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ライブ備忘録:スピッツ VIVA LA ROCK 2018 @さいたまスーパーアリーナ 2018.5.3

 さいたまスーパーアリーナで毎年開催されていた「VIVA LA ROCK」。
 2020年は新型コロナウイルスの影響で開催中止となり、2021年はなんとか5月1日より開催されているが、例年と大きくレギュレーションを変更せざるを得ない状況となっている。

 そんなVIVA LA ROCKで衝撃的だったライブについて紹介する。
 2018年のスピッツのライブである。

 スピッツは2015年にVIVA LA ROCKに初出演。この年の「ARABAKI ROCK FEST.」も含めて春フェスと呼ばれるものに初めて出演した年であった。

 そこから3年が経ち、さいたまスーパーアリーナのステージにスピッツが帰ってきた。

 2018年5月3日。スピッツの開始時刻は17:50。トリ前の位置で、持ち時間は55分。
 その前の「レキシ」から前方ブロックでライブを観ていたのだが、レキシのライブからお客さんはほとんど退出せず、前方ブロックはライブ開始前からパンパンの状態だった(ちなみにレキシは「狩りから稲作へ」でグッズの稲穂を使用しながらスピッツネタをバンバン披露し、大爆笑を搔っ攫っていた)。

稲穂がキラリ☆

 そして定刻になり、スクリーンのNEXT ARTISTには「Spitz」の文字が。
 いよいよだ。いよいよ生のスピッツが観られる。
 SEに合わせてメンバーが登場し、崎山さんのカウントに合わせて演奏されたのは名曲「涙がキラリ☆」。

 カッコいい!!まだ歌い始めていないのにイントロの演奏で完全に持っていかれた。というか本当に1995年の曲なの?
 アレンジもほぼ音源と一緒で、まさに自分が観たかったスピッツがそこにいた。
 あとこの前の「レキシ」が歌の中で「涙がキラリ☆」の替え歌を披露していたからあえて1曲目に変更したのだろうか、それとも偶然か?
 いずれにしても「涙がキラリ☆」を最高の環境で聴けた。レキシ、サンキュー(さすがに「稲穂」はやらなかった)。
 さらに2曲目もこれまた名曲「スパイダー」。

 草野さんのアコースティックギターで歓喜である。
 これまた1994年(5th Album『空の飛び方』収録)の楽曲って・・・。今は何年だっけ?となる。
 90年代の名曲が2曲続けて歌われたと思ったら一気に近年まで逆戻り。2016年発売のライブ時点での最新アルバム『醒めない』の表題曲「醒めない」が演奏される。

 ベースの田村さんがピョンピョン飛び跳ねるなど、演奏を楽しんでいる様子が伝わってきたが、こんなのはまだ序の口だったことが後に判明する。
 また、「醒めない」の曲中で草野さんがイヤモニかギターのどちらかに不具合があるようなジェスチャーを見せていたが、続く「恋する凡人」まで演奏を中断することなくやり切っていた。

シングルであってもそうじゃなくても

 4曲が終わってここでMCタイムへ。MUSIC STATIONなどで草野さんが話している様子を見たことはあるが、MCでどのような話をするのかを楽しみにしていた。
 草野さんはテレビで観ていたあの草野さんだった。優しそうに丁寧に挨拶をする草野さん。「素敵な夜にするからさ」と語りかけるが、自分で恥ずかしそうにする草野さん。
 唯一意外だったのはスピッツの前に出ていたレキシの稲穂について(レキシのグッズには「稲穂」があり、ライブでファンが稲穂を振ることが恒例になっている)、「スパイダーで稲穂を振っている不届き者はいなかったですね。俺が稲穂を振っていいって言うと、『マサムネさんが余計なこと言うから稲穂で前がよく見えませんでした』とか言われちゃう」と言っていたこと。草野さんでもネットの言うことを気にするんだ、と思いつつ、こうした草野さんの軽口がスピッツのライブでは聞けるのか、と関心を持った。
 演奏を再開し、まず披露されたのは国民的大ヒット曲「チェリー」。

 崎山さんのドラムイントロですぐわかる。そんな曲他にあるだろうか。
 イントロのテツヤさんのアルペジオをずっと聴きたかった。心地良い。
 ピンク色の照明が楽曲の甘酸っぱい世界観をより掻き立てる。
 スピッツを初めてライブで観るにあたって、やはり一番聴きたかった楽曲は「チェリー」だった。
 やっぱり曲として完璧すぎる。
 さらに6曲目は「スターゲイザー」と来る。

