汚染された終末世界で少女を救うゲームの話

こんにちは。あんでぃです。やることはいっぱいあるのになぜかこういう記事を書き出してしまう。わかるかこの気持ち。

さて、みなさんはこのゲームをご存知でしょうか。

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PS4・Switch向けソフト、void tRrLm()i(ボイド・テラリウム)。

ヨドバシで一目惚れして買ったゲームなんですが、これが面白かった。そもそも僕はポストアポカリプス系というか終末系が大好きなんですけど、何よりもこのゲーム、あらゆる場面で倫理観が崩壊していてすごいです。今日はその辺りの感動を共有したくて記事を書きました。では、順番に見ていきましょう。まずは基本的なところから。

1、基本的なゲームシステム

このゲームのジャンルは「ローグライク」です。わからない人向けに説明すると、ローグライクというのは
・ダンジョンの地形が固定でなく、毎回自動で生成される
・死んだら強化等はリセットされ、最初からやり直し
を基本とするゲームのことです。「不思議のダンジョン」シリーズが一番有名ですかね。

ストーリーの流れとしては、上記の自動生成されるダンジョンを繰り返し探索してアイテムを集め、崩壊した世界でただ一人(瀕死状態で)生き残っていた少女・トリコを、その場にいたAI(以降、ファクトリーAI)と協力して養育していく、という感じです。

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トリコちゃんです。かわいいね。

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こっちがファクトリーAI。感情豊か。なお人類滅亡の戦犯。

2、過酷な食生活

で、ここからが倫理観崩壊ポイントなのですが、まず少女を養育するのに必要なものといえばなんでしょう?そう、食べ物ですね。

食べ物はダンジョン内に落ちています。


こんなふうに。


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ヘドロの中に。

世界観を壊さない素晴らしい設定だとは思うのですが、如何せんビジュアルが…

当然、ここから取れるアイテムも「腐食した缶詰」「寄せ集めの苔」「黒光りする虫」など、文字通りやばい匂いのするものしかありません。特に最後のそれ、ダメなやつだろ。

あまつさえ、チュートリアルから「どうしても食べ物が見つからない時は拠点に時々出現する黒光りする虫を捕まえよう!」などと言い出す始末。トリコちゃんは基本的になんでも笑って食べてくれますが(たまにイヤイヤって感じで首を振り出す。かわいい)、最初のうちは心が痛みます。


3、病気

普通に探索していると、このトリコちゃんが時折病気になってしまいます。

この内容もまたなかなかにショッキングなもので、風邪やレンガが落ちてきて骨折(病気なのこれ?)などはともかく、ひどいのになると溶けたり肉塊になったりします。

↓微グロ注意





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病名は「液状化」

この液状化の治療法はというと、「少女だった液体をシリコン型に流し込んで凝固剤をぶち込む」という荒技。開発者は人を1/1フィギュアか何かと勘違いしてるんでしょうか。

実は病気予防の方法はそれなりにあって、簡単にいうと拠点をきれいに保っておけばいいんですが、難しいのはこの病気システムが一種の救済措置であるという点。

というのも、このゲーム、基本的に食糧難なんですよ。

このゲームのアイテムには「汚染」というパラメータがあり、汚染された食べ物を少女に与えることは原則(実は1個くらいなら問題なかったりするんですが)タブーです。ですが、汚染されていない安全な食べ物を見つけるのは実はかなり難易度が高く、せっかく見つけてもダンジョンのトラップで汚染されたりするので気が抜けません。

ところが、トリコが病気になると行けるようになる施設(回復薬用のアイテムとかが落ちています)には安全な食べ物が大量にある上、トリコが病気から回復すると彼女の空腹度が全快するという仕様も相まって、ゲームの進行という点だけ見れば「あえてトリコを病気にして回復させる」のが最適解、というなんとも非人道的な仕掛けになっています。

当然の如く病気関連の実績もあり、普通にプレイしているとクリアまでにはまず達成できないので、トロコンにはクリア後に拠点をあえて汚く保ち、トリコが新種の病気にかかるのを祈るという外道のような作業が要求されます。僕はしんどすぎてやってません。


4、void.TheEnd()

ここから重大なネタバレ注意。自分でやりたくなった方は一番下までスキップしてください。





正直ここまでは、やべーなこれって感じで楽しめていました。

しかし、そんな心の余裕を遥かに上回ってきたのがこのゲームのバッドエンド。あまりに闇が深く、深夜1時に布団の中で「そんなんアリかよ…」「これで…良かったのか…?」などと呟く不審者が誕生してしまいました。



流れとしてはこうです。

まず、ストーリーを進めていくと、何やらロボットを統括しているっぽい上位存在(クラウドAI、とかいう名前だったか)から通信が入ります。曰く、人類復興のための設備づくりを進めてほしい、と。

これが結構大変なんですが、ファクトリーAIと協力してなんとか設備を完成させると、最後の指令が入ります。





「トリコをその中に入れろ」





はい。苗床です。これだけでもしんどいのですが、これは序章にすぎません。


逡巡を見せるファクトリーAIに対し、主人公のロボット(ここまで触れてきませんでしたが、プレイヤーが操作するのはかつて人間居住区域の労働を担っていた小型ロボットです)は通信によって行動を操作され、


