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vivo X80 Proに見るスマホカメラの最前線

☆学園祭の展示の1つとして掲載した記事です。一応ガジェットに詳しくない方向けの記事ですので、比較的簡単な内容となっています。また一部分かりやすいように割り切った表現があります。

0. vivo X80 Proとは

「vivo」は中国のスマートフォンメーカーである。日本には進出していないため、日本ではほとんど知られていないスマートフォンメーカーだが、世界第5位のシェアを誇る超大手である。

メーカーの各製品群において最上位に位置づけられる製品を、司令官が乗っている軍艦である「旗艦(=フラッグシップ)」の意味から転じて「フラッグシップ製品」と呼ぶ。例えばAppleの最新iPhoneのシリーズであるiPhone 14シリーズだと、最も高価なiPhone 14 Pro Maxがフラッグシップスマートフォンにあたる。

vivo X80 Proは、vivoの最新フラッグシップスマートフォンであり、価格は5500元(=約11.1万円)。Androidスマートフォンにおいて最も処理能力の高いSoCや大容量のバッテリー、Samsung製の高品質な有機ELディスプレイを搭載するなど、総合的に高水準なスペックを誇るvivo X80 Proだが、その最大の特徴はなんといってもカメラである。レンズが4つ搭載された大型のカメラモジュールからは、見た目だけでもカメラへのこだわりが感じられるが、vivo X80 Proのカメラにはスマートフォンカメラの最新技術が詰め込まれている。

↑vivo X80 Pro

1. カメラスペック

まずはvivo X80 Proのカメラの仕様について触れる。まず初めに特筆すべき点は、メインとなる広角カメラである。vivo X80 Proの広角にはスマートフォンカメラの中では大型な1/1.3"イメージセンサーと、f値1.57のとても明るいレンズ、そして光学式手ブレ補正の機能が搭載されている。2つ目は、2種類の倍率が異なる望遠カメラである。2倍の望遠カメラは一般的なデジタルカメラなどで用いられている画角であり、人やモノを撮るのに最適である。またmicroPTZと呼ばれる特殊な手ブレ補正機構が備わっており、一般的な光学式手ブレ補正よりも更にブレに対して強くなっている。5倍の望遠カメラは後述するペリスコープと呼ばれる技術が用いられており、スマートフォンとしてはかなり遠くまで鮮明に撮影することが可能である。3つ目は多彩な撮影モードである。vlog撮影モードや8倍スローモーション撮影モード、5000万画素撮影モードや8K動画撮影モード、マクロ撮影モードなど、高いハードウェアスペックを活用して様々な撮影が楽しめる。夜景撮影モードと星空撮影モードについては後に詳しく触れる。

↑vivo X80 Proのカメラ仕様(中国語)
↑vivo X80 Proの非常に多彩なカメラモード

2. ペリスコープ

vivo X80 Proのカメラモジュール左下に、特徴的な四角い形状をしたカメラが搭載されている。これはより遠い場所を撮影するために備えられた望遠カメラであるが、通常カメラで遠い場所を撮影するためには、焦点距離の関係上、望遠鏡のように長いレンズが必要になる。勿論スマートフォンでは小型のイメージセンサーを使用するため、望遠鏡や一眼カメラほど大型のレンズは必要では無いが、それでも4cm程度は距離を稼ぐ必要がある。しかし、1cm強しかない薄いスマートフォンの筐体に4cmのレンズをそのまま搭載することは当然不可能。そこで光を90度に屈折させるプリズムと、垂直に配置されたイメージセンサーを組み合わせることで、横方向に距離を稼ぐことができるように工夫したものがペリスコープレンズである。ペリスコープとは潜望鏡、つまり潜水艦から海上を見渡すために用いられるものである。iPhoneには搭載されていないため知名度が低い仕組みだが、高性能なカメラを持つAndroidスマートフォンでは既に一般的な仕組みである。vivo X80 Proはペリスコープが備わっているためより遠くを綺麗に撮影することができる。AI合成と組み合わせて月をも鮮明に撮影することが可能だ。

