぎない。
劇中「人間関係不得意」という言葉が出てきて、どこかで聞いたことがあるなと思ったら、オードリー若林さんのエピソードで聞いたことがあった。オールナイトニッポンで毎回いいネタを送ってくるハガキ職人がいるから、一緒に仕事しようとオファーしたら「人間関係不得意」と返ってきたと。そこでツチヤタカユキを気にかけてくれる人気お笑い芸人として描かれているのは、オードリーの若林さんのことなんだと気がついた。そう気づくまで、どう見ても怪しい人間、ツチヤタカユキを気にかけてくれるなんて、裏腹のある胡散臭い人なのかもしれないと疑っていた。出会うべくして出会っていることに感動。巡り合わせに泣ける。若林さん、改めて好き。
強迫観念、時間がない。あと三年も生きない。今を燃やし尽くして死ぬまで。ツチヤタカユキは健康、体裁、安定、全て投げ出して面白いことを生み出すことに取り憑かれた笑いのカイブツ。「おはようございます」「ありがとうございます」「すみません」と言うだけで解決するのに、何も言わない。言えない。じとっとした目で見返すのみ。見ている方がもどかしくなる。ずっと言葉が出てこない。奇声を上げる、暴力に走ろうとする。やめて、私も過去そんな感じだったと思い出させないで。嫌だけど、適応した。自分が嫌だったから変えるしかなかった。よく考えれば大事なものなんてなかった。こだわりを手放すのは楽になることだった。ツチヤタカユキは、1番が決まっているから変えることなんてできない。面白いことを生み出す、シンプルにそれだけ。生活を気に留めない、鬼気迫る一点集中。
映画館を出て、雨が降っていた。カッパを持っていたが被らず、雨に打たれながら自転車を漕いで帰った。なぜならツチヤタカユキは濡れるのなんて気にしないから。後先考えない、その生き様が眩しかった。調べたら私とほぼ同じ歳だった。彼の生み出す作品を見たいと思った。刹那的な煌めきを消費するために(生み出すために)生を受けた私とあなた。その関係は果てしなく遠い。遠い人。
ゴミ箱にゴミがいっぱいで、足で踏んで推し潰す。ゴミ捨てまであと3日、押し潰して一つの袋で間に合わせようとする。足どころか、体ごとゴミ箱の中に入って体重をかける。そんな生活感なんて、あなたには経験もないことでしょう。
どうして最初から、そしてずっとそれを選べたんですか。

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