 「あいのり」を全シリーズ通じて1回も観たこともない自分でも当時から認識していたくらいの曲。
 スピッツを好きになってからはオリジナルアルバムに収録されていないこと(2004年リリースのSpecial Album『色色衣』に収録)や意外とライブでは披露されていないことが知識として入っていたため、草野さんがアコースティックギターで歌いだしたときには、初参加のライブでこの曲に巡り合えたことをとても喜んだ。
 ここまでほぼヒットシングルやアルバムリード曲でセットリストが組まれており、初めてスピッツを観る自分にとっては大興奮の内容だったが、次の曲のイントロでついにわからない曲が来てしまった。
 自分の単純な勉強不足だったわけだが、なんとこの流れで演奏されたのは1991年リリースの2nd Album『名前をつけてやる』のオープニングを飾る「ウサギのバイク」だった。
 MUSIC VIDEOもない。完全にブレイク前のアルバムの中の1曲。ライブで披露されるのは約17年ぶり(2018年春に出演したいくつかのイベントを合わせて)。
 どんな曲をチョイスしているんだ。他のアーティストだったら完全に博打な選曲である。
 草野さんが歌い始めてから1分半以上ずっとスキャットをし続けることを知らなかったため、いつ歌が始まるんだろう、と思ってしまった。勿体ない。
 しかしここまでボリューミーな楽曲が続いた中で、スローテンポであったり草野さんのアコースティックギターの音色がライブでも心地よかったりと、「ウサギのバイク」はこの日のセットリストの中でも一種の清涼剤のような役割を果たしていた。
 さらにこれまたレア曲である「スピカ」が披露される。

田村さんは醒めない 

 2回目のMCでは観客の体調を気遣う素振りを見せる草野さん。
 「すっかり暑くなってきましたが春の歌という曲を聴いてください」と謙虚に曲紹介をするが、「春の歌」って大名曲じゃん。

 5月に「春の歌」を聴けるなんて夢のようである。これも2005年(11th Album『スーベニア』収録)とライブ当時から見て13年も前の楽曲になるわけだが、新曲って言われても信じるだろうな。というかここまでの楽曲みんなそうである。スピッツの楽曲に年代なんて関係なかった。
 ここからどんどん田村さんが覚醒する。10曲目は福岡に行きたくなる「さわって・変わって」。シーケンスの音からバンドサウンドに移るときの音の迫力が凄まじかった。

 「俺」と歌う草野さん、やっぱりカッコいい。「春の歌」と打って変わった激しめのギターも。
 ただ田村さん、動きの激しさが明らかに増している。これは噂に聞いていたやつか。田村さんは何曲かの激しい曲ではUNISON SQUARE GARDENの田淵なんて比較にならないくらい暴れまくるアレか。
 次に披露されたライブ定番曲「8823」。
 田村さん、ドラムの崎山さんの後ろを通過したり、テツヤさんを追い越してシールドギリギリのところまで行ってみせたりととにかく縦横無尽に動き回る。にも関わらずちゃんと演奏している。
 かと思ったらベースを放置したり、シンバルを叩いたりともはややりたい放題になっていった。
 これで楽曲が成り立っていたり、他のメンバーは慌てることもなく(というかいつものこと?)演奏していたりと凄いが、一番すごいのはどれだけ田村さんが動いてもしっかりケーブルを持ってついていくスタッフさんのような気もした。それこそエレファントカシマシのライブの時に宮本さんが何をやってもスタッフさんが迅速に対応しているのに通ずるものがあった。ライブスタッフすげ~・・・。
 最後の「トンガリ'95」でも田村さん、すべての力を出すかのごとく暴れまくった。「8823」であんだけ動き回ったのにまだ行けるのか。
 しかし「8823」といい「トンガリ'95」といいたしかによくわからんパワーが出ちゃう曲ですね。

 55分で12曲とたくさんの曲を聴かせてくれた。
 しかも最初の「涙がキラリ☆」と最後の「トンガリ'95」の『ハチミツ』被りを除いて全部の曲が違うアルバムから選曲されていた。年代がバラバラなのにまったく違和感を感じないのはスピッツ楽曲の持つ普遍性の強さだろうか。
 様々な年代の曲を聴けたことは、初めてのスピッツライブで色々な曲を聴いてみたいと思っていた自分にとっては願ったり叶ったりなことだし、スピッツのコアファンとそうじゃない人の両方のニーズを満たしたセットリストだったのではないだろうか。
 流れとしても最後3曲はスピッツのパブリックイメージ(この日だと「チェリー」や「春の歌」のようなポップソング)とは違ったロック色の強い曲を演奏しており、ロックフェスにおいてスピッツが見せたいものがよく表れている気もした。
 あと当たり前のことなのだが、草野さんの歌、ずっと聴いていられる。
 2018年のビバラのスピッツ、最高すぎた。

セットリスト

1.涙がキラリ☆
2.スパイダー
3.醒めない
4.恋する凡人
5.チェリー
6.スターゲイザー
7.ウサギのバイク
8.スピカ
9.春の歌
10.さわって・変わって
11.8823
12.トンガリ'95

内訳

・15th Album『醒めない』1曲。
・13th Album『とげまる』1曲。
・11th Album『スーベニア』1曲。
・10th Album『三日月ロック』1曲。
・9th Album『ハヤブサ』1曲。
・7th Album『インディゴ地平線』1曲。
・6th Album『ハチミツ』2曲。
・5th Album『空の飛び方』1曲。
・2nd Album『名前をつけてやる』1曲。
・2nd Special Album『色色衣』1曲。
・1st Special Album『花鳥風月』1曲。

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