↑ペリスコープの仕組み
↑ペリスコープを搭載したスマートフォンなら、このように大迫力の写真を撮影することが可能

3. HDR

スマートフォンにもデジタルカメラにも搭載されているHDR機能だが、HDR機能がどういったものであるかはあまり知られていない。HDRとはHigh Dynamic Rangeの頭文字であり、より広い「明るさの幅(ダイナミックレンジ)」を表現できる技術である。露出を低く設定した写真(=暗い設定で撮影した写真)から露出を高く設定した写真(=明るい設定で撮影した写真)まで複数枚を瞬時に撮影し、それらを合成することで、暗い場所から明るい場所まで鮮明に映すことができる仕組みである。スマートフォンのカメラはスペースの制約があるため小さなイメージセンサーしか搭載できず、ダイナミックレンジが狭くなってしまう傾向にあるが、vivo X80 Proでは高度なHDR技術を用いてダイナミックレンジの広い写真を撮影できる。

↑HDRの仕組み
↑iPhone 14 Pro Maxとvivo X80 ProのHDR性能を比較。X80 Proの方がHDR性能に優れているため、電球のフィラメントまでしっかりと描写できている。
↑画角は異なるが、この写真でも細部まで明るく鮮やかに描写できているvivo X80 Proの方が優れたHDR性能を有していることは明白である。しかし、iPhone 14 Pro Maxで撮影された写真の方が美しいと感じた方も多いのではないだろうか。必ずしもダイナミックレンジの広い写真の方が良い、という訳では無いということがわかる。尚、優れたHDR性能を持つスマホであれば当然、敢えてダイナミックレンジを狭めて撮ることも可能であり、HDR性能が優れているに越したことはない。

4. 夜景撮影モード

最近のAndroidスマートフォンでは夜景撮影モードを搭載する機種が増えている。iPhoneや1部のAndroidスマートフォンでは夜景撮影モードという表示こそないものの、暗い場所で写真を撮影する際画面に「動かないで下さい」などと表示が出て、少し時間をかけて撮影されることがあると思う。

HDR機能のように複数枚の写真を瞬時に撮影し、合成する技術をマルチフレーム合成と呼ぶ。

夜景撮影モードでは加算平均合成と呼ばれる、HDRとはまた異なるマルチフレーム合成技術が行われている。

暗い場所で写真を撮影すると、光を十分に取り込むことができず、写真にノイズが現れてしまう。このノイズはランダムに生成されてしまうものであり、例えば写真において本来10の明るさである場所が、8や11といった明るさで出力されてしまうと、ノイズとなる。そこで複数枚の写真を合成し、明るさの平均値をとる、というのが加算平均合成である。先述したようにノイズは完全にランダムで生成されるため、多くの写真を合成すればするほど正しい明るさに限りなく近づく、という仕組みである。

尚、HDRにせよ加算平均合成にせよ、マルチフレーム合成を行う際少しでも位置がづれてしまうと意味が無い。三脚に固定して撮影すれば問題は無いが、スマートフォンで撮影する場合わざわざ三脚を用いることはほとんどないだろう。手持ち撮影時におけるマルチフレーム合成には、同時に極めて高度な手ブレ補正技術を必要とするのである。

↑vivo X80 Proで撮影された夜景(編集済み)。夜景撮影モードを使えば、夜でも昼間のように明るく撮影することができる。
↑加算平均合成の仕組み

5. 星空撮影モード

vivo X80 Proには夜景撮影モードの発展系として、星空撮影モードも備わっている。星空を撮影するにはより多くの光を取り込む必要があり、ノイズも出やすいため、より長い撮影時間を必要とする。そのため三脚を立てて撮影することが必須であり、X80 Proの星空撮影モードでは1枚星空撮影を行うために大体2分程度の時間を要する。一般的な夜景撮影と大きく異なる点が、星空は地球の自転によって少しずつ動くということである。体感ではほとんど動いていないように感じても、写真撮影をする場合2分間で星が移動する距離は看過できない。そのまま写真を合成してしまうと、北極星以外の全ての星が短い糸を引いたような写真になってしまう。そのため星空撮影モードでは、星が動いた距離分補正して合成が行われる。

