人の想いを酌む力

主要メディアを中心に長年ライターとして活動していますが、否応なしにウェブメディアやソーシャルメディアの仕事のウェートは高まっています。

その流れのなかで、ウェブやソーシャルメディアにおいても文章のクオリティの高さを求められる場面は、確実に増えています。発端はおそらく、数年前のコピペキュレーションメディア問題からだと考えます。

あれでキュレーションメディアの信頼性が大幅に下落しましたね。キュレーションに留まらずウェブ広告全体に影響が広がっています。踊らされていた読者(消費者)側も、記事の真贋を見極める目が厳しくなったはず。当然のことですが。

特に医療・健康・美容系の広告記事には以前より慎重を期すようになっています。これまではウェブはビジュアル先行で、文章の精度や確度は二の次。ふんわりとしたイメージが良ければ中身は問われなかったのでしょう。

まとめサイトならいざ知らず、企業のウェブサイトなどがその状態では、コーポレートイメージに傷が付きかねません。そこできちんとしたコンテンツに内容にしたいという動きにつながっているのでは。

ここまでは推測。

こうした背景からか、雰囲気だけで文章を書く人ではなく、正しい言葉で、伝えたいことが相手の心に伝わるライターの発掘は急務になっています。

実際に、企業や行政関係からの仕事依頼、深刻なヘルプを求められる場面が増えていますが、仕事をお受けしてみて、世に出回っているウェブやパンフレットの文章がまったく体を成していないことに驚きました。

社員さんか、制作会社内部で拙速に書いたかのような平たい文章、キャッチーなキーワードの羅列、あいまいで的を射ていない言葉が散見されます。

それもこれも、ちゃんと書ける人を育ててこなかったから。商業ライターにとって「書ける」とは、ただ文章を書くのみならず、要望を汲み取る力、企画・提案力、コミュニケーション力など様々な資質が求められます。

言語力、言語化が求められる今の時代、ライティング業務のボリュームは格段に増えているのに、圧倒的に人手が足りない。

一番の問題は、品質を求められているにもかかわらず、ギャラ(原稿料)が旧態依然なこと。生計をこれで立てようとすれば、料金や仕事の煩雑さで折り合いがつかず、ますますライター不足が深刻になるのは当然かと。

結果、力量のある数少ない人材に仕事が集中している現状。これではいずれ立ちゆかなくなるのは目に見えています。一方で、AIに取って代わられる単純作業は、ものの何年かで人の仕事ではなくなるでしょう。それは時間の問題です。

それ以外の、AIにはできない、人ならではの言語能力=人の想いを酌む力が求められている以上、育成や環境改善、地位向上は必至かと思われます。

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