ともに歩んできたファクトリーAIを自らの手で破壊します。


これまで協力して少女を育ててきた、その相棒を自分の手で殴り殺す。

攻撃ボタンしか操作を受け付けないようになり、抵抗は不可能。

プレイヤーは絶望に打ちひしがれながら、涙を流しながら、ファクトリーAIの上で攻撃ボタンを押すのです。

ここは本当に心がしんどかった。

普段、ダンジョンに出発する前にはこのAIがヒントをくれるのですが、この後に出現するラストダンジョンではそのヒントが


「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」


となっており、お前が殺したんだぞ、という無言の抗議を受けているような気持ちになります。惨すぎる。


そして、晴れて本部らしきところにたどり着くと、人類復興のための設備にトリコが入ったコンテナを挿入するよう指示され、それに従うとバッドエンドです。


おめでとう。人類復興です。復興した人類の姿は1秒たりとも見られませんが。

確かに、「テラリウム」と呼ばれる居住空間で少女をお世話するゲームなのになぜ"void"なのか、とずっと疑問ではありましたが、こんな形でのタイトル回収は望んでいませんでした

日本一ソフトウェアの作品をやったのは初めてでしたが、デベロッパー陣は人の心を持ち合わせているのでしょうか。心配です。


5、良かった点・悪かった点

ここからは総評をば。

世界観はここまで見てきたように「汚染された崩壊世界」を忠実に表したダークなもので、僕はまずここに惹かれたのですが、それ以外にもいくつか語りたいことがあるのでそれらについて書いていきます。

良かった点

・本当に「お世話している」感覚

やってみるとわかるのですが、前述の食糧難のバランスが本当に絶妙で、加えて少女にも「死」が存在することをほのめかされるので、倉庫の食べ物が尽きれば焦りを感じますし、きれいな食べ物を見つけた時の達成感はかなりのものです。途中から探索中の少女の様子を可視化する機械が手に入ることもあり、「お世話」への没入感は間違いなくこの作品の魅力でしょう。

・程よい難易度

程よいと言ってもかなり難しいですし、即死コンボや致命的なトラップなどもあって一種の死にゲー状態ではあるのですが、アイテムロストはありませんし、最初に述べたローグライクの特性もあって気軽にリトライが可能です。多彩なスキルやアイテムの存在も相まって、何回死んでも「次はいける!」とプレイヤーに感じさせるような難易度設計になっています。

・爽快感のあるバトル

探索中にレベルアップで身に付くスキルはランダムなのですが、このスキルがうまく噛み合うと、難易度の高いダンジョンが一転無双ゲーと化します。何度もやられているがゆえに、その快感は筆舌に尽くしがたいものとなります。戦闘システムそのものは攻撃・移動だけの至ってシンプルなもので、誰にでも手軽にこなせるのもいいですね。

悪かった点

・ストーリーのボリュームと細部の詰めの甘さ

正直、ストーリーはややフルプライスゲーとしては物足りない印象を受けます。探索の難易度が高いので初見クリアには20時間くらいかかりますし、決して満足度としては低くないのですが、「あ、もう終わり?」という印象は拭えませんでした。また、グッドエンドでは自らを制御しているはずの本部の統御AIに逆らってトリコをコンテナから救出し、なんか出てきた自分のシャドウみたいなラスボスを倒してエンディングを迎えるのですが、ここも突っ込みどころが多いです。お前逆らえるなら最初からやれや、ってのもありますし、上位存在のはずの統御AIが一介の労働ロボットであるところの操作キャラとほぼ同じ見た目をしているのも少々謎です。さらにいうなら、自分でファクトリーAIを破壊した時点で十分バッドエンドなので、分岐を作るならその前の段階にして欲しかったですね…一応グッドになると生き返りはするものの、顔のグラフィックが破壊されており喪失感は否めないです。

・敵の命名が雑

敵自体はそれなりに行動パターンが豊富で、同じモンスターの色違いでもそれぞれ違った挙動をしたりとこちらを飽きさせない工夫が凝らされているのですが、ネーミングが例えば「ねずみI」「ねずみII」「ねずみIII」…ととにかく雑。どうでもいいといえばどうでもいいのでしょうが、やっぱり少し気になります。

・落ちる

おま環案件かもしれませんが、このゲーム、めちゃくちゃ頻繁に落ちます。

ダンジョンの階層切り替え時、モンスターハウス入室時、アイテム使用時…と、ありとあらゆるタイミングで落ちまくるため、流れが阻害されていけません。幸いオートセーブ機能が非常に優秀なため、データが消し飛ぶようなことは起きませんが、とにかく興醒めポイントになってしまっています。というか、本当に頻度がおかしいので、これでデータが飛ぶようなら良ゲーどころか確実にクソゲー認定されているでしょうね。



以上、「ボイドテラリウム」の紹介でした。久々にゲームに熱中したなあ、という感じですね。そろそろ大学も忙しくなってくるので夏休みの間に出会えてよかったです。では。





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