↑vivo X80 Proで撮影された天の川

6. Zeissコラボ

中国のスマートフォンメーカーでは、有名なカメラメーカーとコラボすることで、スマートフォンカメラに磨きをかけようとする動きが主流である(尚、マーケティング戦略のために名ばかりのコラボを行っている例も少なくない)。vivoはカメラのレンズメーカーとして有名なカール・ツァイス(Zeiss)とコラボすることで、X80 Proのレンズ品質やポートレート撮影の技術などを飛躍的に向上させた。特筆すべき点はZeissのT*コーティングであり、これによってレンズによる光の反射を抑制している。

7. 何故スマートフォンカメラなのか

ここまでの解説でvivo X80 Proが如何に高性能なカメラを備えているか、なんとなくご理解いただけたと思うが、ならば必然的にこのような疑問が浮かび上がるはずである。「なぜ専用のコンデジや一眼カメラで撮影しないのか。」11万円あればそこそこ高性能なコンデジが買えるはずであり、私事ではあるが今までスマートフォンにかけてきた金額を考えれば、一眼カメラを買うこともできたはずである。vivo X80 Proはカメラを含め全体的に高性能なスマートフォンとなっているが、日本では販売されていないこともあって、日本人が日常使用するのにはあまり向かないスマートフォンである。従って、このような疑問が生まれて当然である。

しかしそれでも、私が敢えてスマートフォンカメラにこだわる理由は次の2点である。

①物理的に手軽であること

スマートフォンは軽く、薄くてかさばらない。また、撮影したら即座にSNSで共有することが出来る。

②コンピューテーショナルフォトグラフィー

HDRや夜景撮影モードで用いられるマルチフレーム合成や、美しい写真を生成するためのアルゴリズムを実行するためには、より高い処理能力が要求される。高度な画像処理を経て写真を生成する技術を「コンピューテーショナルフォトグラフィー」と呼び、現在のスマートフォンカメラにおけるトレンドワードである。少なくとも現時点では、コンピューテーショナルフォトグラフィーの技術において、コンデジや一眼カメラよりもスマートフォンの方が優れている。

Vivo X80 Proでは、コンピューテーショナルフォトグラフィーの技術によって難しい設定をしなくとも、シャッターを1度押すだけで色鮮やかな写真や明るい夜景を、手軽に撮影できる。これは手軽さより、細かく調整したり後に編集したりしてでも、より満足のいく写真を撮影したいというプロの意志を反映している一眼カメラとは異なり、簡単に「映える」写真を撮影したいというスマートフォンユーザーが求める需要を反映した結果である。

私は大学生であり、授業や課題があって、アルバイトをしている。一眼カメラを持って丸1日写真撮影へと出かける時間は、そうそう取れるものでは無い。大学生でなくても、多くの方々がそうだと思う。しかしvivo X80 Proのような高性能カメラを搭載するスマートフォンを持っていれば、大学やアルバイトの行き帰りなど、いつでも手軽に写真を撮ることが可能である。私のライフスタイルには、撮影から編集までじっくり時間をかけて美しい写真に仕上げることでその本領を発揮する専用のカメラよりも、撮った瞬間に美しい写真が生成されるスマートフォンカメラの方があっていると考えている。

↑vivo X80 Pro

8. 最後に

vivo X80 Proと言わずとも、最近のiPhoneの広告を見てみれば、スマートフォンカメラの高性能化が進んでいることは、皆様も何となく感じているだろう。それは勿論、SNSの普及によりスマートフォンで綺麗な写真を撮りたいという需要が生まれた結果に他ならないが、写真撮影にそこまで興味を持てない方々からすれば、カメラの強化という不要なアップグレードのために費用が使われていることになり、不満に思うかもしれない。しかし、今は写真撮影に興味のない方々でも、新しく新型のiPhoneに買い替えた際など、何気なく美しいと感じた風景や美味しそうな食事にであった時、試しに1度カメラを向けて見てほしい。きっと予想以上に美しく撮れることに驚くことだろう。皆様にスマートフォンカメラの魅力を知っていただければ幸いである。

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