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実らなかった恋のはなし 第二話 カンナの告白

双子の兄弟と妹の三人は、無事、家に戻ってきました。
三人とも疲れて、無口になっていました。

遅ればせながら、三人の名前を紹介しましょう。

双子の兄は、ゲン
双子の弟は、ゴン
そして、妹は、カンナ
と言います。

妹のカンナ

無事にカンナを連れ戻せたのだから、もっと喜んでも良いはずなのに、沈んだ雰囲気が漂っていました。

その重い空気に耐えられず口火をきったのは、実はお兄ちゃんよりもやんちゃな、ゴンでした。

「あいつ、許せねぇ」
「こんど見かけたら、ボコボコにしてやるっ」

その様子を、カンナは少し困ったような表情で盗み見ていました。

「ゴン、もうすんだことだ。忘れろ」
とゲンがたしなめます。

「兄ちゃんは腹が立たないのかよっ」
怒りが治まらない様子のゴンでした。

ゲンはそんなゴンを相手にせず、さっさと自分の部屋に引っ込んでしまいました。

「なんだよっ」
「カンナ、おまえもこれから気をつけろよっ」
と八つ当たりのように言ったかと思うと、ゴンも自分の部屋に消えていきました。


ひとりになったカンナは、この数日のことを思い出していました。

知らない男の人について行ったのは自分の間違いだった。
でも、そんな悪い人には見えなかったし、実際、悪い人どころか、あのケージにいた間、ハート野郎は、いや、本当の名前は、ヤスタロウと言っていた。ニックネームはヤス。

なんだか爽やか青年なヤス

そのヤスは、ずっとかいがいしく世話をしてくれたのだ。
ケージだって、閉じ込められていたわけではないのだ。
あるときなど、食べきれないくらい大きなパフェを食べさせてくれた。

特大パフェ

お兄ちゃん達が突然乗り込んできたとき、つい泣いてしまったのは、なんとなく帰るタイミングを失っていたから、お兄ちゃんたちが来てくれてほっとしたのと、自分の非をわかっていたから、その照れ隠しもあった。

お兄ちゃん達はヤスのことを怒っていた。
ヤスには悪いことをしたと思っている。

たった二日間だったけど、ヤスとはいろんな話をした。
なぜだが、不思議と落ち着いて、まるでお父さんとしゃべっているような安心した気持ちになった。

ヤスは、お母さんと二人暮らしだったけど、2年前にお母さんは亡くなったこと。
お母さんのあとを引き継いで、バーを経営していること。

ヤスが経営しているバー

先日は久しぶりに、あの土手で遊んでいる自分達を見かけて、カンナに声をかけたら、会話にのってくれたから、つい嬉しくなって家まで連れてきてしまったと、照れながら話してくれた。

でも、とカンナは思う。

ヤスの話には続きがあった。
その内容を、お兄ちゃん達に伝えるべきかどうか悩んでいた。
いや、伝えなければいけないことは分かっている。
ただ、どこからどう話せばいいのかわからない。
考えている間に、この数日の疲れがでたのか、カンナはすっかり寝てしまいました。



おやおや、どうやら、話はもっと複雑なようですね。
ヤスの話の内容は、カンナが目覚めてからまた聞くとしましょう。





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