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プロローグ2

この話の前に言うべき話がある。
あのクソアイドル達に会う前、2018年3月のストフェスでの話だ。
まず自分の話をしようか。
俺はネットではAndrewと名乗っている。
大体みんなあんどさんと気楽に言ってくれる。
普段はなんとなく始めたカメラの趣味から、コスプレしてる人と出会って人脈や友達が増えた。
このコスプレっていう界隈でそれなりに揉め事も経験して、それなりにうまくやってる、まあまあ平均的な人間だと思う。
カメラの腕は中の中、フルサイズのカメラでそれなりに綺麗に撮れて、それなりの写真を渡す。
自分で何か撮りたいっていうものは特に無くて、この界隈で色々な人に会えたり人脈が広がるのが嬉しいから続けてるっていうのはあると思う。
ぶっちゃけると、こういう姿勢くらいでやる方が信頼もされるし、気長にこの界隈に居るには丁度いいと思ってる。

話を2018年の3月に戻そう。
この日は毎年3月に大阪で行われている日本橋ストリートフェスタという大型のコスプレイベントがあった。
そのイベントを主催している団体のアフターパーティというのがこの年Zeppなんばであって、知り合いの大型併せにカメラで参加したあと見に行く事にした。

Zeppなんばに入るとそこはほぼ超満員で、なんというか今まで見たこともないような人がいっぱい居た。
コスプレはしている、しかし普段接している層とは違ってめっちゃテンション高い人たちが楽しそうにしている。
パリピでオタク?そんな層がいるのか?
後々わかるのだが、これがいわゆるアニクラ勢というものだった。
アニソンクラブイベントでコスプレをしている層、アニクラ勢。
こんな人たちがいることを初めて知って当時びっくりしたのを覚えている。
とりあえずステージイベントに興味があったので出来るだけ最前列に行ってみる事にした。
ステージではDJがブースで曲をかけて、スクリーンで綺麗な映像が流れていた。
これが一通り終わったあと司会の人とゲストの有名な人が何人か来て、ステージ上でコスプレランウェイが始まった。
このステージは撮影OKですというアナウンスが流れたあと、隣の人がスマホでランウェイを撮り出した。
コスプレやってるのにスマホは無いなと思ったので、俺はカバンに入ってたカメラを取り出してランウェイを撮り出した。
あとで写真を加工してハッシュタグ付けてTwitterに流せば演者の人に喜んでもらえるかなと思ったからだ。
ランウェイが終わったあと歌のステージがあるようでそのままステージが始まった。
先ほどまで司会をしていた人がやってきて、普段アイドルをしているらしくメインのアーティストの前に歌わせてもらうという説明をしている時、なんとなく目があった。
どうやらカメラを持っている俺をローアングラーとでも思ったのか、軽く嫌悪の混じった目で見られた。

え?興味無いですけど?
失礼な事言うと、そもそもあなたにも興味無いですし、ましてやそんな違法なもので喜ぶ人間でも無いですけど?

なんかこう火が付いた。

特にこの場はカメラが禁止とも言われて無い、このまま撮ろう。
めっちゃ綺麗な写真載せてやろう。
そしてこの子をあとあと後悔させてやろう。
曲が始まる。
2曲だけ、時間にして10分くらい。
それでもこの子にとってはとんでもない量のお客さんの前で、今までで最大規模のライブハウスで歌っているのだ。
あとあと地下アイドルの現状のようなものを知る事になるのだが、この時はそんな事にも気付けて無かった。
その司会のアイドルさんの歌が終わったあとメインのアーティストがやってくる。

オーイシマサヨシだ。

俺はこの人の昔やってたバンドを知っていた。
sound schedule
なんならCDも持っていたし曲も何回もカラオケで歌ったこともある。
「どうもー!」
芸人の登場の挨拶のような声をあげてやってきた彼は、ニコニコしながら雑談を始めた。
正直ビックリした、あの青春のどうしようもない尖った部分を歌っていた彼を知っているからだ。
こんなにお客さんに笑いかけるんだ。。
ある程度話したあと、彼は伝家の宝刀を抜く。
そう、彼は大ヒットアニメ、けものフレンズのOP主題歌の作曲者なのだ。
軽く曲を紹介したあと流れるイントロ、テンション爆上がりの観客。
めっちゃ高音の曲を難なく歌い上げる彼、そう、この男はたった一曲でZeppなんばの全ての観客を味方にしたのだ。
その後の曲の構成も今考えても完璧で、スマホゲームA3の主題歌を、合いの手を入れるタイミングでお手製の紙の立て看板を上げたら言ってもらえるように工夫してたり、後の曲でもタオルを回す演出を入れたり、最後の曲も月刊少女野崎くんのOP主題歌「君じゃなきゃダメみたい」を超絶技巧テクニックのギターを弾きながら終わらせ、最後まで観客が盛り上がるように考え抜いたような、お客さんに寄り添ったセットリストを最後まで組んできた。

こんな人だったっけ?

今思えば、この二つの出来事が自分のこの後の行動を全部決めたような気がする。
現状に抗い、人の汚い部分を嫌悪しながら進み続けるアイドル、
人の汚い部分、めんどくさい部分すら受け入れ、ただお客さんが楽しむことだけを優先するアーテイスト。

その先に見えるものを見ているか、見ていないか、多分ただそれだけの話。

一ヶ月後の4月、俺は急に暇になった。
次回に続きます。

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