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よそ者という視点。だから私は旅に出る。

「田舎を盛り上げるのに必要なのは、若者・よそ者・馬鹿者だ!」
という名言を聞いたのは、何年前のことだったか。
瀬戸内海に浮かぶ人口600人程度の小さな島。
町のご意見版のようなオヤジに聞いた言葉だ。
今でもずーっと胸に響いている。

当時は、海外でのお仕事を終え、もっと日本を知りたい欲求がむくむくと湧き上がっていた。
妻と日本各地を回ろうと、島の旅館でアルバイトをしていた時のことだった。

「都会にヒトモノカネが集中し、地方は疲弊している。」
そんな言葉や意識が飛び交っている中で、そのオヤジは必死に島を盛り上げようとしていた。
各地の中学校へ飛び回り、修学旅行先としてその島の海洋体験を売り込む。
毎年、何十という中学校の学生たちが島にやってきていた。
そんなオヤジが語る言葉だけに、妙に重みがあった。


昨日の記事に書いた通り、地方に移住したいと思い転職した。
島根県に来て12年経ち、地域との繋がりは年々太くなっている。
だが、いまだに私はよそ者かもしれない。
いや、むしろよそ者でありたいと思っている。

昔から、旅が好きだった。
特に田舎が好きだった。
都会に生まれ育った私は、青々とした山の稜線や、清らかな川のせせらぎ、おっとりとした地元の方との会話、全てに心が絆されていった。
地元のおじちゃんおばちゃんからはよくこんなことを言われた。
「よくもまぁ、こんな何もないとこにいらしたわぁ」

「いえいえ、何もないなんてことないですよ。この自然があるじゃないですか。」
必死にそう説明しても、
「そうなんかねぇ」
と、まるで珍しい人もいるもんだ、と思われる。

オヤジの言葉を借りれば、
よそ者の視点でしか気づけないものがあるのだろう。
それは、地元の人にとってはありふれていて、当たり前のもの。
それがよそ者にとってはありがたいもの。



玄関を開けると広がる山の稜線。八雲立つ出雲国。

僕は島根県が好きだ。
この土地をもっと知りたい。
そして知ってもらいたい。

だからこそ、今は旅館というお仕事や日々の暮らしの中で島根を発信し続けている。
そのために必要なことはよそ者という視点。
だから、私は旅に出る。

この地に溢れているありがたいものを当たり前と思わないように。


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